転生までが長すぎる!
天使のお仕事(公務員)
週に一度の面談日。
相手はいつもの天使だ。
「毎回担当してもらってるけど、たまには変わったりしないの?」
「なんですか、わたしが担当だと不満ですか」
「いや、そうじゃないけど」
「ならいいじゃないですか。美少女とお喋りなんて、世が世なら有料サービスですよ。感謝の念が足りませんね」
「うーん」
「なにか?」
「何だろ。アンタ、どっかで会ったことある?」
「急に何ですか。ナンパですか」
「違う。なんか言動とかに既視感が……あ、思い出した」
「ほう」
「ウチの営業だ。クソみたいな案件取ってきておいて、恩着せがましく『俺がいるから仕事がもらえるんだぜ』的な態度するんだよ。ドヤ顔がよく似てらっしゃる」
「天使スピア」
「いってぇ!」
ボールペンで額を刺された。
この天使、すぐに手を出しやがる。
「さて、雑談はこれくらいにして、そろそろ本題に入りましょう」
「人の頭ぶっ刺す行為を雑談とは言わない」
「今日はこんなモノを持ってきましたよ」
「嫌な予感しかしねぇ」
「天界の女性百人に聞いた! 男性に求める魅力ランキング!」
ビックリした。
転生、一切関係ねぇ。
「なんでだよ。いやホントになんでだよ!」
「婚活中だと聞きまして」
「漏らしたのは誰だ!?」
あの三人。
ゴリラさん、イガグリ、マメシバの誰かしかいない。
口止めしておくべきだったか。
「そこはそれ、風の噂で。というわけで、順番に発表していきます」
「あんまり興味ない」
「発表していきます!」
「……いえーい」
「結構。では一位から三位まで。顏! 財力! 社会的地位っ!」
「……」
「全滅ですね」
「だから聞きたくなかったのに」
「ドンマイ」
「アンタは何なの? 死者に鞭を打つのが趣味なの?」
いや、実際に死者にやる気を出させて異世界に送り込むことが仕事だから、あながち間違いじゃないか。
嫌だなぁ。
「まあまあ。幸い、四位に清潔感、五位に包容力とあります。今からでも頑張れば、中の上くらいにはなれるでしょう。ファイト」
「頑張っても平均値超えが限界ですか、そうですか」
「身の程を弁えなさい」
「酷い」
「なら、精進することです。このままだと一生独身ですよ」
「そっちも独り身だろうに」
「!」
天使の結婚適齢期は分からないが……
前に行き遅れという言葉に反応していたし、独身であることは間違いないだろう。
「……確かに、わたしはまだ結婚していませんが」
「なら俺と変わらないだろ」
「違います」
「いや、違わないだろ」
「黙りなさい、無職」
「むしょ……っ!」
言ってはならないことを。
死んじまったんだから、無職で当然だろうが。
「せ、生前はちゃんと働いてたし! 今だって訓練受けてるし!」
「うるさいですよ。公務員のわたしと無職のあなた、そこには天と地ほどの差があります。一緒にしないでください」
「公務員……!?」
天使、公務員だったのか。
いいなぁ。
俺も試験を受けて、市役所あたりに就職していたら、もう少しマシな人生を送っていたのだろうか。
「くそ……! 公務員なんて! 羨ましいなぁ!」
「清々しい態度ですね」
「それに比べて俺は……」
「急に死んだ魚の目に」
「いや、前世を思い出して」
考えてみたら、社畜だった頃と無職の現在なら、現在の方が確実に充実はしている。
働いているからといって、幸せとは限らない。
そう思ったら急に虚しくなった。
「まあ、なんと言いますか」
そんな俺の態度に何か感じるものがあったのか、天使が謝ってきた。
「無職は言い過ぎました。謝ります」
「……ああ、うん。俺も余計なこと言っちゃったし」
「ならお相子です。それに、安心してください。訓練期間中はちゃんとお金が支払われていますから」
「え? そうなの?」
「転生の為の準備資金です。流石に無一文で異世界に行きたくはないでしょう」
「知らなかった」
「言いませんでしたから。どうせ外出は出来ないので、訓練が終わるまで使う機会もないですし」
それはそうだ。
基本、日中は訓練で潰れるし、食事も食堂で貰えるから、金を使う機会はない。
「まあ、人によって異性に求めるものは違いますからね。わたしとしてはこんなランキング見てる暇があったら、取り柄の一つも磨きなさいと言いたいところです」
「最後に全部ひっくり返したよ、この天使」
「異世界に行くにせよ、何にせよ、です。結婚がしたいなら、ちゃんと手に職くらいはつけてください。それが最低条件です」
「今は専業主夫って道もある」
「わたしは認めません」
「鬼だ」
「天使です」
ホントかなぁ。
------------------------------------------------------------------------------------------
訓練期間は半年。
俺を含めて、生き残っている訓練生は四名。
何だかんだ言って、他の三人には夢がある。
周りから見れば笑われるような内容でも、本人にとっては真剣なものだ。
以前、互いの夢を語り合ったことで、結束が深まったことは確かだった。
だからこそ、次第に厳しくなる訓練にも、今日まで耐えてこれたのだ。
だが――意外なところで、問題が起きた。
最年長であるゴリラさん。
そして、最後に同室になったマメシバ少年が原因だった。
相手はいつもの天使だ。
「毎回担当してもらってるけど、たまには変わったりしないの?」
「なんですか、わたしが担当だと不満ですか」
「いや、そうじゃないけど」
「ならいいじゃないですか。美少女とお喋りなんて、世が世なら有料サービスですよ。感謝の念が足りませんね」
「うーん」
「なにか?」
「何だろ。アンタ、どっかで会ったことある?」
「急に何ですか。ナンパですか」
「違う。なんか言動とかに既視感が……あ、思い出した」
「ほう」
「ウチの営業だ。クソみたいな案件取ってきておいて、恩着せがましく『俺がいるから仕事がもらえるんだぜ』的な態度するんだよ。ドヤ顔がよく似てらっしゃる」
「天使スピア」
「いってぇ!」
ボールペンで額を刺された。
この天使、すぐに手を出しやがる。
「さて、雑談はこれくらいにして、そろそろ本題に入りましょう」
「人の頭ぶっ刺す行為を雑談とは言わない」
「今日はこんなモノを持ってきましたよ」
「嫌な予感しかしねぇ」
「天界の女性百人に聞いた! 男性に求める魅力ランキング!」
ビックリした。
転生、一切関係ねぇ。
「なんでだよ。いやホントになんでだよ!」
「婚活中だと聞きまして」
「漏らしたのは誰だ!?」
あの三人。
ゴリラさん、イガグリ、マメシバの誰かしかいない。
口止めしておくべきだったか。
「そこはそれ、風の噂で。というわけで、順番に発表していきます」
「あんまり興味ない」
「発表していきます!」
「……いえーい」
「結構。では一位から三位まで。顏! 財力! 社会的地位っ!」
「……」
「全滅ですね」
「だから聞きたくなかったのに」
「ドンマイ」
「アンタは何なの? 死者に鞭を打つのが趣味なの?」
いや、実際に死者にやる気を出させて異世界に送り込むことが仕事だから、あながち間違いじゃないか。
嫌だなぁ。
「まあまあ。幸い、四位に清潔感、五位に包容力とあります。今からでも頑張れば、中の上くらいにはなれるでしょう。ファイト」
「頑張っても平均値超えが限界ですか、そうですか」
「身の程を弁えなさい」
「酷い」
「なら、精進することです。このままだと一生独身ですよ」
「そっちも独り身だろうに」
「!」
天使の結婚適齢期は分からないが……
前に行き遅れという言葉に反応していたし、独身であることは間違いないだろう。
「……確かに、わたしはまだ結婚していませんが」
「なら俺と変わらないだろ」
「違います」
「いや、違わないだろ」
「黙りなさい、無職」
「むしょ……っ!」
言ってはならないことを。
死んじまったんだから、無職で当然だろうが。
「せ、生前はちゃんと働いてたし! 今だって訓練受けてるし!」
「うるさいですよ。公務員のわたしと無職のあなた、そこには天と地ほどの差があります。一緒にしないでください」
「公務員……!?」
天使、公務員だったのか。
いいなぁ。
俺も試験を受けて、市役所あたりに就職していたら、もう少しマシな人生を送っていたのだろうか。
「くそ……! 公務員なんて! 羨ましいなぁ!」
「清々しい態度ですね」
「それに比べて俺は……」
「急に死んだ魚の目に」
「いや、前世を思い出して」
考えてみたら、社畜だった頃と無職の現在なら、現在の方が確実に充実はしている。
働いているからといって、幸せとは限らない。
そう思ったら急に虚しくなった。
「まあ、なんと言いますか」
そんな俺の態度に何か感じるものがあったのか、天使が謝ってきた。
「無職は言い過ぎました。謝ります」
「……ああ、うん。俺も余計なこと言っちゃったし」
「ならお相子です。それに、安心してください。訓練期間中はちゃんとお金が支払われていますから」
「え? そうなの?」
「転生の為の準備資金です。流石に無一文で異世界に行きたくはないでしょう」
「知らなかった」
「言いませんでしたから。どうせ外出は出来ないので、訓練が終わるまで使う機会もないですし」
それはそうだ。
基本、日中は訓練で潰れるし、食事も食堂で貰えるから、金を使う機会はない。
「まあ、人によって異性に求めるものは違いますからね。わたしとしてはこんなランキング見てる暇があったら、取り柄の一つも磨きなさいと言いたいところです」
「最後に全部ひっくり返したよ、この天使」
「異世界に行くにせよ、何にせよ、です。結婚がしたいなら、ちゃんと手に職くらいはつけてください。それが最低条件です」
「今は専業主夫って道もある」
「わたしは認めません」
「鬼だ」
「天使です」
ホントかなぁ。
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訓練期間は半年。
俺を含めて、生き残っている訓練生は四名。
何だかんだ言って、他の三人には夢がある。
周りから見れば笑われるような内容でも、本人にとっては真剣なものだ。
以前、互いの夢を語り合ったことで、結束が深まったことは確かだった。
だからこそ、次第に厳しくなる訓練にも、今日まで耐えてこれたのだ。
だが――意外なところで、問題が起きた。
最年長であるゴリラさん。
そして、最後に同室になったマメシバ少年が原因だった。
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