彼女たちを守るために俺は死ぬことにした
7/19(日) 葛西詩織⑨
階段を上がって、先輩がいる部屋を視界にとらえた。ドアの前に立っていた鹿之助さんはこっちに気づくと、手を広げて行く手を阻む。
「部田さん。お待ちください」
「どうして?」
「今、旦那さまと奥さまがいらっしゃっているからです」
「ええ。だから挨拶をしに来たのよ」
「それは結構ですが、今は……」
涼しい顔してこんな年上の人にタメ口叩いて。メンタルすげーな凛々姉。
どうしたもんかと思っていると、ガチャリとドアが開いた。部屋から出てきたのは、白シャツにベージュのタイトスカートをはいた前下がりヘアのキリッとした女の人だ。
この人が先輩のお母さんか。なんか……先輩と全然雰囲気違うな。
「聞こえていました。構いませんよ、お入りなさい」
かっこいい〜! うちの子どもっぽい母親とは大違いなんだけど。
でも口角を無理矢理上げたような笑い方は、正直あんまり好きじゃない。先輩が似なくてよかった。
おばさんに促されて部屋に入る。ベッドサイドの椅子に50代前半くらいの男性が座っていた。
Yシャツを腕まくりしているお父さんらしき人は、俺たちを見ると立ち上がって会釈した。つられて俺たちも頭を下げる。先輩は……起き上がってベッドに座っていた。
「初めまして。朝陽ヶ浜高校虎蛇会会長、部田凛々子です」
隣で凛々姉が挨拶をする。慌てて俺も頭を下げる。
「このたびは合宿のためにお屋敷を使わせていただきありがとうございました。お忙しい中、五百蔵さんまでお付き添いくださり感謝いたします。そして充分に注意をしていたつもりだったのですが、詩織さんの身体に負担をかけてしまい、申し訳ありませんでした」
二度目のお辞儀。
「……いいえ。こちらも迂闊でした。詩織が珍しく学校行事に参加したいなどいうから応援してあげたけど、やっぱりダメね。弱い子なのだから」
おばさんはイライラした調子でため息を漏らした。
「委員会をしているとは聞いていたが、詩織には難しかったようだね。彼女は今後、勉学の方にだけ注力させようと思っている。希望の大学に行くためには、詩織もそれがいいだろう?」
ベッドサイドのおじさんが先輩に優しく語りかける。先輩はうつむいたままだ。
「それでは、高校生活はどうでもいいと?」
と、凛々姉。うわー、めちゃくちゃムッとしてる。
おばさんが呆れた顔で、じろりと凛々姉を上から下まで品定めをするように見た。無意識なんだろうけど、気分悪いな。
「貴女のことではないわ。この子は無理なの。身体が弱く、貴女が日常生活と思っていることでさえ負担になっているの。だから親として、得意な勉強面を伸ばしてあげたいと思うのよ。健康であれば部活もさせてあげたいくらいだけど、ねえ?」
と、おばさんはおじさんに同意を求める。残念そうな口ぶりの割に、言葉に心はこもってないんですけど。
先輩はうつむいたままだし、反論する様子はゼロ、か。本当にこれでやめるつもりなのかよ……。
「合宿が終わるまでこの家は好きに使ってくれて構わない。しかし合宿が終わり次第、詩織は委員会を辞めさせてもらう。短い間だったけれど仲良くしてくれてありがとう。今までこの子が迷惑をかけてすまなかったね」
にこやかにおじさんは言う。わざとらしいほどの、ことなかれ主義感。笑っているうちに引けってことか。
なんだそれ。くそみてーだな。
「部田さん。お待ちください」
「どうして?」
「今、旦那さまと奥さまがいらっしゃっているからです」
「ええ。だから挨拶をしに来たのよ」
「それは結構ですが、今は……」
涼しい顔してこんな年上の人にタメ口叩いて。メンタルすげーな凛々姉。
どうしたもんかと思っていると、ガチャリとドアが開いた。部屋から出てきたのは、白シャツにベージュのタイトスカートをはいた前下がりヘアのキリッとした女の人だ。
この人が先輩のお母さんか。なんか……先輩と全然雰囲気違うな。
「聞こえていました。構いませんよ、お入りなさい」
かっこいい〜! うちの子どもっぽい母親とは大違いなんだけど。
でも口角を無理矢理上げたような笑い方は、正直あんまり好きじゃない。先輩が似なくてよかった。
おばさんに促されて部屋に入る。ベッドサイドの椅子に50代前半くらいの男性が座っていた。
Yシャツを腕まくりしているお父さんらしき人は、俺たちを見ると立ち上がって会釈した。つられて俺たちも頭を下げる。先輩は……起き上がってベッドに座っていた。
「初めまして。朝陽ヶ浜高校虎蛇会会長、部田凛々子です」
隣で凛々姉が挨拶をする。慌てて俺も頭を下げる。
「このたびは合宿のためにお屋敷を使わせていただきありがとうございました。お忙しい中、五百蔵さんまでお付き添いくださり感謝いたします。そして充分に注意をしていたつもりだったのですが、詩織さんの身体に負担をかけてしまい、申し訳ありませんでした」
二度目のお辞儀。
「……いいえ。こちらも迂闊でした。詩織が珍しく学校行事に参加したいなどいうから応援してあげたけど、やっぱりダメね。弱い子なのだから」
おばさんはイライラした調子でため息を漏らした。
「委員会をしているとは聞いていたが、詩織には難しかったようだね。彼女は今後、勉学の方にだけ注力させようと思っている。希望の大学に行くためには、詩織もそれがいいだろう?」
ベッドサイドのおじさんが先輩に優しく語りかける。先輩はうつむいたままだ。
「それでは、高校生活はどうでもいいと?」
と、凛々姉。うわー、めちゃくちゃムッとしてる。
おばさんが呆れた顔で、じろりと凛々姉を上から下まで品定めをするように見た。無意識なんだろうけど、気分悪いな。
「貴女のことではないわ。この子は無理なの。身体が弱く、貴女が日常生活と思っていることでさえ負担になっているの。だから親として、得意な勉強面を伸ばしてあげたいと思うのよ。健康であれば部活もさせてあげたいくらいだけど、ねえ?」
と、おばさんはおじさんに同意を求める。残念そうな口ぶりの割に、言葉に心はこもってないんですけど。
先輩はうつむいたままだし、反論する様子はゼロ、か。本当にこれでやめるつもりなのかよ……。
「合宿が終わるまでこの家は好きに使ってくれて構わない。しかし合宿が終わり次第、詩織は委員会を辞めさせてもらう。短い間だったけれど仲良くしてくれてありがとう。今までこの子が迷惑をかけてすまなかったね」
にこやかにおじさんは言う。わざとらしいほどの、ことなかれ主義感。笑っているうちに引けってことか。
なんだそれ。くそみてーだな。
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