暗殺者の欲望

カキ

依頼

「俺に暗殺を頼むとは、お前は俺の事を知ってる事になるぞ」
 彼は私の依頼を聞くなりライターを取り出し構えた。
 彼は目を見開き彼が【勝負欲】と言ってる物だった。
「あなたに暗殺を依頼しているのよ。それともなに聞けないって言うことを態度でしめしてるの?」
 彼はさっと冷静さを取り戻し、身なりを整えた。
 彼がこの依頼を聞いているか不安な事と、[欲]に暗殺を依頼する報酬がどんなものかが解らないのが怖かったが、今までの行動を考えてこの態度が最も効果的だった。
 彼は彼のプライドが許さなかったらしく、ため息をつきながらしぶしぶ「言ってみろ」と一応聞いてくれた。
「私の依頼は、この町のロード軍支部にいる兵隊を全員殺して、アナトを助けなさい!」
「お前、それはもう暗殺じゃないぞ。暗殺は人知れずある特定の人物を殺害する事を意味する。それはただの大量殺害だ。」
 彼は真面目な顔をして暗殺の意義を説いた、さすがにそこまで知らなかった私はなにも言い返せなかった。
 彼は話を続けた。
「お前はアナトのなんなんだ? それを伝えてくれれば、その依頼を聞いてやってもいいが。」
 確かに私にはなにも関係のない事だった。
 ギルドで知り合って話した時間は4時間くらい、一緒に今ここにいる暗殺者も見つかった。
 本来なら私の本当の依頼を頼むべきかもしれない。
 本来ならーーー
「確かに私には、、彼とは何にもない。」
 その言葉を聞くなり彼は私の前から消えようとした。
「でも、私は彼に借りがある。その宝石もそうだしそれより彼は私を身を呈して逃がしてくれた。」
 青年は足を止めて振り返った。
「私は、、彼に宝石を返して、彼に謝りたい!」
 先ほどまで私を見下していた目を変えて私を見つめていた。
「それで?」
「え?」
「お前もこの依頼に連れていけばいいのか?」
 私は顔を上げて彼を見た、数分前とは別人の優しい顔をして彼は手を差し出してくれた。
「お前も一緒に行ってアナトに宝石を返しに行くんだろ? なら俺と行くぞ!」
 彼は私に深くお辞儀した。
「暗殺家 ダイシ! もう一つの名は【勝負欲】。あなたの依頼を喜んでお受けしましょう。」
 私は不思議そうな表情をした。
 彼がいまいち私の依頼を受けてくれる理由がなかったからである。
「お前が俺の報酬にしている「危険度」が高い殺しだと思ったからだ。」
「それじゃ!」
 アナトを救い出す唯一の光が見えた。
 私は安堵した表情で赤髪の暗殺家の後に続いた。






 




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