昔々のそのまた昔

葉月瞬

LGBTの昔話

 昔々あるところに、おじいさんとおじいさんが住んでいました。おじいさん達は毎日イチャコラしながら幸せに暮らしていました。
 ある日、おじいさんは山へ芝刈りに、おじいさんは川へ洗濯に行きました。すると、川の上流からどんぶらこと大きな桃が流れてきました。おじいさんは大事そうに持って帰りました。
 食べるために半分に切ったところ、中から元気な男の赤ちゃんが出てきました。おじいさん達はたいそう驚きました。
 桃から生まれたので桃太郎と名付けられ、大切に育てられました。

 月日は巡り、桃太郎が十六歳の誕生日を迎えた頃。彼はふと疑問に思って、おじいさん達に訊ねました。
「ねえ、おじいさんたちは何で男同士で結婚してるの?」
 おじいさん達は顔を見合わせました。桃太郎はノーマルだったので、おじいさん達が愛し合っていることは理解できないのだろうと思いました。そこで、こう説明しました。
「ワシらはね、愛し合っているんじゃ。愛は人それぞれなんじゃよ」
 桃太郎にとっては何だか難しい話で、顔をしかめただけで理解には及びませんでした。でもそれ以上追求することもありませんでした。

 更に月日は巡り、おじいさん達があの世に旅だった頃。桃太郎は十八歳の立派な青年に育っていました。
 おじいさん達の葬儀を一通り終えた頃、桃太郎は旅立つ決意をします。
 おじいさん達が言っていた、LOVEについて知るための旅路に出る決意です。途方もない長い歳月を予期して覚悟の旅立ちでした。

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