神獣殺しの精霊使い

ミナト日記

第13話 報酬話と人化



「それでだ、すまないが首都ラルトルス国に恩賞を授かりに行ってくれないか?」


 無の精霊の力を借りて神獣をなんとか倒し、ひとまずは町に戻ろうかと考えてる時に、突然ヒートは訪ねてきた。




「恩賞ですか、それは神獣を殺した時にもらえる報奨金を受け取りに言ってきてくれないか、ということですか?」
「ああ、俺は仕事もあるしリアも居るから、この町から遠くに出掛けるわけにはいかねえのさ、その点バルなら大丈夫だろ?」
「まあ、そうですね。それに首都に行くのも旅の一つだと思いますから、僕は構わないですけど」
『私もいいですよー』
「それなら決まりだな。 明日の昼頃に首都に向かう飛行船があるからそれに乗って行ってくれるか」
「ええ、ですけどお金なんて持ってないですよ」
「それなら、心配するな俺がやる、というかどっちにしろ神獣を渡せば報奨金が貰えるんだから何も気にするな」


 確かに報奨金の額は桁違いだ。例え俺に移動費を払っても余裕で黒字になるだろう。それにルシアとの旅の約束もあるしいいか。


「それで、神獣を殺したという証明はどうすれば出来るんですか?」
「ん、それなら簡単だ。神獣の死体を魔法の袋に入れればいいだけだ」
「魔法の袋?」
「それも知らんのか、いいか、魔法の袋はだな、特殊な空間に持ち物をしまえる袋のことさ、右上を見たら銀色のアイコンは無いか?」
「右上ですか」


 早速俺は右上を見てみるとそこにはヒートの言う通り銀色のアイコンが佇んでいた。右手で触れてみると目の前に白いカーテンみたいなものが広がり、数字が1から100まで書かれている◇が浮かんでいた。


「数字はどのくらい表示された?」
「ええと100まで表示されました」
「100か、まあ一般的だな」
「そうなんですか、というよりもこんな便利な機能があったんですね」
「ああ、それじゃあ試しがてら神獣の死体に触れてみろ。右の方に銀色のアイコンが表示されると思うからそれにも触れてみろ」
「あ、はい」


 俺の銃弾によりぼろぼろの姿となった神獣は死んでもなお、まるで生きているかのごとく存在感があった。
 俺は出来るだけ神獣に近づかないようにしながら、銀色のアイコンに触れてみる。
 すると、移動しますかYES/NO と表示された。
 YESに触れてみると、次の瞬間神獣は目の前から消えてしまった。


「あれ、消えたんですけど」
「それが正常だ。もう一度持ち物を見てみろ、1番の所に神獣の絵が写るはずだ」


 ヒートの言う通りにもう一度持ち物を見てみると1番の場所に先ほどまで俺たちに挑んできた神獣の死体の絵が写っていた。ヒートは絵と言ったが、まるで写真並みの画質だ。


「その状態で持って行って、王国騎士団の幹部に見せれば承認してもらえるのさ、ああ一応言うが、下っ端には見せるなよ、手柄を横取りされるかもしれないからな」
「あの、どのくらいの地位の人に見せればいいんですか?」
「そうだなあ、まあ、精霊ランクB級以上ならだれでもいいはずだ、そのレベルの奴らなら横取りなんてしようと思わないからな。それにバレタときに信用が下がるのを一番避けたいはずだしな」
「わかりました。でもどうやって見分ければいいんですか、相手が嘘をついたらわからないですよ?」
「それなら、大丈夫だ。王国兵は首付近に階級を示すバッジが着いているからそれを見れ」
「わかりました」
『なんだかわからないけど、明日は旅に出るの?』
「うん、首都だからとても大きいよ」
『そこなら、私の仲間も居るかなあ』
「それは……」


 どうするべきか、個人的にはそんあ首都の近くなら刈りつくされているから居ないと思うが、正直に答えてやる気が失せちゃってもなあ。


「いると思うぞ、首都と言っても周りには自然もあるしな」
『わーい』


 はあ、すぐ答えるべきだったか。


「それでだ、君は具幻化はしないのか?」
「具幻化? それってなんですか?」
「簡単に言えば精霊は人間の姿になることが出来るのだ、俺の精霊も化けれるしな」
『うーん、主君様は望みますか?』
「急に聞かれても、でもいつまでも実体のないルシアと話すのは避けたいかな。周りから見たら一人ごとを言っているように見えるかもしれないし」
『わかりましたよー、では具幻化しまーす』


 そうルシアが言った途端、周りに白い渦みたいなものが発生した。渦は最初は散らばっていたが徐々に固まり始めて、そして一人の人間の姿となった。


「これが具幻化ですか、思ったよりも凄いですね」
『もうちょっとかなあ』


 そう言うと体だけではなく、顔つきも徐々にのっぺらぼうから変わり始めた。
 そして数秒後、俺の目の前には俺と同じくらいの年になったルシア(人化)が立っていた。服はどうなるのかと思ったがそれも、一緒に作ったようで、白色のワンピースを着た一人の少女が目の前に立ち、そして綺麗に一礼した。


「これがルシア……本当に人化出来るんですね、それにとても(綺麗で可愛くて俺の理想の女の子で)いいですね」
「ああ、思ったより凄いな、ここまで化けれるのはそんなに居ないぞ。居るとしたら水の精霊神くらいだな」
『えっへん! これでも近くを通り過ぎている女の子の姿を見たり、昔絶世の美女とも呼ばれたシーラ姫を参考にしているので自信ありなのですよー』
「なるほどな、どこかで見たと思ったらシーラ姫をモチーフにしたのか」
「シーラ姫?」
「シーラ姫はだな、バルがこれから向かうラルトルス国の第3王女のことだ。シーラ姫は絶世の美女と評判が高くだな、まあ人化したルシアとそんなにかわらないな」
「へえ、そうなんですか」


 俺はもう一度、ルシアの姿を見てみる。
 髪の色は綺麗な金色であり、目の色も少し蒼い。そして全身が真っ白であり、雪のようだ。顔立ちも整っており、道行くすべての人が振り向きそうな位だ。


「確かに綺麗ですね、でもこれじゃあ、シーラ姫と勘違いされてしまわないでしょうか?」
「ああ、ありえそうだ。ルシア、もう少し変化できないか?」
『もう少し? うーん、それならこれでどうかなあ』


 今度も顔立ちは似ているが髪の色が真っ白になり目の色も黒くなった。それだけしか変わらなかったが、それでも十分に違うようになった。


「これなら大丈夫ですね」
「ああ、これならいいだろう」
『この姿ね、覚えたよー』


 これで独り言が多い奇妙な少年ではないだろう、それに飛行艇の中での話し相手も出来たしいいことだらけだ。


「じゃあ、ひとまず俺の家に帰るか」
「ええ、すみませんが今晩も泊めてもらいます」
「もらいまーす」


 俺たちは疲れた足をゆっくりとだが動かし家へとの道を歩いていく。
 ひとまずはこれで俺も精霊使いか。



「神獣殺しの精霊使い」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く