神獣殺しの精霊使い
第20話 遅い増援
飛行艇の墜落から一夜明けたその日。
俺たち以外の乗客全員は鬼によって殺された。殺されてしまった。
今まで、どこかでゲームの世界だと思っていた。だから鬼が目の前に現れてもそこまで怖くは感じなかったし、神獣に比べれば大したことないと自分の力を過信しすぎていた。
だから自分の力ではどうしようもないと気づいたとき俺は戦うのを放棄してしまった。いや、明らかな力の差があったのだから仕方が無いことだったのかもしれない。
だが、こうも悲惨な光景が目の前に広がるといかに自分が愚かだったかを実感した。
「なあ、ルシア。もしも俺が戦うのを諦めずに鬼に向かっていったら乗客の一部はどこか離れたところに逃げることは出来たのかな……」
そうだ。もしも諦めないで銃で撃ち続ければ全員とまではいかなくても半分くらいは助けれたのかもしれない。
「俺さ、自分の力を過信しすぎていたよ。 ルシアと出会ってから神獣を殺せたときから自分の強さに酔いしれていたのかもしれない。 実際は鬼にすら勝てないのにさ」
俺は弱い。
「これからさ、どうすればいいと思う? 俺なんかみたいな弱い奴がここから生きて帰れるとは思わないし、ルシアには悪いけど仲間を探すのは無理みたいだよ……ごめんな」
『……別に主君のせいではありません。 皆、こんな危険な所に落ちた時点で覚悟は出来ていたと思います。 それに王国騎士団のA級騎士ですら生きて帰ってこないですし』
「いや、でも……」
俺のせいだ。
俺が…
「ははっ、全く助けに来てやったというのに浮かない顔だね、少年!」
「え?」
誰だ?
いきなり、目の前に一人の男が現れた。
男は全身を黒い服で包み、右手には黒く渦巻く球体を持っていた。
「あなたは…僕の敵ですか?」
「会ってそうそうだね。 僕は君の敵ではないよ。 どちらかというと君の味方の味方かな?」
「味方の味方?」
『主君様、注意して! この男かなりの魔力量だよ』
「ふふ。 君は僕の魔力量を見れるのか…ということ無の精霊か。しばらくぶりだね」
「ルシア、会ったことがあるのか?」
『えーと、無いはずですが?』
ほんとに誰だ、この男は?
魔力量が凄いということは王国騎士団の上位陣の人なのか?
「ああ、事項紹介がまだでしたか。 私は闇無。一応、精霊神の一人です。今回は王国から頼まれて来たのだが、生存者は君たちだけか?」
闇無?
そして精霊神?
もしかして、闇の精霊神なのかな?
「はい。 他の人たちは…鬼に殺されました」
「そうかそうか、悪いね遅れてしまった」
闇無は悪びれもなくそう言った。
そして、右手の黒球を地面に落とした。
すると、真昼間だというのに床一面が黒くなっていく。
「あの、これは?」
「ああ、大丈夫大丈夫。 これは探索魔法さ! 敵が半径10キロ圏内に居るかどうかを確認しているのさ!」
検索魔法というと、ルシアを探す時に使った魔法具みたいなものなのか?
「ふふっ。 どうやら居ないみたいだね。 では早速、君が望む目的地まで連れて行ってあげよう! どこに行きたいんだい、少年?」
「えーと、どこでもいいんですか?」
「ああ。どこでもどこでも、いいよ」
この男の信憑性はゼロに近い。
もしかしたら、俺をだまして何かするつもりなのか?
でも、何の目的だ?
俺は金持ちでも、権力者でも無い。
ということは、頼まれたからやってやるって感じなのかな?
「(どうする? この人を信じてもいいのかな?)」
『(そうですねえ、他にここから出ていく手段が無いですし、ここは頼るべきではないでしょうか?)』
「(やっぱり、そうだよな?)」
「ふふっ。 考えはまとまったかい?」
男は不敵に笑い、俺たちを見てくる。その眼からは、悪意も何も感じ取れない。
「ええ。 では首都までお願いします」
「首都? ああラルトルス国のことかな?」
「そうです」
「うんうん。 わかったよ。ではそこの黒沼の中に飛び込んでくれ」
闇無が指さす先には、黒水の沼が出来ていた。
黒沼の中は真っ暗で何も見えない。
「えーと、これはなんでしょう?」
「ふむ。そうだな、これは瞬間移動用の入り口だよ。 これを潜り抜ければその先はラルトルス国さ」
「安全ですよね?」
「もちろん」
この世界に来てから不思議なことばかりだけど、これには本当に驚いた。
異世界だとは今までの経験からわかったがまさか瞬間移動が出来るとはな。
「早く行ったほうが良いと思うよ。 血の匂いに誘われて竜神が近づいてきているようだ」
「りゅうじん?」
「この山のボスですよ。 ささ早くしなさい」
竜神とかいるんだ。
辛うじて覚えているゲーム内の竜神は確か、精霊神ですら敵わないこの世界の最強物の一つだったはずだ。その強さから、プレイヤーからは恐れられ、誰一人近づく者が居なかったはずだ。
そんな最強が近づいてきているのか。
一度見てみたとは思うが今の俺ではとてもじゃないが勝てる気がしないし、ここはさっさと黒沼を潜り抜けるか。
「ありがとうございます。 闇無様!」
「その名では呼ぶな、なんだか馬鹿にされている感じだ」
「すみません、では精霊神様。 ありがとうございます」
『_ございます』
俺とルシアは黒沼の中に飛び込む。
すると、水に飛び込んだ時の感触を感じる。
そして、何かを潜り抜けたような感覚だ。
「あれ?」
気づくと俺たちは見知らぬところに居た。
辺りを見回すと、多くの人々が歩き、様々な屋台と家が立ち並んでいた。
「ここがラルトルス国…なのかな?」
『そうみたいですね。 ほら、あそこに看板がありますよ』
そうルシアに言われ見てみると。
《ラルトルス国限定お菓子》
と大きく書かれていた。
「どうやら、本当についたみたいだ」
俺とルシアは様々出来事を体験し、一時は死ぬとも思ったがなんとか、たどり着いたようだ。
「今日は遅いし、宿に泊まるか?」
『賛成です』
俺たち二人は、偶然近くにあった宿に入り、そして眠りについた。
明日は報奨金をもらわないとなと考えながら。
深い深い眠りに落ちた。
俺たち以外の乗客全員は鬼によって殺された。殺されてしまった。
今まで、どこかでゲームの世界だと思っていた。だから鬼が目の前に現れてもそこまで怖くは感じなかったし、神獣に比べれば大したことないと自分の力を過信しすぎていた。
だから自分の力ではどうしようもないと気づいたとき俺は戦うのを放棄してしまった。いや、明らかな力の差があったのだから仕方が無いことだったのかもしれない。
だが、こうも悲惨な光景が目の前に広がるといかに自分が愚かだったかを実感した。
「なあ、ルシア。もしも俺が戦うのを諦めずに鬼に向かっていったら乗客の一部はどこか離れたところに逃げることは出来たのかな……」
そうだ。もしも諦めないで銃で撃ち続ければ全員とまではいかなくても半分くらいは助けれたのかもしれない。
「俺さ、自分の力を過信しすぎていたよ。 ルシアと出会ってから神獣を殺せたときから自分の強さに酔いしれていたのかもしれない。 実際は鬼にすら勝てないのにさ」
俺は弱い。
「これからさ、どうすればいいと思う? 俺なんかみたいな弱い奴がここから生きて帰れるとは思わないし、ルシアには悪いけど仲間を探すのは無理みたいだよ……ごめんな」
『……別に主君のせいではありません。 皆、こんな危険な所に落ちた時点で覚悟は出来ていたと思います。 それに王国騎士団のA級騎士ですら生きて帰ってこないですし』
「いや、でも……」
俺のせいだ。
俺が…
「ははっ、全く助けに来てやったというのに浮かない顔だね、少年!」
「え?」
誰だ?
いきなり、目の前に一人の男が現れた。
男は全身を黒い服で包み、右手には黒く渦巻く球体を持っていた。
「あなたは…僕の敵ですか?」
「会ってそうそうだね。 僕は君の敵ではないよ。 どちらかというと君の味方の味方かな?」
「味方の味方?」
『主君様、注意して! この男かなりの魔力量だよ』
「ふふ。 君は僕の魔力量を見れるのか…ということ無の精霊か。しばらくぶりだね」
「ルシア、会ったことがあるのか?」
『えーと、無いはずですが?』
ほんとに誰だ、この男は?
魔力量が凄いということは王国騎士団の上位陣の人なのか?
「ああ、事項紹介がまだでしたか。 私は闇無。一応、精霊神の一人です。今回は王国から頼まれて来たのだが、生存者は君たちだけか?」
闇無?
そして精霊神?
もしかして、闇の精霊神なのかな?
「はい。 他の人たちは…鬼に殺されました」
「そうかそうか、悪いね遅れてしまった」
闇無は悪びれもなくそう言った。
そして、右手の黒球を地面に落とした。
すると、真昼間だというのに床一面が黒くなっていく。
「あの、これは?」
「ああ、大丈夫大丈夫。 これは探索魔法さ! 敵が半径10キロ圏内に居るかどうかを確認しているのさ!」
検索魔法というと、ルシアを探す時に使った魔法具みたいなものなのか?
「ふふっ。 どうやら居ないみたいだね。 では早速、君が望む目的地まで連れて行ってあげよう! どこに行きたいんだい、少年?」
「えーと、どこでもいいんですか?」
「ああ。どこでもどこでも、いいよ」
この男の信憑性はゼロに近い。
もしかしたら、俺をだまして何かするつもりなのか?
でも、何の目的だ?
俺は金持ちでも、権力者でも無い。
ということは、頼まれたからやってやるって感じなのかな?
「(どうする? この人を信じてもいいのかな?)」
『(そうですねえ、他にここから出ていく手段が無いですし、ここは頼るべきではないでしょうか?)』
「(やっぱり、そうだよな?)」
「ふふっ。 考えはまとまったかい?」
男は不敵に笑い、俺たちを見てくる。その眼からは、悪意も何も感じ取れない。
「ええ。 では首都までお願いします」
「首都? ああラルトルス国のことかな?」
「そうです」
「うんうん。 わかったよ。ではそこの黒沼の中に飛び込んでくれ」
闇無が指さす先には、黒水の沼が出来ていた。
黒沼の中は真っ暗で何も見えない。
「えーと、これはなんでしょう?」
「ふむ。そうだな、これは瞬間移動用の入り口だよ。 これを潜り抜ければその先はラルトルス国さ」
「安全ですよね?」
「もちろん」
この世界に来てから不思議なことばかりだけど、これには本当に驚いた。
異世界だとは今までの経験からわかったがまさか瞬間移動が出来るとはな。
「早く行ったほうが良いと思うよ。 血の匂いに誘われて竜神が近づいてきているようだ」
「りゅうじん?」
「この山のボスですよ。 ささ早くしなさい」
竜神とかいるんだ。
辛うじて覚えているゲーム内の竜神は確か、精霊神ですら敵わないこの世界の最強物の一つだったはずだ。その強さから、プレイヤーからは恐れられ、誰一人近づく者が居なかったはずだ。
そんな最強が近づいてきているのか。
一度見てみたとは思うが今の俺ではとてもじゃないが勝てる気がしないし、ここはさっさと黒沼を潜り抜けるか。
「ありがとうございます。 闇無様!」
「その名では呼ぶな、なんだか馬鹿にされている感じだ」
「すみません、では精霊神様。 ありがとうございます」
『_ございます』
俺とルシアは黒沼の中に飛び込む。
すると、水に飛び込んだ時の感触を感じる。
そして、何かを潜り抜けたような感覚だ。
「あれ?」
気づくと俺たちは見知らぬところに居た。
辺りを見回すと、多くの人々が歩き、様々な屋台と家が立ち並んでいた。
「ここがラルトルス国…なのかな?」
『そうみたいですね。 ほら、あそこに看板がありますよ』
そうルシアに言われ見てみると。
《ラルトルス国限定お菓子》
と大きく書かれていた。
「どうやら、本当についたみたいだ」
俺とルシアは様々出来事を体験し、一時は死ぬとも思ったがなんとか、たどり着いたようだ。
「今日は遅いし、宿に泊まるか?」
『賛成です』
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明日は報奨金をもらわないとなと考えながら。
深い深い眠りに落ちた。
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