シェアハウス【完】

邪神 白猫

18



 自宅へと帰った私は、携帯を取り出すと未だに"未読"と表示されている画面を見つめた。

 香澄……
 どこにいるの……?

 手に持った携帯をキュッと握って廊下に視線を移すと、何かキラリと光る物が目に入った。

 ……何だろう?
 そう思った私は、ゆっくりと廊下を歩くと近付いて行った。
 目の前まで辿り着くと、その場でしゃがんで覗き込んでみる。

 あれ……?これって……!
 勢いよく拾い上げると、目の高さまで持ち上げてじっくりと見る。

 やっぱり……!!

 私の手にあるのは、ラインストーンがキラキラと輝く、お花をモチーフにしたピアスの飾り。
 私はこれを見た事があった。
 そうーー香澄がよく付けていたのだ。

 ユラユラと香澄の耳で揺れているピアスを思い出す。

 私は顔を上げると、膝を着いたまま目の前の扉を見つめた。
 今私の目の前にあるのは、開けてはいけないと静香さんに言われた部屋の扉。

 あの日、静香さんは誰も来ていないと言った。
 じゃあ、何故コレがここに落ちているの……?
 もしかして、香澄はここに来たのでは……?

 そんな事を考えながら扉を見つめていると、背後に気配を感じて振り返ったーー。

 私を見下ろすようにして立っている静香さん。
 静香さんは腰を屈めて私の顔を覗き込むとニコリと笑った。

「ーー真紀ちゃん、何してるの?」

 ーー思わずゾクッとした。
 静香さんの表情は笑顔だけれど……
 その目は笑っていないように見えたから。

「あっ、あの……コレが落ちていて……」

 ビクビクと顔を俯かせながら掌を差し出すと、頭上で静香さんがクスリと笑った。
 それに反応して顔を上げてみると、いつもと変わらない優しそうな笑顔の静香さんと目が合う。

「ありがとう、探してたの」

 そう言うと私の掌から飾りを取り上げる静香さん。

「えっ……?」
「お気に入りだったのに、片方無くしちゃって探してたのよ。見つけてくれてありがとね」

 そう言ってニッコリと微笑む静香さん。

 静香さんの……?
 ……いや、あれは間違いなく香澄が付けていたピアスだ。
 可愛らしいお花のモチーフのその飾りは、静香さんの好みとも違う気がする。

 たぶん……いや、きっと静香さんはこの家で香澄に会ったのだ。

 目の前でニッコリと微笑む静香さんを見つめながら、私は汗ばんだ掌をギュッと握りしめたーー。



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