彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

9/23(水) 穂積音和②

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 自動販売機にお金を入れ、少し悩んでから烏龍茶を買う。
 ちょっと最近サボってたら、ぷにってきた気がする。ダイエットしなきゃ……。
 でも育ち盛りの女子高生だし、超お腹すくんだよね。愛する彼氏への思いで乗り切るしかねーな。

 パックにストローをさして飲みながら歩いて戻っていると、放課後の誰もいない校舎と食堂をつなぐ道を、うつむいてるけど目立つ女子生徒が正面から歩いてきた。
 細く薄暗い道ですれ違うために少しよけようと壁側に寄る。すると、バッと伸びてきた腕に肩を掴まれ、そのまま思いっきり壁に押し付けられた。
 悲鳴を上げる間もなく、頭が恐怖に支配される。
 二人の体は重なるように密着していた。あたしの顔の隣にその人の頭。息遣いまで、繊細に聞こえてくる。


「あなたって、人を殺そうとした自覚あるの?」


 耳元でささやくような声。物騒だし意味わかんないし、何度も首を横に振った。


「いじめられる側は、ときに本気で死を覚悟するよ。そういう子がいじめる側を殺したいほど追いつめられるのもよくある話だけど、殺されなくてよかったね」


 あっ、穂積のこと……!?


「あの、あれはいじめじゃ。ちょっといじわるしただけで。それに死ぬって大げさ……」

「へー、いじわるかぁ。……っふふ、あははははははは!」


 高笑いのあと、凍てつくような重い声が耳に突き刺さる。


「ふざけないで。あなたがやったのはいじめ・・・だよ! ひとつ間違えれば相手の心も人生も狂わせるいじめ・・・だっ!! ……でも、許してもらったんだ? よかったね。 死 人 が 出 な く て よかったね」

「ひっ!!」


 体が硬直する。
 この人……。たぶん、身近にいじめがあったんだ……。

 ふっと肩から手が離れた。壁から動けず、去っていく後ろ姿を、息を殺して見送る。
 ……なにあれ。超ホラーなんだけど。

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