見た目おっさん。夢想したものを錬成、現実化できる力を行使する異世界平和への物語

とおす

剣豪との出会い

ーー


おっさんがロングソードを渡した武器職人ダイザーは逡巡していた。


「品質:プレミアムとはな・・・鑑定書は偽りのない本物。そして、極め付けはこのスキル・・・切れ味補正20%向上。
どんな素人でもこの剣を持たせれば、それなりの剣士にしてしまうな・・・。国王様に見せるべきだろうが・・・うーむ」


頭を抱え、カウンターにふさぎ込むダイザー。


「ダイザ―!どうした!なんかあったのか?!」


びっくりしたような声を挙げ、声をかけてくる男。


「ん?ああ、お前か・・・クーシー」


「ああ、お前か・・・じゃねえぞ、ダイザ―。なんかあったのか?」


クーシーと呼ばれる防具職人はダイザ―の幼馴染で、


ダイザ―は剣をクーシーは防具をそれぞれの道を進んで職人になった。


時には相談することも多く、今日もそんな気分で店に顔を出したのだが、


ダイザ―の塞ぎ込んだ様子をみて、ただ事じゃないと感じたみたいだ。


「なんかあったのは間違いない。これを見てくれ」


ダイザ―は鑑定書をクーシーに見せた。


「鑑定書?・・・ふむ。ロングソード・・・って品質!プレミアムだとーーー!」


「ああ、その反応が正しいよな・・・ははは」


「いやいや、なんでこんな武器がお前んとこにあるんだよ!?」


クーシーは鑑定書を読み上げ血相を変え、ダイザ―に詰め寄る。


「・・・ふーロングソードが品薄で納品依頼を冒険者組合に出したのは、お前も知っているだろう?」


「ああ、先月くらいだったか?それがどうした?冒険者がこんなもん用意してきた・・・なんて、まさか言わねえよな?」


「いや、そのまさかだよw」


ガハハハと笑うダイザ―。


「まじか!・・・しかし、この鑑定書の筆跡は間違いなく放物院のもの・・・っで?どうするんだ?」


「うむ、国王様へ相談すべきか悩んでいるところだ」


「まあ、そうだろうな・・・俺なら、そうだな・・・オークションにでも出品するかな・・・」


「オークションか、確かにな・・・ふむ・・・それなら、間接的に国王様にも知られる事になるか・・・よし!それで商談してみよう!」


ダイザ―はこの後、相場を計算し、渉を待つことになるが、それはまたのお話・・・。


ーー


ー渉サイドー


冒険者組合依頼掲示板の前には他の冒険者もおり、おっさんが近づくと、チラ見をしては目の前の依頼書に集中する。


「(ふむ、今日は意外と多いな)」


おっさんは依頼書を見る。


ー期限あと10日ー
・人食い蟻の討伐(可能範囲数)
条件:
→パーティ・ソロの冒険者かどうかは不問(※自己責任)。
→討伐証明には人食い蟻の牙を2つで1体分とカウントする。
→1体に付き討伐報酬50銀。
→特徴書有


ー期限あと20日ー
・商品運搬の護衛
条件:
→密林からの商品運搬における護衛で3日程度付き合える方。
→剣士は1日150銀(食事あり)・魔法士は1日160銀(食事あり)
→魔法士は火属性魔法を扱える者限定


「(このあたりはやってみる価値ありだな・・・)」


おっさんは目敏く依頼書を見つけると、それを引きはがし・・・。


ガキンッ己の後ろに向かって剣鞘で防ぐは何者かの剣戟。


「!今の剣戟を防ぐとはっ!手を抜いたとは言え、やるなおっさん!」


「っ!痛いなあ!あんた何もんだよ!」


「ふふふ、よくぞ聞いた!我こそはフィールド・ソードナイト・ダルイド。別名剣豪って呼ばれている冒険者だ!」


おっさんは剣豪の部分に食いつきたかったが、突然の不意打ちに腹が立っていた。


「あっそ!こんなところで剣振り回す馬鹿が剣豪ねえ・・・この組合大丈夫か?」


「!おっと、こりゃ一本取られたねえw」


「おい、あんた何が狙いで俺みたいな・・・おっさんを狙いやがった?」


「エル・ガーラから話を聞いた。面白い新人冒険者がいるってなw」


剣豪と渉の話は2時間続いた。


「ってわけで、俺のチームに入らないか?渉さん」


「・・・」


「悪い話じゃないと思うんだけどなあ・・・」


要約すると、剣豪は俺をスカウトに来たらしい。


近年、モンスターの活発化における冒険者の被害は相次いでおり、


赤色勲章持ちが年々少なくなっている変な噂も出てきているとの事。


噂によれば冒険者を攫い魂を喰らうだの、大魔王が復活しただの、


モンスターの変異種を見ただの。剣豪達上級冒険者は期待の新人冒険者を育てる活動として、


パーティを組み、経験値を積み上げ、新たな上級冒険者にすることで、地域の不安を払拭したいらしい。


「話は分かったが、それは俺じゃないと駄目なのか?」


「おっさん、あんたは俺を超える。おそらくな・・・」


「・・・」


「今はまだ、力は不十分だが。先ほどの不意打ちに合わせられるほどの気配感知能力と、とっさの防御。なかなかなもんだ」


「・・・そりゃどうも」


「先々は俺を超え、世界の組合にとっての旗印になって欲しいと思っている」


剣豪はガハハと愉快そうに笑う。


「旗印ねえ・・・(悪くはない、それだけ有名になれば、女神の使命もどうにかなりそうだしな)」


「おう、鍛えてやるぜ?!」


おっさんは少し考えさせてくれと、剣豪と連絡用マナ端末(互いのマナを通し、連絡がとれる端末)を作成してもらい、


組合を離れるのであった・・・。

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