転生までが長すぎる!

兎伯爵

天界の海

 毎週恒例の面談日。
 いつも通り、担当の天使と雑談していた。

「だからキノコとタケノコで争うのは不毛なんだよ。俺、どちらかというとタケノコの方が好みだけど、職場で食ってたのはキノコだし。アレ、手が汚れにくいから助かるんだよな」
「機能性まで持ち込んだら話が変わるでしょう。状況次第でいくらでも変わります。あくまでお菓子の論争なら、どちらが食べたいかで争うべきです」
「食べやすさも重要だと思うけどなぁ。そもそもどっちも美味いじゃん」
「この玉虫色の日和見主義者め」
「お菓子一つでそこまで言うか」

 雑談である。
 それ以上でもそれ以下でもない。

 この面談、意味あるのかな。

 きのこたけのこ戦争について一区切りしたタイミングで、俺はふと思い出して問いかけた。

「そういえば、ここって近くに海があるのか?」
「海ですか? ええ、ありますよ。現世ではまず見れない景色なので、人気のデートスポットですね」
「へぇ」

 なら、人はちゃんといるか。

 もし海に行って誰もいなかったら、完全に意味がないし。

「人気のデートスポットなんですよ」
「なんで繰り返した」
「いえ、別に。行きたいんですか?」
「んー、まあ」

 下手に突っ込まれても困るな。
 俺はそこまで腹芸が得意じゃない。

「ちょっと興味があるだけだよ。生前、就職してからは一度も行ってないしな」
「そうですか。誰かを誘って行ってみてはどうです?」
「いや、訓練期間中は外出禁止だし」
「では、それが終わってからですね。訓練が完了しても、手続きが終わるまでは転生できませんから」

 観光くらいは出来るのか。
 確かに、滅多にある機会ではないし、少しくらいは見て回りたいかもしれない。

「けど、デートスポットなんだよな」
「そうですね」
「じゃあきついな。俺、女の知り合いいないし」
「天使キック」
「痛ぇ!」

 なんで蹴られたんだ、俺。

コメント

コメントを書く

「ファンタジー」の人気作品

書籍化作品