ウクライナ危機!釈尊の戦争・平和観を考える

樺山 輝一

釈尊 15

弟子  先生、日本の元総理が暗殺されました。手製の銃で撃ったようです。 

先生  怖いですね。前日に子供がみていたアニメのブラックジャックの話しは、心肺停止に関わる内容でしたので、症状が重なりいささか驚いています。
 提婆達多(だいだばった)は釈尊の命を何回も狙います。提婆達多から暗殺を依頼された人々は逆に釈尊に帰依したり、とても釈尊の殺害に協力することができないなど、悉く失敗します。それでも提婆達多は諦めません。人間が駄目ならと、王から許可を得て軍隊の獰猛、凶暴、人殺しの象、ナーラーギリを使うことにしました。托鉢をしている釈尊の道中を襲う計画です。現代的に解釈すれば、托鉢している釈尊に大型ミサイルを撃ち込むような感じでしょうか。
 ある朝、釈尊は比丘達と托鉢をしていました。象使いが、釈尊を確認し酒に酔わしていたナーラーギリを突進させます。
 智慧第一の弟子、サーリプッタが叫びます。
 「尊師よ、父親にかかわるどのような問題であっても、その面倒をみるのが長男の努めです。象をおとなしくさせる役は、私がやります」
 「サーリプッタよ、ブッタの力と弟子たちの力はちがう。そなたは、何も面倒をみる必要はない」
 釈尊に常随給仕した多聞第一のアーナンダーは、釈尊の前に出て正面に立ちます。
 「尊師よ、このナーラーギリ象は、凶暴で、人殺しで、獰猛で、野蛮な殺し屋です。世尊が傷つかれるのを、わたしは許しません。象にわたしを踏みつけさせて、死なせてください」
 「アーナンダ、私の正面にいてはいけない」
 釈尊はアーナンダの正面に立ちます。
 ちょうどその時、こどをを抱いて逃げ遅れた母親がこどもを地面に落としてしまいます。こどもは突進する象の目の前にいたため、いままさに踏み潰される時です。
 「ナーラーギリよ、そなたの飼い主が、わたしを殺そうとして、酒わ飲まして酔わせたのだ。だから、ほかの人を傷つけてはならぬ」
 ナーラーギリは、慈悲で満たした釈尊の声を聞いて、酔いが醒め正気を取り戻しました。

 おお、象よ、牙ある者を襲ってはならない。
 なぜなら、まさしく、牙ある者を襲うと
 苦しいからだ。
 牙ある者を殺す者に、
 どのような幸福な運命もない。
 うぬぼれて、放逸であってはならない。
 放逸な者には、どのような幸福な
 運命もない。
 そのように行動しないなら、
 そなたは幸福な運命へ導かれるであろう。

 この偈をきいて大喜びしたナーラーギリは、象小屋へ戻っていきました。
 この光景をみた在家の信者たちは喜びの偈を歌います。
 
 ほかの者を、杖でおとなしくさせる者も
 いれば、棒や鞭で、ほかの者をおとなしく
 させる者もいる。
 しかし、ここに偉大な賢者は、牙ある者を
 おとなしくさせたのだ、
 杖も、武器も、ともに使わずに。

 (「南伝ブッタ年代記」)

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