シェアハウス【完】
5
「ーーで、新しい家はどうなの?」
携帯を弄りながら、私をチラリと見た香澄が口を開いた。
『それ絶対怪しいよ、やめときなよ』
ネットで見つけたシェアハウス募集サイトを見せた私に、香澄は以前そう言って反対をしていた。
シフトが被らなかった事もあり、それから香澄と会うのは約二週間ぶり。
その間に勝手に入居を決めて引っ越しまでしてしまった私に、『信じらんない。私止めたのに』と怒りながらも、今こうして私が着替えるのを更衣室で待っていてくれる。
本当に心配してくれているんだな、と思いながら、私は制服のボタンを留めて口を開いた。
「……うん。静香さんて言うんだけどね、凄く綺麗で優しいよ」
「本当に家賃三万なんだ?」
「そうなの。未だに信じられないけど……凄く助かる」
大学に通いながら週四日のアルバイトに出ているだけの私には、家賃三万は本当に有り難かった。
田舎から上京してきて三年目。
東京の家賃は想像以上に高く、とてもじゃないけど一人暮らしなどできない。
大学の寮に戻ろうともしたけど、生憎全て埋まっていて入居できなかった。
同棲なんてするんじゃなかった……。
そう思っていた時にたまたま見つけたあの募集サイト。
即決して良かったと思う。
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