シェアハウス【完】

邪神 白猫

17



 翌日、バイトへ行ってみると香澄は無断欠勤をしていた。
 今まで一度だって無断欠勤などした事のない香澄に、やっぱり何かあったのではと心配になる。

 帰り仕度が終わって裏口から出ると、通りに出た所で突然見知らぬ男性に呼び止められた。

「ーーあのっ! 真紀ちゃ……樋口真紀さんですよね?」
「……はい」

 何だか見覚えのある男性。
 どこで見たのだろう……?

「あっ……俺、香澄と同棲している北川雅也です」

 そう言って名刺を差し出す北川さん。

 どうりで見た事があると思った。
 香澄のSNSには、北川さんとのツーショット写真がいくつか載せられている。
 実際に会うのは初めてなので、直ぐにはわからなかった。

 香澄の彼氏さんが、一体私に何の用なのだろう?
 まさか、やっぱり香澄は事故に遭って入院しているとか……?

 渡された名刺から視線を上げると、北川さんが話し出すのを待った。

「あの……香澄知りませんか?」
「えっ……?」

 私の想像とは全く違う言葉に、思わず声が裏返ってしまった。

 そんなの私が聞きたいくらいだ。
 香澄知りませんかって……家にも帰っていないのだろうか?

「あの……香澄、家に帰っていないんですか?四日前の夜から私連絡がつかなくて……」
「四日前……。その日からです、香澄が家に帰ってないの」
「えっ……」

 心配そうな顔をして俯く北川さん。

「あっ、あの……その日の夕方に香澄と会ったんです。バイトが入れ違いで……私遅番だったんですけど。それで、バイトが終わって……夜中の一時過ぎに電話したら繋がらなくて……」

 私の声に顔を上げた北川さんは、悲しそうに微笑むと口を開いた。

「夕方には見たんですね、ありがとうございます。他に何かわかったらそこに連絡ください」

 そう言って私の手元を指差す北川さん。
 名刺を見ると、携帯の番号とアドレスが記載されてある。

「……はい、わかりました」
「よろしくお願いします。ーーそれじゃ」

 深々と頭を下げた北川さんは、そう言うと私に背を向けて去って行った。


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