彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

9/23(水) 部田凛々子④

 つかつかつか。どすっ!!!


「かいちょおーーー!!! このむっつりバカになにされたの!!? 大丈夫!?!?!?」


 七瀬にカバン・フルスイングされてぶっ倒れる俺。


「みなさん、小銭お持ちです?? ありったけお借りできませんか?」


 詩織先輩は倒れた俺の靴下を脱がせて、さらに俺の財布から小銭を出してせっせと詰めていた。


「せっかくなので、ブラック・ジャックを試してみようかなあ。と」

「ブラック・ジャック? しおりん先輩、猥褻物陳列男のこと助けてあげるの? やさしーなあ。でもなっちゃんの靴下にあたしの小銭入れるのはキツい」


 いやいやいやこの人、靴下でブン殴ろうとしてます! 完全犯罪用の凶器作ろうとしてますからーーーーーーー!! って七瀬コラア! だけど小銭は渡さないでありがとうございます!!


「今、チュン太が凛々子の家に不法侵入したとして、何を持ち出すかという話をしていたのよ」

「っだあああああ、言い方言い方!! それ遊びだからね!?」

「凛々子さんのこと、遊びだったんですか!?」


 詩織先輩、そんなショックを受けた顔しないでええええ……。


「いや、当方超まじめよ」

「会長はまじめなのに、なっちゃんは遊びで手を出したってこと? それで下着泥棒? あまつさえ、枕カバーを……?? ゲスっ!!!」

「ああ、そうやってメディアは真実を捻じ曲げて報道するんだなあと思ったよ!!!」



【女性宅に不法侵入! 下着泥棒の末、枕カバーにも手を出した少年A「遊びでした」と供述】



 その後、会長がニヤニヤしながら最初から説明をしてくれて誤解はとけたけど、もう、俺は絶対に答えないからな!


「んじゃ話を戻すわね。凛々子の机の上に手帳を見つけたとする。めくると最後のページにスマホのメッセidや電話番号も載っているわ。この手帳の大きさはそうね、このファイルくらいだとしましょうか」

「A4とかくっそでけーな!! 全然手帳じゃねえ!!」

「さあチュン太。あなたはどうするの?」

「だから俺のことじゃないからね!? ……枕と同じ、抱えて持ち出すものは危険。だったら、idとかほしい情報だけ控えて帰るかな。ページを破るのも不自然だ。遅かれ早かれ絶対にバレる」

「そうね。持ち主は不審に思うでしょうね」

「……あ」


 目の前の個人ファイルについて思い出す。不自然な空きを見て、俺たちはすぐ、誰かの不法侵入を疑った。


「紙なんて持っていても落としたらアウトでしょ。こんなのスマホで写真を撮って残すほうが確実。なのに、わざわざ持ち出している。それはおそらく、彼女たちのidが欲しかったというよりも、あたしたちが紛失させた事実が欲しかったのが目的だと考えるのが妥当」

「OK。凛々子宅に不法侵入うんぬんの例えは、まったく必要なかったというのはわかった」

「ねえねえ、プロのアイドルファンってプライドあるから、個人で連絡取るとかしないと思うの! だからきっと、連絡取ってるのはファンを偽装しているエセじゃん!」


 七瀬アイドル事情に詳しいな、さすがイケメン好きだよ。


「そう言いきれはしないけれど、優良なファンじゃないことは確かね。ひとまず、ネズミの駆除はしておきたいが……」


 と、凛々姉は考え込んでしまった。

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