シェアハウス【完】
14
「……あっ! ねぇ、真紀の住んでる家ってどこにあるの? 私ちょっと話してみるよ、静香さんと。話せば安全かどうかわかるし」
「あ……家は教えられないの」
「え? ……何で?」
「静香さんがね、持ち家だから自分の知らない人に個人情報話して欲しくないって」
「……わかった。じゃあ探すよ。真紀から聞かなきゃいいんでしょ? なら自力で探す」
「えっ!?」
香澄の突拍子もない発言に驚く。
「ここから徒歩十分だって前に言ってたよね? 真紀の帰る方向は知ってるし大丈夫。……うん、探せるよ」
自信満々に話す香澄に、思わず唖然とする。
「家の特徴だって前に真紀に聞いたし。絶対に見つける自信あるよ。私が勝手に見つけちゃったなら問題ないでしょ? 」
「そこまでしなくても……大丈夫だよ」
「何言ってんの?! 絶対変だよ、その静香さんて人! 私が会って見極めてやるんだから!」
胸の前で腕組みをした香澄は、そう言って息巻いた。
「家賃三万だってさ、もしかしたら女の子目当てかもしれないよ?! 相手が女の人だからって安心しちゃいけなかったんだ……あーっもう! 私のバカ!!」
ロッカーから取り出した荷物を雑に纏めた香澄は、「じゃあ、早速今日探してくるから! バイト頑張ってね」と足早に去って行く。
「あっ……!」
止める間もなく去って行ってしまった香澄。
パタンと閉じる扉を眺めながら、大丈夫だろうか……?と心配になる。
追いかけたいのは山々だが、早番の香澄に対して今日の私は遅番のシフト。
先程バイトが終わった香澄と入れ違いで、私は今からバイトなのだ。
あと八時間……。
「とりあえずバイトが終わったら連絡してみよう……」
自分のロッカーに鍵を掛けると、私はポツリと小さく呟いたーー。
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