シェアハウス【完】

邪神 白猫

10



「凄く硬くなってるわね……可哀想に」

 パンパンになった私の脚を揉みほぐしながら、静香さんは悲しそうな顔をする。

『今日は疲れたでしょ。私がマッサージしてあげる』

 先程そう言った静香さんに、半ば強引にソファへ座らせられた私は、今静香さんからマッサージを受けている。
 元々静香さんは少し過保護なところがある気がするが、流石にここまでしてもらうのは気が引ける。

「あの、静香さん。本当に大丈夫ですから……」
「ダメよ。浮腫みは放っておくとどんどん硬くなるんだから」

 制する為に伸ばした私の手を優しく退けると、静香さんは私をソファの上に優しく倒すとうつ伏せにした。

「浮腫みはその日の内に取っておかないとね」

 そう言って私の脚を揉みほぐす静香さん。

 ここまでしてもらって本当にいいのだろうか?
 とは言っても、先程から静香さんがしてくれるマッサージはとても気持ちがいい。
 バイトの疲れもあるせいか、何だか急激に睡魔が襲ってきた……。

 ーーー!?

 ヌルッとした生暖かい感触に、手放しかけていた意識が一気に覚醒する。

 え……?
 今、舐められ……た?

 驚きに固まったままでいると、その後何事もなく五分程でマッサージは終わった。

 ゆっくりと私から離れる静香さん。
 その気配を感じ、私はうつ伏せから起き上がるとソファへ座った。

「どう? 少しは軽くなったかしら」

 私の顔を覗き込んで優しく微笑む静香さん。

「あ……はい」
「良かった」

 フフッと微笑む静香さんを見て、さっきのは何だったのかと考える。

「真紀ちゃん、どうかした?」

 不思議そうな顔をして私を見つめる静香さん。
 そんな静香さんを見ると、さっきのは私の勘違いだったのだと思えた。

 あの時私は突然の睡魔に襲われ、半分寝かけていた。
 きっと寝ぼけていたのだろう。
 そう思って自分に言い聞かせる。

「いえ、ありがとうございました。とても気持ち良かったです」
「湯船に浸かると疲れも取れるわよ。ゆっくり入ってらっしゃい」

 私を見てニコリと微笑んだ静香さんは、「私は先に休ませてもらうわね。おやすみ、真紀ちゃん」と言ってリビングを後にしたーー。



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