汚濁

「S」

episode.『11月19日(月)』



物静かな部屋。凄く落ち着く。

いろんなもの取っ払って、時間を忘れさせてくれる。

不毛かもしれないけど、この時間が嫌いじゃない。

ふとした瞬間に蘇るあの頃の思い出が、溢れ出してくるから。

嬉しくて、悲しくて。寂しくて、切なくて。

ただなんとなく笑みを溢す。

まるで、死に行く人間みたいだ。





念には念を。

そうやって保険を掛け続けるのは、何もかもを見限っているから。

願っても叶わない。期待しても裏切られる。

だったらもう、諦めるしかないじゃないか。

でも、何でだろうな。

それでも確かに、諦めきれないものがある。

捨てきれない何かがある。

それが、今の私を突き動かしている――。





「誰にでも優しい男は女にモテない」ってのも言われたことあるけど、それは仕方ない。

優しくないと誰からも好感を持てないし、関わる機会だってなくなってしまう。

別に意識してるわけじゃないけれど、そうあることでしか関係を繋ぎ留めきれない。

失ってしまうことが、何よりも怖いから――。





自分を好きになってくれる人なら誰でもいいってわけじゃない。

その人との相性とか、好みもある。

相手が魅力的でどんなに惹かれても、ほんの些細な事で嫌いになってしまう事がある。

だから、どんな面を見ても嫌いになれない人がいい。

裏表がないのではなく、どこを取っても好きでいられる人がいい。





相思相愛。子供みたいな考えだけど、やっぱり付き合ったなら結婚したいって思う。

だから今、彼女がいなくたっていい。

周りがイチャイチャしていても結局他人だし、幸せそうで何よりとしか思わない。

未来で幸せな家庭を築けているならそれでいい。

そうじゃなくても、一人は気楽でもう慣れてるしね。





この世界が広くて、怖くて。縮こまって殻に籠って。

それはどんなものよりも安らぎを与えてくれる。

でも、そこは海のように息が苦しい。

自分にとってそこは何よりも苦しい。

自業自得で逃げだとわかっていても、この世界が狭くて窮屈に感じる。

だからこの世界が大嫌いだ。

私は囚われ者のようです。

          

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