神獣殺しの精霊使い
第24話 失敗
  風使いが集まり行われている、とある大会に俺は参加していた。
当初は余裕で優勝できると思っていたのだが、世間はそんなに甘く無いようで、俺たちは苦戦していた。
風船を風の力で浮かせる。それも敵の妨害風を打ち消しながら能力を操るのは、考えていたよりも難しいことだった。
それに予想していたよりも、敵の魔力量や技力は高く、本気の俺ですら苦戦していた。
『正直な話、今のバルはそこまで特別な存在ではないですよ』
と、俺の心を見通すかのように、隣に居た、白髪の少女は呟いた。
(まったく、人を馬鹿にするような言い方だな)
……とは思ったものの、事実であるため何も言い返せない。
『バルは無力なんです! 私がいないとダメなんです!』
「なにもそこまで言わなくてもいいじゃないか……俺のライフはとっくに0だよ……」
ほんと、なんでここまでルシアは怒っているんだ。まったく見当もつかない。
いや、心当りはある。
先ほど起きた偶然てきなことが原因くらい、俺にもわかる。
でも、まさか、ここまで怒り狂うとは思っていなかった。
「そろそろ、協力してはいただけませんかねえ?」
『ムーリー』
「ええええ、そんなぁ。さっきは協力してくれるって言ったのに!」
『ふん! バルなんて知りません!』
ああ、ほんと、どうしてこうなった。
俺の記憶は、脳は過去の記憶を遡る。
そう。時は遡り、1時間前に戻っていく。
☆☆☆
受付の人に案内され、競技場に向かうと。
そこには、直径15mくらいの円が引かれており、中心にはさらに小さく、直径1m程の円があった。
「これから、皆様にはこの小さい円の中に入ってもらいます。そこから、風船を制御してください。あっ!言っときますが、この小さい円から一歩でも外に出たらその時点で負けですからね!」
またまた、追加ルールか。
さっきから、事あるごとに、ルールが増えていく。もしかしてこの人、全ルールを覚えていないのかな?
それとも、即興でルールを作っているとかか?
まあ、そんなこといいか。
「ではでは、最初は、〈ルシア・バル〉VS〈ユース・トリネ〉の戦いを行います。最初はルシア・バルが攻撃、その後攻守を交代してください!」
いきなり開始か。それにしても攻撃からってことは相手の妨害をすればいいのか。
妨害と言っても、色々と手段はあるけど、どうしようかな。
「(どうする?)」
『(そうですねえ、相手は子供みたいですし、強力な風であの円内から追い出せばいいんじゃないでしょうか?)』
「(そんなことが出来るのか?子供を浮かせるなんてかなり、力を使わないか?)」
『(普通ならそうですね、でも私たちは普通ではありません。ですから大丈夫ですよ? それに私がいます!)』
はあ、やれやれだ。
確かに
ルシア曰く俺の魔法量は普通に比べてかなり多いと言ってたな。それを信じるなら、確かに可能かもしれない。
まあ、やってみるか。
「では、開始です!」
受付員のコールと同時に、まずは相手が動いた。
俺たちの周りで風が渦巻き、少しでも触れば引っ張られそうになる。それに、風と一緒に土が舞い踊り、視界が霞んで良く見えない。
「こんな方法もあるのか……これじゃあ風船が見えない……」
どうするかなあ……。
手段は色々とある。相手と同じ風をぶつけて相殺させるか、体中に風で防壁をはり、このまま風の中に飛び込んでいくとか。
……でもどれもこれも、危険だな。
確か、ルールでは相手を傷つけるのは禁止とか言ったけど、間接的ならいいみたいだし。
現に相手は、砂と一緒に、かなりの量の窒素とか二酸化炭素を混ぜてるみたいだ。
その証拠に、さっき手のひらから微弱の炎をつくってぶつけてみたら、不自然な消え方をした。これは酸素がないということだと俺は思う。
だから、真正面から向かっていくというのは、憧れるがこの場合は止めておいた方が得策であろう。
「ルシア、そろそろ、いいかな」
『ええ。完了しました!』
そして次の瞬間俺たちはその場から消えた。
「見えた、そこだあああ」
俺は上空に駆け上がり、そこから相手を見つけ、渾身の風砲をぶつける。すると、相手は完全に油断していたのか、何のすべもなく、その場で転び、コロコロと後ろに後退した。
「そこまで! ルール違反により、〈バル・ルシア〉の勝とする!」
よし、ひとまずこれで1勝目!
俺はルシアと勝利の喜びを分かち合うため、ハイタッチをした。
そう。そこまではよかった。
だけど、運が悪かったんだ。
『ひゃう! バ、バルル!』
なんだ、なんだか柔らかい感触だ。まるでマシュマロのような柔らかさだ。
と思ったとの同時に、右頬に激痛が走る。
「ぐはっぁ!」
なんだ、なにこれ?
いったい何が起きた。
俺はルシアとハイタッチをしたつもりだったんがっ!
そう思い、あわててルシアの方を見てみると、そこには胸元を両手で隠すようにクロスしている、ルシアの姿があった。頬や耳は赤くなっている。
『バル……覚悟はできているよね?』
「怖い、怖いよ、ルシア!」
『フフフフフフっ。バルはしょうがないなあ!』
怖い、こんなに恐怖を感じたのは久しぶりだ。
まるで、ナイフを喉元に押し付けられているような感覚だ。これがルシアなのっ?
「ごめんなさい!」
俺は、その場でジャンプすると同時に足を曲げ、頭を地面にたたきつけた。
THE、土下座だ。
昔から悪いことをした場合は、これをすれば大抵の相手は許してくれた。だが、今回ばかりは通じなかったようで、より一層、険しい顔をするルシアの姿がそこにはあった。
『バル!』
ん?
あれれ?なにかおかしいことをしたか?
俺は土下座して、許してくれってルシアの方を向いて謝罪しただけなんだが。
『見たでしょ! まったくヘンタイ!』
「え、なんのこと!」
そこで俺はさらに過ちをしてしまったようだ。
今日のルシアの服は、白いワンピースだった。
すなわち、しゃがむということは、そのあれが見えたと勘違いしているようで。
「…………」
『バル?』
「ごめんなさい」
『バル_それだけ?』
「なんでも願いを聞きます、叶えます」
『それなら、……』
「え? 良く聞こえないんだけど」
『……内緒です』
とこんな訳で、許してくれたのかも、わからないが、とりあえず、その日、ルシアは俺に協力をしてくれることは無かった。
当然、大会は能力が使えないということで辞退した。
よし、今度からは怒らせないように気を付けよう。
でもまあ、珍しいルシアも見れたしいいか。
その日、俺たちは、初めてケンカ?_をした。
明日からは、この町を出発して、次の町に向かうとするか。
目指すはラルトルス国だ!
当初は余裕で優勝できると思っていたのだが、世間はそんなに甘く無いようで、俺たちは苦戦していた。
風船を風の力で浮かせる。それも敵の妨害風を打ち消しながら能力を操るのは、考えていたよりも難しいことだった。
それに予想していたよりも、敵の魔力量や技力は高く、本気の俺ですら苦戦していた。
『正直な話、今のバルはそこまで特別な存在ではないですよ』
と、俺の心を見通すかのように、隣に居た、白髪の少女は呟いた。
(まったく、人を馬鹿にするような言い方だな)
……とは思ったものの、事実であるため何も言い返せない。
『バルは無力なんです! 私がいないとダメなんです!』
「なにもそこまで言わなくてもいいじゃないか……俺のライフはとっくに0だよ……」
ほんと、なんでここまでルシアは怒っているんだ。まったく見当もつかない。
いや、心当りはある。
先ほど起きた偶然てきなことが原因くらい、俺にもわかる。
でも、まさか、ここまで怒り狂うとは思っていなかった。
「そろそろ、協力してはいただけませんかねえ?」
『ムーリー』
「ええええ、そんなぁ。さっきは協力してくれるって言ったのに!」
『ふん! バルなんて知りません!』
ああ、ほんと、どうしてこうなった。
俺の記憶は、脳は過去の記憶を遡る。
そう。時は遡り、1時間前に戻っていく。
☆☆☆
受付の人に案内され、競技場に向かうと。
そこには、直径15mくらいの円が引かれており、中心にはさらに小さく、直径1m程の円があった。
「これから、皆様にはこの小さい円の中に入ってもらいます。そこから、風船を制御してください。あっ!言っときますが、この小さい円から一歩でも外に出たらその時点で負けですからね!」
またまた、追加ルールか。
さっきから、事あるごとに、ルールが増えていく。もしかしてこの人、全ルールを覚えていないのかな?
それとも、即興でルールを作っているとかか?
まあ、そんなこといいか。
「ではでは、最初は、〈ルシア・バル〉VS〈ユース・トリネ〉の戦いを行います。最初はルシア・バルが攻撃、その後攻守を交代してください!」
いきなり開始か。それにしても攻撃からってことは相手の妨害をすればいいのか。
妨害と言っても、色々と手段はあるけど、どうしようかな。
「(どうする?)」
『(そうですねえ、相手は子供みたいですし、強力な風であの円内から追い出せばいいんじゃないでしょうか?)』
「(そんなことが出来るのか?子供を浮かせるなんてかなり、力を使わないか?)」
『(普通ならそうですね、でも私たちは普通ではありません。ですから大丈夫ですよ? それに私がいます!)』
はあ、やれやれだ。
確かに
ルシア曰く俺の魔法量は普通に比べてかなり多いと言ってたな。それを信じるなら、確かに可能かもしれない。
まあ、やってみるか。
「では、開始です!」
受付員のコールと同時に、まずは相手が動いた。
俺たちの周りで風が渦巻き、少しでも触れば引っ張られそうになる。それに、風と一緒に土が舞い踊り、視界が霞んで良く見えない。
「こんな方法もあるのか……これじゃあ風船が見えない……」
どうするかなあ……。
手段は色々とある。相手と同じ風をぶつけて相殺させるか、体中に風で防壁をはり、このまま風の中に飛び込んでいくとか。
……でもどれもこれも、危険だな。
確か、ルールでは相手を傷つけるのは禁止とか言ったけど、間接的ならいいみたいだし。
現に相手は、砂と一緒に、かなりの量の窒素とか二酸化炭素を混ぜてるみたいだ。
その証拠に、さっき手のひらから微弱の炎をつくってぶつけてみたら、不自然な消え方をした。これは酸素がないということだと俺は思う。
だから、真正面から向かっていくというのは、憧れるがこの場合は止めておいた方が得策であろう。
「ルシア、そろそろ、いいかな」
『ええ。完了しました!』
そして次の瞬間俺たちはその場から消えた。
「見えた、そこだあああ」
俺は上空に駆け上がり、そこから相手を見つけ、渾身の風砲をぶつける。すると、相手は完全に油断していたのか、何のすべもなく、その場で転び、コロコロと後ろに後退した。
「そこまで! ルール違反により、〈バル・ルシア〉の勝とする!」
よし、ひとまずこれで1勝目!
俺はルシアと勝利の喜びを分かち合うため、ハイタッチをした。
そう。そこまではよかった。
だけど、運が悪かったんだ。
『ひゃう! バ、バルル!』
なんだ、なんだか柔らかい感触だ。まるでマシュマロのような柔らかさだ。
と思ったとの同時に、右頬に激痛が走る。
「ぐはっぁ!」
なんだ、なにこれ?
いったい何が起きた。
俺はルシアとハイタッチをしたつもりだったんがっ!
そう思い、あわててルシアの方を見てみると、そこには胸元を両手で隠すようにクロスしている、ルシアの姿があった。頬や耳は赤くなっている。
『バル……覚悟はできているよね?』
「怖い、怖いよ、ルシア!」
『フフフフフフっ。バルはしょうがないなあ!』
怖い、こんなに恐怖を感じたのは久しぶりだ。
まるで、ナイフを喉元に押し付けられているような感覚だ。これがルシアなのっ?
「ごめんなさい!」
俺は、その場でジャンプすると同時に足を曲げ、頭を地面にたたきつけた。
THE、土下座だ。
昔から悪いことをした場合は、これをすれば大抵の相手は許してくれた。だが、今回ばかりは通じなかったようで、より一層、険しい顔をするルシアの姿がそこにはあった。
『バル!』
ん?
あれれ?なにかおかしいことをしたか?
俺は土下座して、許してくれってルシアの方を向いて謝罪しただけなんだが。
『見たでしょ! まったくヘンタイ!』
「え、なんのこと!」
そこで俺はさらに過ちをしてしまったようだ。
今日のルシアの服は、白いワンピースだった。
すなわち、しゃがむということは、そのあれが見えたと勘違いしているようで。
「…………」
『バル?』
「ごめんなさい」
『バル_それだけ?』
「なんでも願いを聞きます、叶えます」
『それなら、……』
「え? 良く聞こえないんだけど」
『……内緒です』
とこんな訳で、許してくれたのかも、わからないが、とりあえず、その日、ルシアは俺に協力をしてくれることは無かった。
当然、大会は能力が使えないということで辞退した。
よし、今度からは怒らせないように気を付けよう。
でもまあ、珍しいルシアも見れたしいいか。
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