彼女たちを守るために俺は死ぬことにした
6/6(土) 芦屋七瀬①
体育会前日、いちごも参加できる午前中に練習を始めた。
俺は会長、いちごは七瀬とバトン練習が今日の課題。思ったとおり、俺と会長との息はピッタリで一発OK。とりあえずこれで、リレーにはなりそうだな!
終わったら音和のスタートを見る約束をしていたので、会長に七瀬を任せて俺といちごは音和のところに行った。
それは、音和の練習を始めてすぐだった。
「うっさいなーーーー!!!」
グラウンドに大声が響く。振り返ると、会長と七瀬がにらみあっていた。
えっと……叫んだのは七瀬か? 日陰にいた葛西先輩が日傘を捨てて二人の元に駆け寄って行くのが見えた。
「知ちゃん……」
「ちょっと行くか」
俺たちも二人の元に走った。
パンッ!!
小気味よい破裂音が響いた。部活動をしていたやつらも一斉に注目する。
「……にすんのよ!!」
パンッ
左頬を押さえながら、七瀬が会長を平手打ちする姿が見えた。空気が緊迫していく。
「二人とも、落ち着いてくださいっ!」
「ありがと、葛西先輩下がって」
二人の元へとたどり着き、おろおろと二人をなだめていた葛西先輩と変わる。
「なにやってんだよ!!」
つかみ合おうとしていた二人の間に入った。会長は背中で全力で押しやり、暴れる七瀬は腕を掴んで引っ張り、バランスを崩させた。
会長が鬼の形相で俺を睨みつける。
「あたしはただ! 芦屋のやる気のない態度をたしなめただけだ!」
七瀬は会長を睨んでいる。やる気なく見える理由を知っているだけに、辛い。
「会長、七瀬は今……」
会長の誤解を解こうと口を開いたのに、七瀬は暴れて腕を引き抜こうと抵抗する。
「やだーーー!!!」
「ちょ、待て、わかったから!」
理由は話すなってことかよ。
「一体なんなのチュン太!」
察した会長が俺と七瀬を交互に見るが、俺は沈黙を貫くしかなかった。
「もーいい、帰る! どーせ生徒会なんかに勝てるわけないし! 頑張っちゃって、みんなばかじゃないの!?」
叫ぶと無理矢理俺の手を振りほどき、のろのろと走って行った。
「おいバカ! 会長、俺あいつを止め……っ」
振り向くと、七瀬の背中を目で追う会長の瞳から光が消えていた。
「裏切り者……」
唇がそう動いた気がして背筋が凍った。会長はきびすを返す。
「今日は解散する」
それだけ言うと、木陰の荷物を取りに歩いて行った。
どくん、どくんと血液が流れる音が大きく聞こえる。
いつの間にか学ランを着た中学生が隣に立っていて、俺と同様に会長の背中を見ていた。
誰だお前。
……ああ、俺か。
中学生の俺は悲しそうな表情を見せて、すっと消えた。
「……みくん! 知実くんっ!」
「……あ」
気づくと、いちごが俺の腕を揺さぶっていた。
「大丈夫? 知ちゃん……」
反対側には音和がしがみついている。
「悪い、飛んでた……。会長は?」
「葛西先輩と帰ったよ。大丈夫? 汗すごい」
いちごがタオルを渡してくれる。
「そっか……ごめん」
「急にどうしたの知実くん」
「どうしたんだろうな」
理由はわかっている。でも、口にしたくなかった。
「知ちゃん帰ったほうがいいよ」
音和に言われてやんの……。よっぽどボーっとしてたんだな。
でも、いちごももうじき上がる時間だし。そうだな。着替えるか。
俺は会長、いちごは七瀬とバトン練習が今日の課題。思ったとおり、俺と会長との息はピッタリで一発OK。とりあえずこれで、リレーにはなりそうだな!
終わったら音和のスタートを見る約束をしていたので、会長に七瀬を任せて俺といちごは音和のところに行った。
それは、音和の練習を始めてすぐだった。
「うっさいなーーーー!!!」
グラウンドに大声が響く。振り返ると、会長と七瀬がにらみあっていた。
えっと……叫んだのは七瀬か? 日陰にいた葛西先輩が日傘を捨てて二人の元に駆け寄って行くのが見えた。
「知ちゃん……」
「ちょっと行くか」
俺たちも二人の元に走った。
パンッ!!
小気味よい破裂音が響いた。部活動をしていたやつらも一斉に注目する。
「……にすんのよ!!」
パンッ
左頬を押さえながら、七瀬が会長を平手打ちする姿が見えた。空気が緊迫していく。
「二人とも、落ち着いてくださいっ!」
「ありがと、葛西先輩下がって」
二人の元へとたどり着き、おろおろと二人をなだめていた葛西先輩と変わる。
「なにやってんだよ!!」
つかみ合おうとしていた二人の間に入った。会長は背中で全力で押しやり、暴れる七瀬は腕を掴んで引っ張り、バランスを崩させた。
会長が鬼の形相で俺を睨みつける。
「あたしはただ! 芦屋のやる気のない態度をたしなめただけだ!」
七瀬は会長を睨んでいる。やる気なく見える理由を知っているだけに、辛い。
「会長、七瀬は今……」
会長の誤解を解こうと口を開いたのに、七瀬は暴れて腕を引き抜こうと抵抗する。
「やだーーー!!!」
「ちょ、待て、わかったから!」
理由は話すなってことかよ。
「一体なんなのチュン太!」
察した会長が俺と七瀬を交互に見るが、俺は沈黙を貫くしかなかった。
「もーいい、帰る! どーせ生徒会なんかに勝てるわけないし! 頑張っちゃって、みんなばかじゃないの!?」
叫ぶと無理矢理俺の手を振りほどき、のろのろと走って行った。
「おいバカ! 会長、俺あいつを止め……っ」
振り向くと、七瀬の背中を目で追う会長の瞳から光が消えていた。
「裏切り者……」
唇がそう動いた気がして背筋が凍った。会長はきびすを返す。
「今日は解散する」
それだけ言うと、木陰の荷物を取りに歩いて行った。
どくん、どくんと血液が流れる音が大きく聞こえる。
いつの間にか学ランを着た中学生が隣に立っていて、俺と同様に会長の背中を見ていた。
誰だお前。
……ああ、俺か。
中学生の俺は悲しそうな表情を見せて、すっと消えた。
「……みくん! 知実くんっ!」
「……あ」
気づくと、いちごが俺の腕を揺さぶっていた。
「大丈夫? 知ちゃん……」
反対側には音和がしがみついている。
「悪い、飛んでた……。会長は?」
「葛西先輩と帰ったよ。大丈夫? 汗すごい」
いちごがタオルを渡してくれる。
「そっか……ごめん」
「急にどうしたの知実くん」
「どうしたんだろうな」
理由はわかっている。でも、口にしたくなかった。
「知ちゃん帰ったほうがいいよ」
音和に言われてやんの……。よっぽどボーっとしてたんだな。
でも、いちごももうじき上がる時間だし。そうだな。着替えるか。
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