彼女たちを守るために俺は死ぬことにした
9/23(水) 穂積音和①
連休が明けて久しぶりの学校。クラスの人に「おはよう」って言うのはもう慣れた。
……でも中村さんにはまだ慣れない。
机の上にリュックを置きながら、前の席の机に座って腕を組んで待っていた中村さんの様子をおずおずと伺う。
「あのさ、ちょっと話があるんだけど」
「!」
その顔は笑ってなくて超、怖い……。
「……二人きりならいいんでしょ? 来て」
突然腕を掴まれた。リュックは置きっぱで、教室の外に連れ出される。
階段をのぼって屋上のドアの前まで来ると、薄暗い中、中村さんが振り返った。
「もう、くだらないことやめるから! その……リュックとか、毎回持って行くのやめてよ……」
と、悲しげに吐き捨てた。
「今までつっかかってたの、ごめん。瀬田に言われて、全然楽しくないわって思ったし……」
少し間があって、
「こんなの信じらんないかもだけど、あたしスクールカーストみたいなの、嫌なんだよ」
「えっ、そなの?」
びっくりしすぎて普通に聞いてしまった。
「……あたし中学校のとき全然イケてなくて、スクールカーストも中の下とかでさ。高校ではなめられないようにして、誰が上とかやめようって思ってたんだ。でも可愛いって言われると悪い気がしなくて、調子に乗ってたよね。穂積に言われて目が覚めたような気がした」
「そなんだ」
「驚かないの? 中学の話、もなかやアンジュにもしてないんだけど」
中村さんはひとりで勝手に苦い顔をしている。
「うん、今の中村さん可愛いから関係ない」
「あっそう。……なんだよもー。はは」
中村さんは長い前髪をかきあげ、よろよろと歩いて屋上のドアに背中をつけた。
「……だから、あたし自分に自信なくて。あんたって可愛いけど、友だちいないから別にって感じだったけどさ。野中先輩と仲良いのがズルいって思ってたら、今度は彼氏とも話してるし。超不安だったんだよね」
「うーん。知ちゃんひとすじだから、ほかの人は大丈夫……」
むしろ虫くらいに思ってたけど、誤解うみそうだから言わないように我慢した。
「そうだったね。それも安心した。意外にうちら一途で似てんね」
「ん。でも中村さんは彼氏に愛されてて羨ましい」
「え、あんた付き合ってないの!?」
「告白はしてる」
「なにそれ、ちょっとくわしく!」
と、中村さんの顔が近くなる。
「ぷ」
「あはははは」
二人で長い時間、笑った。おかしくて涙が出た。
もう、怖くないと思った。
中村さんと「元はあたしが巻き込んでたけど、あの2人にも謝らせるから。そしたら彼事情、語ろう!!」と約束(?)して、ホームルームに戻った。
「先生、お財布なんですけど。あたしが音和ちゃんに預けてたんです。すぐ思い出したんですけど、言い出しづらくて。えへ。お騒がせしてごめんなさい」
「あらそうなの〜? 勇気を持って教えてくれてありがとうね」
そして、瀬田さんがみんなの前で弁解してくれた。
心がぽかぽかあたたかいような気がした。それはきっと、日向の席だからってだけじゃない。
それはあたしの、本当の高校生活が、始まる合図の気がした。
……でも中村さんにはまだ慣れない。
机の上にリュックを置きながら、前の席の机に座って腕を組んで待っていた中村さんの様子をおずおずと伺う。
「あのさ、ちょっと話があるんだけど」
「!」
その顔は笑ってなくて超、怖い……。
「……二人きりならいいんでしょ? 来て」
突然腕を掴まれた。リュックは置きっぱで、教室の外に連れ出される。
階段をのぼって屋上のドアの前まで来ると、薄暗い中、中村さんが振り返った。
「もう、くだらないことやめるから! その……リュックとか、毎回持って行くのやめてよ……」
と、悲しげに吐き捨てた。
「今までつっかかってたの、ごめん。瀬田に言われて、全然楽しくないわって思ったし……」
少し間があって、
「こんなの信じらんないかもだけど、あたしスクールカーストみたいなの、嫌なんだよ」
「えっ、そなの?」
びっくりしすぎて普通に聞いてしまった。
「……あたし中学校のとき全然イケてなくて、スクールカーストも中の下とかでさ。高校ではなめられないようにして、誰が上とかやめようって思ってたんだ。でも可愛いって言われると悪い気がしなくて、調子に乗ってたよね。穂積に言われて目が覚めたような気がした」
「そなんだ」
「驚かないの? 中学の話、もなかやアンジュにもしてないんだけど」
中村さんはひとりで勝手に苦い顔をしている。
「うん、今の中村さん可愛いから関係ない」
「あっそう。……なんだよもー。はは」
中村さんは長い前髪をかきあげ、よろよろと歩いて屋上のドアに背中をつけた。
「……だから、あたし自分に自信なくて。あんたって可愛いけど、友だちいないから別にって感じだったけどさ。野中先輩と仲良いのがズルいって思ってたら、今度は彼氏とも話してるし。超不安だったんだよね」
「うーん。知ちゃんひとすじだから、ほかの人は大丈夫……」
むしろ虫くらいに思ってたけど、誤解うみそうだから言わないように我慢した。
「そうだったね。それも安心した。意外にうちら一途で似てんね」
「ん。でも中村さんは彼氏に愛されてて羨ましい」
「え、あんた付き合ってないの!?」
「告白はしてる」
「なにそれ、ちょっとくわしく!」
と、中村さんの顔が近くなる。
「ぷ」
「あはははは」
二人で長い時間、笑った。おかしくて涙が出た。
もう、怖くないと思った。
中村さんと「元はあたしが巻き込んでたけど、あの2人にも謝らせるから。そしたら彼事情、語ろう!!」と約束(?)して、ホームルームに戻った。
「先生、お財布なんですけど。あたしが音和ちゃんに預けてたんです。すぐ思い出したんですけど、言い出しづらくて。えへ。お騒がせしてごめんなさい」
「あらそうなの〜? 勇気を持って教えてくれてありがとうね」
そして、瀬田さんがみんなの前で弁解してくれた。
心がぽかぽかあたたかいような気がした。それはきっと、日向の席だからってだけじゃない。
それはあたしの、本当の高校生活が、始まる合図の気がした。
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