不幸のスカート、幸福のスカート

石川中正

不幸のスカート

2009年のある夏の日。この春に高校に入学した松原仁(まつばら ひとし)は授業を終え、1人で帰路についた。仁には友人は1人もおらず、部活もしていない。これといった趣味もなく、顔もイマイチでもちろん彼女はいない。

「あーあ、なんでこんな人生になっちまったんだろうな」

そう小さな声でつぶやくと、仁の目の前に突然、180cmくらいの細身の男が現れた。

「マツバラヒトシさんですか?」

「は、はい、そうです…」

「私、地獄から参りました獄卒のものです。3ヶ月前にあなたのお祖父様がこちらにいらっしゃいましたが、『孫を幸せにしてやってくれ…』とご希望ですので、ぜひあなたにお会いしたいと思い、現世にやってまいりました」

「えー、話が全く分からないんですけど、まず獄卒って何ですか?」

「拷問チームの一員です。亡くなって地獄に落ちた人を何千年もかけていじめるのです。」

「ってことはじいちゃん地獄に落ちたの?車に轢かれて死んだんだから、じいちゃんは悪くないだろ?」

「いえ、明日行われる裁判で天国行きになるでしょう。同姓同名の大罪人がおりましてねえ、彼の罪をあなたのお祖父様のものと勘違いして途中まで裁判が行われてしまったのです。大変申し訳ないことをしたので、『何か叶えてほしい願いはありますか』とお尋ねしましたら、『仁に幸あれ』とおっしゃったので」

「そうなんだ、死んだじいちゃんの最後のプレゼントってわけだな。」

「で、あなたの願いは?」

「あ、あの…パンツが見たいんです。大好きな秋元由理恵ちゃんの。本当に大好きで、まだ話したことはないんですけど。唯一の生きがいなんです。せめて、スカートの中だけでも…。って駄目ですよね、こんな願い。じいちゃんが悲しむな」

「いえ、かまいません。地獄も現世も、男というのはそういうものです。その願い、叶えましょう。夏休みが始まるまで、毎日見えるようにいたします。ただ…」

「やったあ!秋元さんのスカートの中だあああ!」

仁は獄卒の言うことを最後まで聞かず、喜んで飛び跳ねた。

「あ、秋元さんだ…後ろ姿も可愛いなあ…」

前方にいるのは仁が恋する美女、秋元由理恵だ。身長153センチの小柄で、顔は仁のドストライク。入学式で一目見た瞬間、心を撃ち抜かれてしまった。

仁が由理恵の後ろ姿に見とれているとき、ものすごい突風が吹き荒れた。

由理恵の短いスカートは瞬く間に舞い上がり、淡いピンクのパンツがはっきりと見えた。

(おおおおお!見えたああああ!)

仁は心の中でガッツポーズ。先ほど出会った獄卒の言う通り、さっそく願いが叶った。

恥ずかしそうにスカートの裾を抑える由理恵。しかしもう遅いのだ。仁はこの目でしっかりと桃源郷を見てしまった。

(さっそくお望み通りの展開だ…ありがとうじいちゃん)


(カキィン)

仁が頭に焼き付けたパンチラを必死に脳内再生しているとき、突然打球音が聞こえた。

「いてっ!」

野球部の中で一番体の大きい奴が放った打球が、仁に直撃した。

「…いててて、よそ見してたなあ。頭に当たらなくてよかった」







翌日。駐輪場で自転車を停める仁は、目の前に広がる尊い光景に驚きを隠せなかった。由理恵と登校時刻がたまたま被ったのである。
由理恵は仁のすぐ近くに自転車を停めた。その短いスカートから見える健康的に鍛え上げられた太ももが、仁を興奮させる。
そして、由理恵が自転車を降りた瞬間、サドルにスカートが引っ掛かった。今度は黒いパンツがチラリ。

(はああああ朝から興奮させてくれるぜ、)

由理恵は昨日と同じように恥ずかしそうにお尻を抑えるが、もう手遅れ。見てしまったものはしょうがない。

(よっしゃあ!今日もゲットだ。あの獄卒、嘘じゃなかったんだな)



1時間目は化学。

仁は由理恵と同じ班であった。由理恵のお尻と太ももに見とれてよそ見をしながらアルコールランプに火をつけようとすると突然、

(ドッカ――――ン)

大爆発が起き、仁は吹っ飛んでしまった。幸い火はどこにも燃え移らず、皆が無傷だった。

「わああ、危ない。死ぬかと思った。」






仁は帰宅後、祖父の仏壇へ向かった。

「じいちゃんのおかげで2日連続秋元さんのパンツを拝めてるからな。線香あげとかないとな」

仁はライターを手に取り、線香に着火しようとする。

「わあああ!」

突然大声をあげてしまった仁。

「どうしたんだ、仁」

父が大声を聞き、慌てて飛んできた。

「いや、なんか火が怖くて」

「なんだ、死んだじいちゃんみたいなこと言って」







翌日も仁は元気に登校。もう由理恵のスカートの中を覗けるのが楽しみで仕方ない。
由理恵が登校する時間も分かっているため、ドンピシャのタイミングで学校についた。しかし、今日はサドルにスカートは引っ掛からないし、強い風も全く起きない。

(あれ、いつになったらパンツが見られるんだ?)

仁は疑問に思いながら由理恵の後をつける。後をつけるといっても同じクラスのため、同じ道を行くのは当然だ。1年生の教室は2階にあるため、階段を上る由理恵と、そのあとを追う仁。階段の上方でひらひらと揺れるスカート。

(あ、見えそう、もう少し…)

仁はしゃがみ込み、スカートの中を覗いた。

(見えた!今日はオレンジ…)

「ちょっと!何見てんのよ!変態!」

由理恵が大声で叫んだ。怒っている様子だが、恥ずかしそうにスカートを手で押さえる姿があまりにも可愛らしい。

「あ!すみません、見てないです!ほんとに!」

由理恵は仁を無視して教室へ向かった。

(あ~、ばれちゃったか…もうだめだな。でも夏休みまでは毎日パンツ見せてくれるからいいや。どうせ叶わぬ恋なんだからパンチラくらいしてくれないと)






授業が終わり、自転車で帰る仁。毎日好きな女子のスカートの中を見ているとあって、気分は上々だ。いつもよりスピードを出していると、急にブレーキの利きが悪くなった。

「あれ、どうしたんだ、ちょっと、わあああああ!」







「仁さん。私です。一昨日の獄卒です。自分で覗いちゃダメじゃないですか。私がちゃんと見せるって言ったのに。」

「あ、あれ、おれどうして…」

「あなたは自分の欲に溺れました。さすがに無条件でパンチラを見せるのはこちらの採算が合わないので、1回につきお祖父様に生前降りかかった不幸をあなたにも味わってもらうことにしたのです。」

「そ、そんな、聞いてないですよそんなの」

「人の話を最後まで聞かないからそうなるんです。私が話し終わっていないのにパンツパンツと喜んで走って行っちゃったじゃないですか。」

「え、そうなの?全然知らなかった」

「お祖父様は若い時にボールが頭に直撃してアザができました。お祖父様の左手にアザがあるのをご存知ですね?」

「あ、あのアザってその時にできたんだ」

「勤務する工場で爆発事故を起こしたこともありました。そのときは無傷でしたが、それ以来お祖父様は火が怖くなって、急にライターも使えなくなったんですよ」

「あ、急にじいちゃんが煙草吸わなくなったのはそういうことだったのか。」

「今、あなたも火が怖いはずです。そして3ヶ月前、お祖父様は車に轢かれてこちらの世界へ来られました。同じことが仁さんにも起こりました。これはあなたが運命に逆らって自分でパンツを見ようとした罰です。」

「そうか、じいちゃんと同じ運命を…。ってことは俺ってもう…?」






不幸のスカート 完






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