Jack of all trades ~主人公ポジションを奪います~

フランク 相川

エピローグ

高校一年の春。
演劇部に入ってみた。
ここなら本当の自分をさらけ出せるのではないかと思った。

昔、俺は虐めにあっていて、人を信用できなくなっていた。
友情なんてものはただの商売道具のように思っていた。

けどそんな自分にも嫌気がさしてきた。
だから、人と交流出来て、自分に自信が持てそうなこの演劇部にあえて入ってみた。

「君、いいね。もっと練習したら、主役にでも指名できるかもな」

ただ純粋にうれしかった。楽しかった。
初めて、自分に自信が持てるようになった。

そんな日々の中、俺はある男の子に出会った。
校舎裏で虐めにあっていた。
虐めっこを追い払い話を聞いた。

「僕、何もできないんだ。ただのゴミなんだ」

この子は前の僕にそっくりだった。
俺はこの子を助けたいと思った。
俺は自分は矢田部だと言った。

「僕は、は、悠人」

俺に初めての親友が出来た。
素晴らしく幸せな毎日だった。

悠人を守って、鍛えて、演劇の練習をし、趣味を楽しんでいた。
昔の頃とは違う。

ある日、俺は先生に呼ばれた。

「実は転校生が来るんだが、その子を駅から学校までの案内を頼みたい」
「へぇ!どんな子なんですか?」

どうやら転校生が来るらしい。どんな子だろう。仲良くなれたらいいなと思っていた。

「女の子だそうだ。ちょっと無口な子らしい」

女の子、俺はその言葉に驚いた。
俺は元々女の子に虐められていて、女の子にかなりトラウマを抱えている。
演劇部だと他にいろいろな人がいるため、まだ大丈夫だが、二人っきりになるなんて死ねといっているようなものだ。

「……なんで俺なんですか?」
「矢田部君の過去は知っている。けど私は君を信じているんだ。君は変わった。今の君ならできるさ」

先生の言葉を信じ俺は脚を前に出した。途中何度か足をすぼめたがそれでもあきらめず、前に進んだ。

駅に着き、集合場所の銅像の前についた。
まだ来ていないようだ。

震える手を抑えながら待っていた。
すると後ろの方でカサカサと音が聞こえた。

後ろを見た瞬間、周りの音が聞こえなくなった。
綺麗な眼で下を見つめる彼女に俺の視線は固定された。

「綺麗な目だなぁ……」
「へ?」
「あ、ご、ごめんなさい……」

よく見るとうちの制服だった。
もしかしてこの子が例の転校生だろうか。

「あの、お迎えの人ですか?」
「は、はい。お迎えの人です!」

綺麗な声だった。
なぜだろう、俺にはすごく綺麗に聞こえたのだった。
だが悲しいことに目を合わせてくれなかった。
ん?

「震えていますけど、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫です」

俺たちはベンチに座り休憩することにした。

「あ、あの、すみません。わ、私、男性が苦手でして」

聞くところによると、どうやら彼女は昔男性に襲われそうになったらしい。
それから男性が怖くなったらしい。

「俺と一緒ですね!……その、俺も女性が苦手だったんです」
「え?」

その瞬間彼女の顔がくっきり見えた。

「……やっとこっち見てくれた」

綺麗な顔だった。
見た目は茶髪でショートヘア、背は少し低い感じだ。

「でも、女性を見て怖くならなかったのはあなたが初めてです」
「え、あの……変ですか?」
「とんでもない!綺麗ですよ」

俺は矢田部だといった。
矢田部谷鴉、それが俺の名前だ。

「ふふ、鳥みたいな名前ですね。私は恵奈賀、島崎恵奈賀といいます」
「そっちだって小鳥の名前じゃないですか!」

白い肌に似合っている名前だと俺は思った。

「では、お互い鳥の名前同士、仲良くしてくれませんか?」
「喜んで」





シーズン1終了です
まだまだ終わりませんので。
ぜひ楽しんでいってください。


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