乗用車に轢かれて幽霊になったけど、一年後に異世界転移して「実体化」スキルを覚えたので第二の人生を歩みます
第49話 ◆勇者 Ⅲ◆
SIDE 藤堂あかり
私達が冒険者ギルドでしばらく待っていると今回のダンジョン探索に同行してくれる冒険者が次々と来ました。
一、二、三……と冒険者の人数を数えてみたところ全員で十人いるようですね。
おっともう三人が追加でやって来ました。
その内の女の子二人が私の一個か二個下に見えますね。
こんな子まで冒険者をしているとは驚きです。
もっとゴツい人がうじゃうじゃかと思ってました。
「お前ら! こっちに注目しろ!」
先程の大男が注目させるということはそろそろ何か始まるんでしょうか?
というか先程の大男は一体何者なのでしょうか?
大人しく見守っているとしましょう。
私が見守っている間、大男からは今回のダンジョン探索についての目的についての話がされました。
どうやらあの大男はギルドマスターだったようです。正直かなり驚きました。
そしてここからがお待ちかねの一緒にダンジョンを探索するグループメンバーと同行してくれる冒険者の決定です。
「……それでまずは四人一組のグループを作ってくれ。ダンジョン内では作ったグループで行動することになるからな、相性も考えて選べよ」
「「「はい!」」」
「グループが出来たら、俺の独断と偏見でグループごとに護衛についてもらう冒険者を割り振っていくぞ。じゃあ開始してくれ!」
いよいよですね。
今回もリンちゃんと一緒に組むこととしましょう。
「……おい新入り、最近の調子はどうだ?」
「……まぁボチボチだな」
私がリンちゃんのもとへ向かおうとした時、今回同行してくれる冒険者の方向から聞きなれた声が聞こえてきましたがなんでしょうか。
どこか懐かしい、でも聞くと寂しくなるような不思議な声です。
気になるは気になるのですが今はリンちゃんが優先です。
「リンちゃん!」
◆◆◆◆◆◆
無事それからリンちゃんを探しだしグループを組めたわけですが、そこには前回も一緒にグループを組んだ風間君がいました。
それは良いのですがなぜ毎回リンちゃんと組むと風間君が来るのでしょうか?
……っは!? もしかして風間君はリンちゃんを狙っているのではないですか!
そんなの絶対許しませんよ!
リンちゃんは私の……いえ皆のリンちゃんです!
私が代行して皆のリンちゃんを保護しますよ!
私が心の中でリンちゃんを守ることを決意していると今回同行してくれる冒険者がいる方向からギルドマスターの声が聞こえてきました。
「お、グループが出来たみたいだな……って一人余っているじゃないか」
どうやら他の人達もグループを作り終えたようですね……って一人余っている?
「困ったな。誰か入れてやれるグループはいないか?」
私は一人余っているという話を聞いて辺りを見渡しました。
一体どんな人なんでしょうか?
こう言ったら最低かもしれませんが正直助けてあげようという気持ちよりも気になるというのが大きかったと思います。
ですが困っていたら私達のグループにでも招待するつもりです。
それから少し見渡すとそれらしき人を見つけました。
あからさまに落ち込んでいたのですぐ分かりましたよ。
それでその落ち込んでいた人ですが……あれは確か……高崎さん?
あんまり話したことはないですが関係ありません。
困っているんですから手を差しのべるのが人間として当たり前のことです。
私が早速高崎さんを誘いに行こうとしたとき、突然腕を捕まれました。
「藤堂さん、ちょっと待ってくれませんか?」
どうやら腕を掴んだのは風間君のようです。
「ちょっといきなり何?」
「すみません……ですが今藤堂さんは何をしようとしていました?」
「それは高崎さんを私達のグループに誘おうとしてただけだけど」
「藤堂さん、気持ちは分かります。ですがそれは止めて欲しいです。高崎さん、彼女のスキルは知っていますか?」
「いや、知らないけど」
「彼女は周りの人を弱体化させるスキルを持っているんですよ。それでもいいんですか?」
「良いも悪いも関係ないじゃない! 困っているなら助けるのが当然でしょ?」
「それは……」
私達が長々と言い争っていたのが悪かったのでしょうか……。
「決まらないようだから余った一人はこのフードの怪しいやつと……そうだな残りの護衛でいいか」
問題の高崎さんはたった今ギルドマスターの指示で別のグループへと入ってしまいました。
良かったのか悪かったのか少し複雑な気分です。
ですがこれでグループ決めが終了したのでこれからは各グループで準備の時間ということになります。
しっかり準備をしてダンジョンに備えるとしましょう。
◆◆◆◆◆◆
「……準備も終わったようだし、そろそろ出発してもいいぞ。ここからは俺じゃなく、各グループについている冒険者に従って行動しろよ! 以上!」
それから準備を終えた私達のグループはギルドマスターのGOサインで目的のダンジョンへと出発しました。
ギルドを出発した他のグループを見るとやる気に満ちているいった印象を受けるのですが、私達グループは黙々と目的のダンジョンへと歩を進めています。
先程の風間君と私の言い争いのせいでダンジョンへと向かう道中、無がグループ内を支配していました。
流石にこの空気は今から共にダンジョンに潜る仲間としてはいただけません。
ここは言い争いの種を作ってしまった私が責任を取るべきでしょう。
「あの風間君……」
「なんですか? 藤堂さん」
「さっきのはごめんね。ちょっと言いすぎたよ。風間君はグループのことを思って言ったんでしょ?」
「いえこちらこそ人間として最低なことをしました。言われて当然だと思います」
「いやいや私が……」
「いえこちらこそ」
「いや……」
「いえ……」
…………。
「いやいや……って私達何やってるんだろうね。どっちも悪いと思って反省してるならそれでいいじゃない」
私はどちらも謝ることを譲らないこの状況がだんだんおかしくなってしまいました。
だっておかしいじゃないですか。
言い争ったことを謝るために言い争うなんて。
「そうですね。この話はおしまいにしましょう」
それは風間君も思ったようで笑いながら同意してくれました。
ともかくダンジョン探索前に悪い空気がなくなったのは良いことです。
ダンジョンでもこのまま明るい調子で探索しましょう。
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