彼女たちを守るために俺は死ぬことにした

アサミカナエ

7/13(月) 葛西詩織⑦

 あーあ、奥の手もだめかあ。結局、俺は先輩に何もできなかったな……。


「お嬢様はお身体がお強くないのを忘れていないか?」


 ゆっくりと頭を上げる。今さら何を。


「そんなことを忘れられては、お嬢様を預けられません」


 だからなんだよ……。
 って。ん?


「……君がいなくて、誰がお嬢様を守るんだ」

「えっと……??」

「お嬢様を合宿に行かせたいなら、君がしっかりしなさい。良家の令嬢を預かるという意識はないのか!?」


 五百蔵の雄々しい立ち姿に、惚けていた思考が瞬時クリアになる。


「あ、あああります、もちろん!」

「守れるか?」

「守ります、俺の命に変えてでも!!」

「言ったな小鳥遊。死んでも守りなさい!!」

「鹿之助っ……ありがとっ!!」


 先輩は立ち上がって、五百蔵の首に抱きついた。
 先輩さえ許してもらえれば……と思っていたけどまさか、俺まで認められるとは。
 はは、マジか。やった。


「ありがとうございます!」


 俺は再度、深々と頭を下げた。


「小鳥遊くん、ありがとうっ」


 五百蔵の隣で、先輩は満面の笑みを浮かべる。


「じゃあ先輩、虎蛇行こっか!」

「え、でも……」


 不安げだった。ズル休みをした手前、行きづらいのだろうが。


「お嬢様。私はまた後ほど迎えに参ります」

「えっ鹿之助?」

「じゃあ決まりっすね。虎蛇に遠慮することはないんだから」


 俺は先輩のカバンを拾い上げて先に歩く。すぐに後ろから、追いかけてくる足音が聞こえた。
 これでメンバーは揃った。俺たちの夏を迎えられる。

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