僕達の恋愛事情は、それは素敵で悲劇でした【完】
1
僕には、もうすぐ付き合って一年目を迎える彼女がいる。
そんな彼女には最近何か悩みがあるようだったが、「何かあった? 」と聞けば、「……ううん。何もないよ」と微笑むだけだったので、僕の勘違いかとそれ以降は特に気にすることもなかった。
それから数日経ったある日のこと。
大学のキャンパス内にある食堂で昼食をとっていると、目の前に座った由衣が少しだけ曇った表情をさせると躊躇いがちに口を開いた。
「あの、ね……。私っ……最近、誰かにつけられている気がするの」
「……えっ? 」
少し間の抜けた声を発した僕は、食べかけの菓子パンを握った右手をゆっくりと下ろすと、少し水気を含んだ瞳でこちらを見つめる由衣を見つめ返した。
「えっ……。それって、ストーカーってこと? 」
「うん。……たぶん」
それだけ答えると、暗い表情をさせた由衣は伏せた瞼を小さく震えさせた。きっととても不安で怖いのだろう。そんな感情が表情から見て取れる。
「大丈夫だよ、由衣。僕がついてるから」
安心させるようにしてそっと小さな手を包み込めば、由衣は「ありがとう」と言って小さく微笑んだ。
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