井戸の中【完】
11
「ーー公平、ちょっと今いいか? 」
告別式も無事に終わり、部屋の片隅で食事をとっていた俺は、その声に視線を上げると声の主を見た。
するとそこには、昔の面影を残しつつも立派な大人へと成長した司と隆史がいた。
「あぁ……」
面倒臭さそうに答えた俺の態度を特に気にするでもなく、二人は俺の前へ座ると口を開いた。
「「ごめんっ……」」
ーーー!?
そう言って頭を下げる二人を見て、予想もしていなかった展開に面食らう。
あの二人が……俺に謝るっていうのか?
目の前で頭を下げる二人を眺め、一度小さく溜息を吐くと口を開く。
「……いいよ、もう」
何だか拍子抜けだ。
そう思った俺は、それだけ言うと席を立った。
気分転換にと外で一服をすると、再び部屋へ戻ろうと玄関扉に手をかける。
「ーー公平には近付くなよ」
ーーー!
中から聞こえる話し声に、扉から手を離した俺は身を潜めた。
俺の事……?
何やら、俺の話しで揉めている隆史と河原さん。
俺はその会話に耳を傾けると息を殺した。
「ーーあいつは死んだ親父にソックリだよ! 」
河原さんのすすり泣く声が聞こえた後、パタパタと走り去る音を残して静かになった扉の向こう側。
俺はゆっくりと扉を開くと中に向かって話し掛けた。
「ーー隆史。二人きりで話し、いいかな? ……裏庭に行こう」
突然現れた俺に驚いた顔を見せる隆史。
そんな隆史を見て、俺はニヤリと不気味に微笑んだーー。
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