彼女たちを守るために俺は死ぬことにした
5/29(金) 芦屋七瀬②
しかし男子よりも速いだろういちごが加わったことでかなり希望が見えた。
「会長……」
「チュン太……」
俺と会長は手を取り見つめあった。
勝つ。そして、生徒会や学生たちに虎蛇を認めてもらうんだ。部田凛々子が会長の、虎蛇を!
「ていっ」
音和が俺達の手の間にチョップを入れて引き離した。
そこでようやく二人とも我に返った。
「さっそく練習を始めよう。みんな土日は予定ある?」
会長が全員の顔を見渡すと、すぐにいちごが申し訳なさそうに手を挙げる。
「ごめんなさい、あたし週末はバイトがあって。でも早朝に自主練しておきますから」
いちごなら心配ないだろう。有言実行する子だから。
「わかった。日野はもともと虎蛇もバイト優先という話だったしね。でも練習もがんばってもらえる?」
「もちろん手抜きしません。100m、10秒出します!」
世界記録出すつもりかお前は。
次に手を挙げたのは七瀬だった。
「あたしも土日無理~」
「おい、なんでだよ」
「でもおかしくない? 土日まで出るって急に言われても。こっちにだって予定くらいあるわよ」
「予定?」
「……別にいいじゃん」
七瀬はプイとそっぽを向く。その態度に少しカチンときた。
「お前がマイペースなのは知ってるしそこがいいと思ってるけど、虎蛇の存続の危機わかってんの?」
「えー個人でがんばればいいじゃん。あたしもいっちーみたいにひとりでやるからー」
ダメだこいつ絶対やらないわ……。
「芦屋」
黙って話を聞いていた会長が口を開いた。
「プライベートの時間を使わせてもらうのは悪いと思う。でも、虎蛇はそういうところだと知って入っているわけよね?」
「……」
「用事があるのは仕方ない。でも今日から虎蛇は文化祭実行委員の肩書きを凍結されたのよ」
「それさっき聞いたー」
面倒くさそうに答える七瀬に、会長はため息を挟んだ。
「委員会のために特別に使用許可されていた施設。例えば倉庫舎などもしばらく使えなくなったのよ」
書庫って……凛々姉が葛西先輩を釣るためのエサにした場所だっけ。なんでそれを今出すんだ?そんなの、七瀬が食いつくわけないだろ。
「なんですってーーー!!!!」
ガタッと大きな音を立ててイスを立ち上がったのは、やはり葛西先輩だった。頭を抱えてこの世の終わりみたいな顔をしている!?
「みなさんお願いします!! 絶対、鍵を奪い返してくださいっ!!」
先輩の豹変ぶりに全員ぽかんとするしかなかった。釣れすぎだろ!!
そんなカオスな空気の中、七瀬が小さくつぶやいた。
「……分かった。できるだけ練習行くようにします」
会長の顔から緊張が解けた。
「ありがとう芦屋。穂積は?」
「知ちゃんが行くなら行ける」
音和は通常だった。
「マジかー。いや、でももう大体は……」
まだ嫌そうにぶつくさつぶやく七瀬は気になるが。
会長の視線が音和から俺に動いた。
「今更だけど、チュン太は大丈夫よね?」
「もちろん」
答えてから葛西先輩を見る。
先輩は書庫を守ってもらえると思ったみたいで、目をキラキラさせていた。
「葛西先輩も来てくれますよね?」
その問いに眉をしかめ、首を傾げる。
「? でも私、走れないし、日光も苦手で……」
「無理じゃなければ日陰でもいいので、俺たちのこと見ていて欲しいんです」
葛西先輩の頭はきっと混乱しているんだろう。目をパチパチさせていた。
「そんなの、お邪魔では……?」
「だって俺達、チームじゃないっすか」
やっと意味が伝わったらしい。顔が少しずつ赤くなっていく。
そして俯き、こくりと小さく頷いた。
練習は明日からになった。
それは虎蛇会の正式な共同活動がスタートする日といっても、決して過言ではないんじゃないか、と思う。
「会長……」
「チュン太……」
俺と会長は手を取り見つめあった。
勝つ。そして、生徒会や学生たちに虎蛇を認めてもらうんだ。部田凛々子が会長の、虎蛇を!
「ていっ」
音和が俺達の手の間にチョップを入れて引き離した。
そこでようやく二人とも我に返った。
「さっそく練習を始めよう。みんな土日は予定ある?」
会長が全員の顔を見渡すと、すぐにいちごが申し訳なさそうに手を挙げる。
「ごめんなさい、あたし週末はバイトがあって。でも早朝に自主練しておきますから」
いちごなら心配ないだろう。有言実行する子だから。
「わかった。日野はもともと虎蛇もバイト優先という話だったしね。でも練習もがんばってもらえる?」
「もちろん手抜きしません。100m、10秒出します!」
世界記録出すつもりかお前は。
次に手を挙げたのは七瀬だった。
「あたしも土日無理~」
「おい、なんでだよ」
「でもおかしくない? 土日まで出るって急に言われても。こっちにだって予定くらいあるわよ」
「予定?」
「……別にいいじゃん」
七瀬はプイとそっぽを向く。その態度に少しカチンときた。
「お前がマイペースなのは知ってるしそこがいいと思ってるけど、虎蛇の存続の危機わかってんの?」
「えー個人でがんばればいいじゃん。あたしもいっちーみたいにひとりでやるからー」
ダメだこいつ絶対やらないわ……。
「芦屋」
黙って話を聞いていた会長が口を開いた。
「プライベートの時間を使わせてもらうのは悪いと思う。でも、虎蛇はそういうところだと知って入っているわけよね?」
「……」
「用事があるのは仕方ない。でも今日から虎蛇は文化祭実行委員の肩書きを凍結されたのよ」
「それさっき聞いたー」
面倒くさそうに答える七瀬に、会長はため息を挟んだ。
「委員会のために特別に使用許可されていた施設。例えば倉庫舎などもしばらく使えなくなったのよ」
書庫って……凛々姉が葛西先輩を釣るためのエサにした場所だっけ。なんでそれを今出すんだ?そんなの、七瀬が食いつくわけないだろ。
「なんですってーーー!!!!」
ガタッと大きな音を立ててイスを立ち上がったのは、やはり葛西先輩だった。頭を抱えてこの世の終わりみたいな顔をしている!?
「みなさんお願いします!! 絶対、鍵を奪い返してくださいっ!!」
先輩の豹変ぶりに全員ぽかんとするしかなかった。釣れすぎだろ!!
そんなカオスな空気の中、七瀬が小さくつぶやいた。
「……分かった。できるだけ練習行くようにします」
会長の顔から緊張が解けた。
「ありがとう芦屋。穂積は?」
「知ちゃんが行くなら行ける」
音和は通常だった。
「マジかー。いや、でももう大体は……」
まだ嫌そうにぶつくさつぶやく七瀬は気になるが。
会長の視線が音和から俺に動いた。
「今更だけど、チュン太は大丈夫よね?」
「もちろん」
答えてから葛西先輩を見る。
先輩は書庫を守ってもらえると思ったみたいで、目をキラキラさせていた。
「葛西先輩も来てくれますよね?」
その問いに眉をしかめ、首を傾げる。
「? でも私、走れないし、日光も苦手で……」
「無理じゃなければ日陰でもいいので、俺たちのこと見ていて欲しいんです」
葛西先輩の頭はきっと混乱しているんだろう。目をパチパチさせていた。
「そんなの、お邪魔では……?」
「だって俺達、チームじゃないっすか」
やっと意味が伝わったらしい。顔が少しずつ赤くなっていく。
そして俯き、こくりと小さく頷いた。
練習は明日からになった。
それは虎蛇会の正式な共同活動がスタートする日といっても、決して過言ではないんじゃないか、と思う。
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