彼女たちを守るために俺は死ぬことにした
9/4(金) 部田凛々子①
敵陣にひとりで乗り込むことを、甘く見すぎていた。
チュン太か詩織を連れてくれば良かった……と思ったけれど、過ぎたことはもう考えても仕方がない。
居心地の悪さを感じながら、背筋を伸ばして前を見据えた。
「あら文化祭実行委員カッコ暫定カッコ閉じる さん。珍しいわね、生徒会になにか用?」
虎蛇の数倍もの広さを持つ生徒会室の単独の会長席で、小さな吉崎いのがふんぞり返っていた。
その両脇をガッチリと固めるように、副会長と書記の男が睨みを効かせている。
「文化祭の件で、話を通しに来た」
気にしないようにして、あえて静かな話し方を心がける。文化祭を成功させるためには、こんなところで問題を起こしてはいけない。
「あなたが会長でしょ? なぜ生徒会が関係あるのかしら? まさか、会長なのに仕切れなくて泣きつきに来たの?」
「いいえまさか。最初の取り決めだけでも明確にしようと思ってね。後で文句を言われても困るから」
「あら、まるで私たちが貴女たちの妨害をするかのように聞こえるけれど? そんな礼儀もない方とは話したくもないのが本心ね」
まったく、彼女は責任転嫁の天才だな。
「普通の話をしているだけだけど、そう歪曲して聞こえるということは何か後ろめたいことがあるのかしら。それにしても、学校行事に生徒会の私怨で非協力的な態度を取るなんて、こもの……とても残念ね」
「り、凛々子! あんた今、小物って!」
「いえ? ではあたしのことを信用していないだけなら、基本的に去年のルールで運びます。前会長たちが決めたものであれば、文句はないでしょう。ただしそれに法っている以上、あなたたちに口を挟む権利はない。以上よ」
他のメンバーからの視線が突き刺さる中、いのに背を向けて出口に向かう。
「凛々子」
いのが呼ぶ。
「全校生徒の期待がかかっています。失敗は許されないわ」
「もちろん成功させる。必ずね。だから、安心してまかせなさい」
今度こそ部屋を出ようと、扉に手をかけた。
「ねえ、ちょっと雑談なんだけど」
いのの笑いを含む声に、こめかみがぴくりと反応する。
「そういえばあなた。中学校で、生徒会長に立候補したんですって?」
いのとは中学は別だ。どうしてそのことを。どうして今。
「ふふ。結果は残念だったみたいね? そういえば今回も文化祭実行委員なんていう“誰でも入れる委員会”で“自称会長”をかたって喜んでるみたいだけれど」
「……なにが言いたいの」
視線だけで振り返り、いのを睨みつける。
彼女は隠されていたおもちゃを見つけた子どものように、楽しそうに目を細めて微笑んでいた。
「覚えておいで。学校は組織なの。貴女ひとりでは動かせない、絶対にね。文化祭、楽しみにしているわ」
わざとらしくゆっくりした調子で言い終えると、入り口近くにいた学生が、あたしを外に押し出した。
廊下に出されて振り返るが、鼻の先でピシャリと扉が閉まる。
ぎりりと歯を食いしばり、力一杯、廊下の壁を叩いた。
チュン太か詩織を連れてくれば良かった……と思ったけれど、過ぎたことはもう考えても仕方がない。
居心地の悪さを感じながら、背筋を伸ばして前を見据えた。
「あら文化祭実行委員カッコ暫定カッコ閉じる さん。珍しいわね、生徒会になにか用?」
虎蛇の数倍もの広さを持つ生徒会室の単独の会長席で、小さな吉崎いのがふんぞり返っていた。
その両脇をガッチリと固めるように、副会長と書記の男が睨みを効かせている。
「文化祭の件で、話を通しに来た」
気にしないようにして、あえて静かな話し方を心がける。文化祭を成功させるためには、こんなところで問題を起こしてはいけない。
「あなたが会長でしょ? なぜ生徒会が関係あるのかしら? まさか、会長なのに仕切れなくて泣きつきに来たの?」
「いいえまさか。最初の取り決めだけでも明確にしようと思ってね。後で文句を言われても困るから」
「あら、まるで私たちが貴女たちの妨害をするかのように聞こえるけれど? そんな礼儀もない方とは話したくもないのが本心ね」
まったく、彼女は責任転嫁の天才だな。
「普通の話をしているだけだけど、そう歪曲して聞こえるということは何か後ろめたいことがあるのかしら。それにしても、学校行事に生徒会の私怨で非協力的な態度を取るなんて、こもの……とても残念ね」
「り、凛々子! あんた今、小物って!」
「いえ? ではあたしのことを信用していないだけなら、基本的に去年のルールで運びます。前会長たちが決めたものであれば、文句はないでしょう。ただしそれに法っている以上、あなたたちに口を挟む権利はない。以上よ」
他のメンバーからの視線が突き刺さる中、いのに背を向けて出口に向かう。
「凛々子」
いのが呼ぶ。
「全校生徒の期待がかかっています。失敗は許されないわ」
「もちろん成功させる。必ずね。だから、安心してまかせなさい」
今度こそ部屋を出ようと、扉に手をかけた。
「ねえ、ちょっと雑談なんだけど」
いのの笑いを含む声に、こめかみがぴくりと反応する。
「そういえばあなた。中学校で、生徒会長に立候補したんですって?」
いのとは中学は別だ。どうしてそのことを。どうして今。
「ふふ。結果は残念だったみたいね? そういえば今回も文化祭実行委員なんていう“誰でも入れる委員会”で“自称会長”をかたって喜んでるみたいだけれど」
「……なにが言いたいの」
視線だけで振り返り、いのを睨みつける。
彼女は隠されていたおもちゃを見つけた子どものように、楽しそうに目を細めて微笑んでいた。
「覚えておいで。学校は組織なの。貴女ひとりでは動かせない、絶対にね。文化祭、楽しみにしているわ」
わざとらしくゆっくりした調子で言い終えると、入り口近くにいた学生が、あたしを外に押し出した。
廊下に出されて振り返るが、鼻の先でピシャリと扉が閉まる。
ぎりりと歯を食いしばり、力一杯、廊下の壁を叩いた。
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