Jack of all trades ~主人公ポジションを奪います~

フランク 相川

第二十六話 婚約

アルバに乗って飛ぶこと2時間、ついに浮島が見えてきた。
本当に浮かんでいるのだな。
しばらく飛んでいると兵隊さんらしき人物が飛んできた。
その人物は鎧を身にまとい、蝙蝠のような翼を広げていた。
手にはどうやら銃のようなものが握られている。
ボルトアクションライフルのようだ。
その姿はまさにスチームパンクだ。
どうやらディアーボリ国はスチームパンクな国のようだ。
「アルバ様ですね、ニグリオス様から話は聞いております。私についてきてください」
意外とすんなり通れるのだな。
彼?についていくとそこには歯車や鉄パイプなどが蒸気を出しながら、動いていた。
街には飛行船やら蒸気機関車などが自らの仕事をこなしている。
二酸化炭素がやばそうだ。
ドワーフとどっちがすごいのかな。
そんなことを考えていると、巨大な時計塔のような所についた。
「ここがドラコレックス一家の家です」
「こ、ここが、あ、あの人の、い、家……」
アルバ、めちゃくちゃ緊張してるけど大丈夫か?
(大丈夫だよ。昨日と一緒だよ)
(そ、そうですよね。私、がんばります)
中に入ると昨日と同じく、赤の絨毯にランプがあったりとまぁ、普通だった。
そしていよいよニグリオスさんの待つ部屋へと招待された。
「いよいよですね」
「あぁ、そうだな」
そうやって入ろうとしたとき
先ほどの兵隊さんが俺に声をかけた。
「あの、あなた人間ですよね。でしたら行かない方がいいと思うのですが……」
「いえ、流石にここまで来た以上何もしないのは良くないと思いますので」
「あ、あぁ、そ、そうですか。では」
ガチャリと開いた扉の向こうにはきちんと正装を着ているにニグリオスさんがいた。
おぉ、かっこいい。
「アルバ……」
「あなた♡」
うわー、抱き合って顔スリスリしてるよ。
なんか微笑ましいな。
でもなんかムカついてくるな。
「あら、その娘がアルバちゃん?可愛い娘ね。私ニグリオスの母である、プルプラと申します」
「あぁ、お袋」
「アルバですよろしくお願いします」
おっ、お母さん登場か。
髪の毛、紫色って。
にしても俺の周りは美人ばっかりだなぁ。
ニグリオスさんのお母さんはボッキュンポンな体だし、綺麗な顔立ちしているし。
それでいておしとやかな感じだ。
はぁ、なんで俺のAPP外見は高くないのだろうか。
きっとお父さんの方もイケメンなのだろう。
「なぁ、親父も出て来いよ」
「う、うむ。わかった」
まぁ、特に気にすることはないだろう。
「アルバ、大丈夫だ。緊張するな」
「はい」
部屋の奥から大きな緑色をした手が出てきた。
「ニグリオスの父です。息子がお世話になっているようで」
「いえ、こちらこそよろしくお願いします。ご主人様!挨拶して……ご主人様?」
その姿はタコに似た頭部、頭足類のような触腕を無数に生やした顔、巨大な鉤爪のある手足、水かきを備えた二足歩行の姿、ぬらぬらした鱗かゴム状の瘤に覆われた数メートルもある大きな身体、背にはドラゴンのようなコウモリに似た細い翼を持った姿だった。
「あ……あ、あ」
「やはりこうなったか」
勘のいい人ならすぐわかるだろう。
ただ今俺のSAN値が大変なことになっている。
まさにSAN値ピンチである。
「ご主人様、大丈夫ですか?」
旧支配者というものは実際に見ると本当に怖いものだなっとこの時の俺は思っていた。
「い、いあ!いあ!くとぅるふ!ふたぐん!いや、マジで殺さないでください。ほんとに、お、お願いします。旧支配者さまぁ」
「あぁ、やはりこうなったか」
「WHAT A Fーー」

「落ち着きましたか」
「すみません、まさかこうなるとは」
「いやいいんだ。皆、我を見るとああなるからな」
まさかクトゥルフ様が出てくるとは。
正気度消失で不定の狂気になるところだった。
「ご主人様、この方を知っているのですか?」
「知っているも何も、俺らの世界の神話に出てくる神様の一人なんだ」
正確に言うとラヴクラフトという作家が作ったすんばらしい小説だ。
実は意外と接しやすい人でかなり仲良くなった。
自虐ネタが多く、何でもずっと海底で冬眠状態だったとか、兄弟と仲が悪いとか。
そんな楽しい時間もラノベの世界では唐突に終わるものである。
「クトゥルフ様!またもやあいつらが!」
「なんてこったパンナコッタ!こんな時に」
ほんとだよ、今めちゃくちゃ幸せな時間なのに。
そいつらブチ◯す!
「すまないが我は仕事があるので。今日はもう遅いから泊まっていきなさい」
「おぅ、わかった」
「あ、ありがとうございました」
そう言うとクトゥルフ様は彼らにカギを渡した。
(クトゥルフ様、今日はあなたと奥さんと私で夜出かけませんか?)
(そうだな、きっと夜は騒がしくなるだろうしな)


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