神獣殺しの精霊使い
第34話 お使い
☆~
偏に言えば世界の要。
それこそが、新王都ラルスである。
魔族や世界7大獣の攻撃からなんとか一命を取り留めたガリレア王国から見て、南西部に位置する場所には、新王都として王都ラルスが急ピッチで再建している。
それもこれも、全ては戦力ダウンを防ぐため、防衛力を落とさないようにするためらしい。
つまりは、精霊神だけではなく、絶対的な力を持つ王都が、ガリレア王国に居座ることで、近隣に静かながらも強力な威圧をしているということ。
それこそ、用心棒みたいなものかもしれない。
まあ、この場合、人ではなく、都市なのだが。
とにかくだ、端的に言えば、この都市は人類の宝でもあり、最後の砦となる。
「……ということか、つまりは、王都ラルトルスが滅ぼされたから、早急に変わりの巨大都市が必要になり、作られたと……」
俺たちは新王都ラルスに風の精霊バールによって強引に連れられて来ていた。
復興の都とでも言うべきか、都市の周辺こそ、巨大な壁で囲まれているものの、内部は建築途中の建物が多数ならび、また、鍛冶師たちが大量の武器を作り、またまた兵士たちが訓練をしていた。
そんな中、場違いに巨大な建物が都市の中心に佇んでいる。
見た目は、城とでもいうべきかもしれない。城門付近には、大量の兵士たちが居座り俺たちを注意深く観察してくる。
ただ、別に睨み付けてくるというのではなく、ただ子供が何故ここに? みたいな感じだからそこまで不愉快では無い。
むしろ気恥ずかしいくらいだ。
そして、王城のすぐそばまで来ると、バールは振り向き言う。
『ここが、都市の要の王城、ラルト城さ』
「それで、ここに連れて来て、いったいなんのつもりだ? 俺たちは金なんて持ってないぞ」
『そうですよ、私たちは貧乏なんですから!』
「っ……」
なんだか、事実の事とは言え、実際に聞くと胃が痛い。それも、これも、全てバイトすら出来ないこの世界が悪いんだ。
と、なんとなく他人のせいにしてみる。まあ、実際他人のせいではあるのだが。
そんな俺の心中を無視するかのように、バールは高らかに笑い。
『ははっ、それも今の内さ、神獣を売れば、君たちも一瞬のうちに小金持ちになるでしょ? まったくうらやましい限りさ』
「……まさか、お前、ここまで連れてきたから分け前を寄越せってことか? だったらやらんぞ? これは俺たちが命がけで手に入れたものだからな」
『そうです! いくら精霊仲間といえ、これだけはあげませんよ!』
そうだ、こいつはもしかしたら、俺たちに用があるのではなく、俺たちが持つ荷物に用があるのかもしれない。それこそ、盗人でもするつもりか?
だが、バールはきょとんとした顔で俺たちを見てくる。それこそ、君たち何を言っているの? みたいな感じでだ。
そして、少し微笑み、真っ直ぐな目で俺たちを眺めた。
『えっ? まさかあ、そんなことしないよ。これでも、僕は金には困っていないからね。それこそ、神獣の報奨金ごときでそんな馬鹿なことしないよ』
なんだろう? 報奨金目当てではないとわかったのに、ムカムカする。
まあ、いい。
こいつに悪気があるとは思えんし、ここまで、案内してもらった恩もあるしな。
ここは、許してやろう。
「それで、換金所はどこにあるんだ?」
『それより、君たちに頼みがあるんだ、いいかな?』
質問に質問で返された。
だが、これはあれだ。換金所の場所が知りたければ、まずは私の依頼を受けてもらおうか? みたいなかんじか?
まあ、聞いてみるだけ聞くか。
それに俺たちに有益な依頼かもしれない。
「まあ、聞くだけなら……」
『もちろん、報酬はいただきますよ?』
まあ、ただでここまで連れ来てくれた訳ではないということだ。だが、それも当然か。
でも、ここでの頼みなんてそんなに思いつかない。
どうせ、王都ラルスの防衛依頼か、復興の手伝いをしてほしいとか、そんな感じだろう。
それとも、農業でもしてほしいとかか?
「それで、何の頼みだ?」
『ああ、実はね、君たちにはお使いをして貰いたいのさ』
「お使い? それは隣町とかに買い出しでも行けってことか?」
『そんなところさ、王都ラルス、復興の都なんて自称しているものの、なによりも人手不足でね、食料がもう少しで尽きそうなんだ。だから、頼んだってわけさ』
お使い。
なんとも簡単な依頼だ。これこそ、世界一楽な依頼かもしれん。
それに、いくら荷物が増えようが魔法の袋に入れればいいだけだし。
「わかった、その代り報酬の半分でいいから先払いにしてくれ」
『ん? なんでかな?』
「俺はまだバールを信用したわけじゃない、それこそ、タダ働きだけはしたくないからな、半分でいいから先に払ってくれ」
『うーん、その条件だと、僕も同じ感じなんだけどね、君が報奨金を持ち逃げて仕事をしないかもしれないし……』
確かにその通りだ。俺は持ち逃げなどするつもりはないが、まだ会って一日も経ってないのだ、どちらも信頼することなんて不可能だ。
かといって、俺も貰えるかわからないのに、働くつもりもない。
さて、どうするべきか。
と、悩んでいると、バールは腰に掛けていたショルダーバッグから何かを取り出した。見た感じ、紙の束? に見える。
『仕方ない、それなら、手形をあげよう』
「手形? それはなんだ?」
『ああ、手形は契約書の一つさ、簡単に言えば、個人同士の取引じゃなくて、国を間に挟むことで依頼を達成した後じゃないと報奨金を貰えない仕組みさ。これなら、君に依頼金を払わないことも無いし、僕もお金を持ち逃げされる心配もないってこと』
「確かにそれなら問題ないな。では、早速依頼を受けるよ」
『それじゃあ、この名簿を隣町の役場の人に渡せば用意してくれるから。それと、金銭についても、国同士で話は付けてあるから、早急に頼むよ』
「よし、わかったよ」
早速、地図や食料などの旅道具を持ち、王都ラルスを旅立つ。
目指すのは、隣町だ。
因みに、リヤカーを貸してくれるとか言ってくれたがそれは断った。なにせ、とんでもない、量の食糧を運ぶなんて疲れるし。それに魔法の袋に入れれば万事解決だ。
ともあれ、俺とルシアは初めてのお使いに出掛けた。
☆☆
「なんだか、あいつは信用してもいいのかな? それこそ、裏切ったりしないかなあ?」
『どうでしょうね、精霊は基本的には嘘はつかないけど、頼まれたらそのかぎりでは無いので』
「どういうこと?」
『例えば、バルがあの人から聞かれたことにこう答えてって頼んできたら、自分の意思に関係なくその通り答えるかもってこと』
ああ、そういうことか。
精霊本人は嘘をつかないが、第三者が絡んでくると話は別ってわけか。
「でも、まあ、バイトも見つからないし、狩場もないし、ひとまずは頑張るしかないかな。それに、隣町の商品の中に携帯食とかあるかもしれないし」
『そうですね、それに、私の仲間を見つけることができるかもしれないです』
「うん、まあ、頑張るか、それに旅仲間を増やしたいしなあ、それも女の子とか……」
『…………』
なんだか、急に寒気が。
それも、至近距離から感じる気がする。
……でも、まあ、
仲間。
これには憧れる。
今の所、俺とルシアしかいないし、もう一人でもいれば旅も楽しくなる気がする。
それこそ、料理が上手くて、強い人とか最高だ。
ただ、まあ、うん。
「……でも、ルシアが嫌なら誘わないけどね」
『え?』
あれ?
そんなに驚くようなことだろか?
別にルシアが嫌なら無理に仲間を増やそうとは思わない。それこそ、無の精霊だなんてばらされるようなことがあったら、危険だし。
『バル……私、信じてた』
「な、なにが?」
まあ、よくわからんが、とりあえず俺たちは隣町を目指してトコトコ歩き続ける。
偏に言えば世界の要。
それこそが、新王都ラルスである。
魔族や世界7大獣の攻撃からなんとか一命を取り留めたガリレア王国から見て、南西部に位置する場所には、新王都として王都ラルスが急ピッチで再建している。
それもこれも、全ては戦力ダウンを防ぐため、防衛力を落とさないようにするためらしい。
つまりは、精霊神だけではなく、絶対的な力を持つ王都が、ガリレア王国に居座ることで、近隣に静かながらも強力な威圧をしているということ。
それこそ、用心棒みたいなものかもしれない。
まあ、この場合、人ではなく、都市なのだが。
とにかくだ、端的に言えば、この都市は人類の宝でもあり、最後の砦となる。
「……ということか、つまりは、王都ラルトルスが滅ぼされたから、早急に変わりの巨大都市が必要になり、作られたと……」
俺たちは新王都ラルスに風の精霊バールによって強引に連れられて来ていた。
復興の都とでも言うべきか、都市の周辺こそ、巨大な壁で囲まれているものの、内部は建築途中の建物が多数ならび、また、鍛冶師たちが大量の武器を作り、またまた兵士たちが訓練をしていた。
そんな中、場違いに巨大な建物が都市の中心に佇んでいる。
見た目は、城とでもいうべきかもしれない。城門付近には、大量の兵士たちが居座り俺たちを注意深く観察してくる。
ただ、別に睨み付けてくるというのではなく、ただ子供が何故ここに? みたいな感じだからそこまで不愉快では無い。
むしろ気恥ずかしいくらいだ。
そして、王城のすぐそばまで来ると、バールは振り向き言う。
『ここが、都市の要の王城、ラルト城さ』
「それで、ここに連れて来て、いったいなんのつもりだ? 俺たちは金なんて持ってないぞ」
『そうですよ、私たちは貧乏なんですから!』
「っ……」
なんだか、事実の事とは言え、実際に聞くと胃が痛い。それも、これも、全てバイトすら出来ないこの世界が悪いんだ。
と、なんとなく他人のせいにしてみる。まあ、実際他人のせいではあるのだが。
そんな俺の心中を無視するかのように、バールは高らかに笑い。
『ははっ、それも今の内さ、神獣を売れば、君たちも一瞬のうちに小金持ちになるでしょ? まったくうらやましい限りさ』
「……まさか、お前、ここまで連れてきたから分け前を寄越せってことか? だったらやらんぞ? これは俺たちが命がけで手に入れたものだからな」
『そうです! いくら精霊仲間といえ、これだけはあげませんよ!』
そうだ、こいつはもしかしたら、俺たちに用があるのではなく、俺たちが持つ荷物に用があるのかもしれない。それこそ、盗人でもするつもりか?
だが、バールはきょとんとした顔で俺たちを見てくる。それこそ、君たち何を言っているの? みたいな感じでだ。
そして、少し微笑み、真っ直ぐな目で俺たちを眺めた。
『えっ? まさかあ、そんなことしないよ。これでも、僕は金には困っていないからね。それこそ、神獣の報奨金ごときでそんな馬鹿なことしないよ』
なんだろう? 報奨金目当てではないとわかったのに、ムカムカする。
まあ、いい。
こいつに悪気があるとは思えんし、ここまで、案内してもらった恩もあるしな。
ここは、許してやろう。
「それで、換金所はどこにあるんだ?」
『それより、君たちに頼みがあるんだ、いいかな?』
質問に質問で返された。
だが、これはあれだ。換金所の場所が知りたければ、まずは私の依頼を受けてもらおうか? みたいなかんじか?
まあ、聞いてみるだけ聞くか。
それに俺たちに有益な依頼かもしれない。
「まあ、聞くだけなら……」
『もちろん、報酬はいただきますよ?』
まあ、ただでここまで連れ来てくれた訳ではないということだ。だが、それも当然か。
でも、ここでの頼みなんてそんなに思いつかない。
どうせ、王都ラルスの防衛依頼か、復興の手伝いをしてほしいとか、そんな感じだろう。
それとも、農業でもしてほしいとかか?
「それで、何の頼みだ?」
『ああ、実はね、君たちにはお使いをして貰いたいのさ』
「お使い? それは隣町とかに買い出しでも行けってことか?」
『そんなところさ、王都ラルス、復興の都なんて自称しているものの、なによりも人手不足でね、食料がもう少しで尽きそうなんだ。だから、頼んだってわけさ』
お使い。
なんとも簡単な依頼だ。これこそ、世界一楽な依頼かもしれん。
それに、いくら荷物が増えようが魔法の袋に入れればいいだけだし。
「わかった、その代り報酬の半分でいいから先払いにしてくれ」
『ん? なんでかな?』
「俺はまだバールを信用したわけじゃない、それこそ、タダ働きだけはしたくないからな、半分でいいから先に払ってくれ」
『うーん、その条件だと、僕も同じ感じなんだけどね、君が報奨金を持ち逃げて仕事をしないかもしれないし……』
確かにその通りだ。俺は持ち逃げなどするつもりはないが、まだ会って一日も経ってないのだ、どちらも信頼することなんて不可能だ。
かといって、俺も貰えるかわからないのに、働くつもりもない。
さて、どうするべきか。
と、悩んでいると、バールは腰に掛けていたショルダーバッグから何かを取り出した。見た感じ、紙の束? に見える。
『仕方ない、それなら、手形をあげよう』
「手形? それはなんだ?」
『ああ、手形は契約書の一つさ、簡単に言えば、個人同士の取引じゃなくて、国を間に挟むことで依頼を達成した後じゃないと報奨金を貰えない仕組みさ。これなら、君に依頼金を払わないことも無いし、僕もお金を持ち逃げされる心配もないってこと』
「確かにそれなら問題ないな。では、早速依頼を受けるよ」
『それじゃあ、この名簿を隣町の役場の人に渡せば用意してくれるから。それと、金銭についても、国同士で話は付けてあるから、早急に頼むよ』
「よし、わかったよ」
早速、地図や食料などの旅道具を持ち、王都ラルスを旅立つ。
目指すのは、隣町だ。
因みに、リヤカーを貸してくれるとか言ってくれたがそれは断った。なにせ、とんでもない、量の食糧を運ぶなんて疲れるし。それに魔法の袋に入れれば万事解決だ。
ともあれ、俺とルシアは初めてのお使いに出掛けた。
☆☆
「なんだか、あいつは信用してもいいのかな? それこそ、裏切ったりしないかなあ?」
『どうでしょうね、精霊は基本的には嘘はつかないけど、頼まれたらそのかぎりでは無いので』
「どういうこと?」
『例えば、バルがあの人から聞かれたことにこう答えてって頼んできたら、自分の意思に関係なくその通り答えるかもってこと』
ああ、そういうことか。
精霊本人は嘘をつかないが、第三者が絡んでくると話は別ってわけか。
「でも、まあ、バイトも見つからないし、狩場もないし、ひとまずは頑張るしかないかな。それに、隣町の商品の中に携帯食とかあるかもしれないし」
『そうですね、それに、私の仲間を見つけることができるかもしれないです』
「うん、まあ、頑張るか、それに旅仲間を増やしたいしなあ、それも女の子とか……」
『…………』
なんだか、急に寒気が。
それも、至近距離から感じる気がする。
……でも、まあ、
仲間。
これには憧れる。
今の所、俺とルシアしかいないし、もう一人でもいれば旅も楽しくなる気がする。
それこそ、料理が上手くて、強い人とか最高だ。
ただ、まあ、うん。
「……でも、ルシアが嫌なら誘わないけどね」
『え?』
あれ?
そんなに驚くようなことだろか?
別にルシアが嫌なら無理に仲間を増やそうとは思わない。それこそ、無の精霊だなんてばらされるようなことがあったら、危険だし。
『バル……私、信じてた』
「な、なにが?」
まあ、よくわからんが、とりあえず俺たちは隣町を目指してトコトコ歩き続ける。
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