不幸のスカート、幸福のスカート

石川中正

幸福のスカート

2009年の夏のある日。高校1年生の秋元由理恵(あきもとゆりえ)は、授業を終え帰宅しようとしていた。

駐輪場の前で、一人で喋っている男子生徒がいるのが見えた。彼の名は松原仁。友人がいる様子もなく、部活もしていない。何だか「さえない男子」という印象だけの地味なクラスメイトだ。

(どうしたんだろう、ひとりで喋って…気持ち悪い)

由理恵は仁から視線を外し、再び前を向いた。どうも仁はこちらを向いているようである。すると突然、強い風が吹いた。

(あっ!スカートが…)

由理恵のスカートは大きくめくり上げられ、ピンクのパンツが露になった。必死にスカートを抑えたが、一度見えてしまったものはもう取り返せない。

(松原くんに見られたかな…最悪!)

スカートの中を見られ、意気消沈している由理恵。
気を紛らわせるために近くの本屋へ向かった。
そこにはクレーンゲームがあり、時々由理恵も友人と一緒にプレイしている。

「あ、新しいゲーム入ってるじゃん。やってみよう」

由理恵は最近発売されたばかりの大人気ゲームを狙ってゲームを開始した。

(ウィーン)

「あ!掴んだ!」

クレーンは由理恵の欲しかったゲームを1度で捉え、あっという間に商品出口まで運んだ。
ゲームの定価は29800円。クレーンゲームは1回100円。なんと29700円引きである。

(今日はなんだか運がいいなあ…何かあったかなあ?まあいいや、帰って遊ぼう♪)







翌日。由理恵は友人の紘子(ひろこ)と自転車を漕いで学校へ向かっていた。

「昨日さー、クレーンゲームで新作のゲーム取っちゃったの。一回でよ。29700円儲かった。」

「えーすごいじゃん!すごく運がいいね。厄がまとめて襲ってこなければいいけど」

「大丈夫よ、紘子。本当にたまたまなんだから。今日からまたいつも通りの日々に戻るのよ」

学校に到着し、由理恵は駐輪場で仁を見かけた。

(昨日私のパンツを見たのはこいつね…今日は気を付けないと。絶対見せないんだから)

由理恵は慎重に自転車から降りようとした。

(でも、待てよ、松原くんにパンチラ見られたからクレーンで景品取れたのかな…いや、それは考えすぎか)

由理恵は昨日起こった幸運を思い浮かべながら、あえて「さえない男子」の近くに自転車を停めた。

(見せて減るもんじゃないし、恥ずかしさを我慢すれば…)

由理恵はわざとスカートの裾をサドルに引っかかるようにして自転車から降りた。当然、仁は由理恵の黒のセクシーなパンツをガン見している。

(わぁ、何よめちゃくちゃいやらしい目で見てるじゃない…気持ち悪い!もう見せてあげない!)

由理恵はすぐにお尻を両手で押さえ、パンツを隠した。起こるかどうかも分からない幸運のために大事な下着を好きでもない男子に見せるなんて、どう考えてもやりすぎだ。

(もう絶対見せないんだから。本当男子って気持ち悪い!)

「どうしたの由理恵?なんか怒ってる?」

紘子は由理恵の険しい顔に気付き声をかけた。

「松原っているじゃない?あいつにパンツ見られたっぱいの」

「あー、黒だったわよね」

「えー!紘子も見たの?!恥ずかしい…」

「いいじゃん女同士なんだから。」





教室に到着した由理恵は、生ぬるい視線を感じた。仁はまだこちらを見続けている。

(こっち見ないで!ゾワゾワする…)

1時間目の授業は化学である。クラスのメンバーは理科室に移動し、実験が始まった。由理恵と仁は同じテーブルになってしまい、またまたこちらに熱い視線を送っている。自然は明らかに下半身だ。お尻や太ももを見られている。

(本当ヤダ。爆発したらいいのに。)

(ドッカーーーン)

由理恵が願った瞬間、仁が点火しようとしていたアルコールランプが爆発を起こした。

(え、うそ、何?ちょっと爆発しろって思っただけなのに)

偶然にしてはできすぎている。由理恵は少し怖くなった。





由理恵が帰宅すると、母が玄関へ走ってきた。

「由理恵!た、た、た!」

「ママ、どうしたの?」

「宝くじ!当たったの!」

「ええ!いくら?!」

「500万!」

(もしかして、これも松原くんのおかげ?松村くんが私のパンツ見てくれたから幸運が起きてるの?)

由理恵は2日連続の幸運が偶然とは思えなかった。明日もパンチラを見せたとすると、またいいことが起こるのだろうか。
しかし、今日の仁の変態じみた目を見ると、もう二度と見せるものかと怒りが湧いてきた。







翌朝。由理恵はまた紘子と共に登校した。

「昨日さ、ママが宝くじ当てたの。500万。」

「えー!500万!?すごい!!幸運が来てるわね。」

「それがね、昨日から松原くんにパンツ見られたらその日のうちにいいことが起こってるの。でもあんなさえない男子にパンツ見せるなんてもうこりごりよ。私のパンツはいつか現れる超絶イケメンの彼氏にだけ見せるの!」

「えー、私も見たいよ!」

「だーめ!あんた中学の時所構わず私のスカートめくりまくってたでしょ。ダメ。」





由理恵と紘子は学校の階段を上っていた。人も少なく、特に何も気にせず上っていたが、少し歩いて黒い影の存在に気付いた。階段の下に仁がいたのだ。振り返ると明らかにパンツを見られている。目線が完全にこちらを向いていた。

「ちょっと!何見てんのよ!変態!」

由理恵は大声で叫び、必死でパンツが見えないようにスカートを押さえた。

(本当最低!松原くんなんていなくなればいいのに)







帰宅後、ゆりえの携帯電話がなった。紘子からだ。

「同じクラスの松原くん、車に轢かれて亡くなったらしいよ…」

「え…」

(幸運って…そういうこと!?)


幸福のスカート 完

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