乗用車に轢かれて幽霊になったけど、一年後に異世界転移して「実体化」スキルを覚えたので第二の人生を歩みます

サバサバス

第59話 再会 Ⅱ


とりあえず現在あかりがどんな状態にあるのかを確かめなければ何も始まらない。
俺はあかりのステータスを目の前に表示させる。

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名前: アカリ[錯乱][洗脳]
種族: 吸血鬼
職業: 聖女

Lv.32

HP : 2580/2580
MP : 1250/1250
ATK : 431
DEF : 412
MATK: 300
MDEF: 476
DEX : 634

SP : 310

スキル:『聖なる癒し』、『再生』、『夜目』

称号 : 『異世界の勇者』、『吸血少女』

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さすがは吸血鬼と言ったところか。
全体的にステータスが高い。

『聖なる癒し』・・・スキル保持者が近くにいるだけで自然治癒力が増す。スキルの効果と範囲はスキル保持者のレベルが上がる度に増していく。

これは元々持っていたものみたいだな。
職業の聖女にピッタリなスキルだ。

『再生』・・・ダメージを受けてもMP100を消費することによって回復することができる。

これは吸血鬼になって手にいれたスキルみたいだ。
『夜目』も同様だろう。

そしてステータスで一番気になる部分、それは名前に表記されている[錯乱][洗脳]という部分だ。
多分これが今あかりをこのような状態にしている原因だろう。
これさえ解消出来れば正気を取り戻すに違いない。

「さっそく始めるとするか」

俺は自分のステータスを目の前に表示させる。

まず手始めにあかりの状態異常を治療出来るスキルを探すのだ。
俺が覚えているスキルには治療系統のスキルはないので新たに取得する必要がある。
そこで新たにスキルを探すのだが、実は以前それらしいスキルを見たことがある。
そのスキルの名は『アロマテラピー』。

『アロマテラピー』・・・対象の状態異常を正常に戻す。

これさえあれば今のあかりの状態は治るはずだ。
俺は手早くスキルを取得し、あかりに向けてスキルを発動する。
発動した直後、あかりは緑色の光に包まれた。

──どうだろうか?

状態異常が治っているかを確かめるためにあかりのステータスをもう一度確認する。

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名前: アカリ[洗脳]
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『アロマテラピー』を使っても[洗脳]は解けないのか。
他に[洗脳]を解除出来そうなものはないか…………解除!?

俺はふと自分の覚えているスキルの中から『解除』の説明を表示させる。

『解除』・・・あらゆるものをMPを消費して解除する。解除するものによってMPの使用量が変わる。

これならもしかしたら[洗脳]を解除出来るかもしれない。

俺は試しに『解除』をあかりに向かって発動する。
するとカチッと何かが外れた感覚と共にMPが消費される感覚がした。

──この感覚は……。

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名前: アカリ
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どうやら成功したみたいである。

──これであかりは……。

俺が掴んでいた杖をずっと引き抜こうとしていたさっきまでとは打って変わってぷつりと糸が切れたように地面に座り込んでいた。
俺は慌ててあかりを抱き寄せる。

「おい、あかり大丈夫か!」

「……ん」

まだ意識がハッキリしていないようだが先ほどまでの操られているような感じは受けない。

──良かった。無事とは言わないが助け出すことは出来た。

それからしばらくして地面に座り込んでから閉じていたあかりの目がゆっくりと開く。

「……和哉?」

「ああ」

「……本当に和哉なの?」

「ああ」

もう誤魔化すなんてことはしない。
それがあかりを救えずに吸血鬼にしてしまった俺のせめてもの償いだ。

あかりは俺が和哉だと分かるといきなり俺に抱き付いてきた。

「ごめんなさい……あのときは私が……」

あのとき、多分交通事故で俺が死んでしまったときだろう……。
とにかくあかりは必死に謝っていた。

「あかりが気にすることじゃない。俺が望んでしたことなんだよ。今はそれよりも……」

「それよりも……?」

そう今は感動の再開をしている場合ではない。
鈴音達を救い出さなければいけないのだ。

「あかりはなんでここにいるのか自分で分かるか?」

「確か森でグループの皆と散策してて、それから……あれ? 覚えてないや」

「実はなあかりはこの前のダンジョンで黒いやついただろ? そいつに連れて行かれたんだよ」

「嘘!? そうなの?」

「ああ、だけど話はここで終わりじゃない。そいつに鈴音ともう一人同じグループの人も連れて行かれたんだよ」

「鈴音が!」

「だからこれからその二人も助けたいんだ。すまないがあかりはここで……」

「私も行くよ!」

あかりは以前とは違う赤い目でしっかりと俺の目を見てくる。

例え吸血鬼になったとしてもあかりはあかりか……。
これは止めても無駄だろうな……。

「分かった。だが危ないと思ったらすぐに逃げるんだ? いいな?」

「和哉はどうするの?」

「あ、俺か? 俺は既に死んでるからそんな心配必要ないぞ。」

「……ってことは今も生き返ったとかじゃなくて幽霊なの?」

「まぁそうなるな。とにかく急ぐぞ!」

「ちょっと待ってよ! どういうことなの?」

俺とあかりの二人は急いで暗黒騎士と吸血少女アリシアが下りていった地下に続く階段へと向かった。

◆◆◆◆◆◆

「この階段はどこまで続くんだ?」

「確かにもう十分くらいは下りてるよね」

俺達は今螺旋階段を地道に下りていた。
洞窟の中が暗かったので当然この階段がある空間も暗いはずなのだが俺達には『夜目』があるのでまったく問題はない。
むしろ問題なのは階段の終わりが見えないことだろう。

「そろそろ出口が見えてもおかしくないんだけどな……」

そう俺が言ったことが功を奏したのかもう一周下りたところに扉の入り口のようなものが見えた。

「あそこが出口か?」

「階段もそこで切れているし出口で間違いないんじゃないかな」

考えていても仕方ない。
とりあえず入ってみようということで俺達二人はその出口へと向かった。

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