乗用車に轢かれて幽霊になったけど、一年後に異世界転移して「実体化」スキルを覚えたので第二の人生を歩みます
第41話 護衛依頼 Ⅵ
「よろしくな、アハハ」
「よ、よろしくお願いします!」
「よろしくです」
大丈夫だろうか……俺の正体がバレたらこの幼女に殺されるんだが……。
「何見てるです? そこでボーッとして」
白髪の幼女が俺へと近づいてくる。
「い、いや何でもないよ。それでこれからどうするんだっけ?」
危ない、危ない。
あまり近くまで来られると顔を見られてしまう。
適切な距離を心掛けよう、そうしよう。
「あの……これからは確か一時間程準備の時間だったと思います」
なるほど、準備か。
「俺の方は準備は終わってるけど、えーと……」
「アメリアっていう名前です。わたしはちょっとポーションを補充しておきたいです。勇者さんも必要だと思いますです」
「確かにそうだな。じゃあポーションを買いに行くか。そういえば高崎さん、お金は持ってるのか?」
「どうして名前を?」
しまった……。
ここではまだ名前は知らないんだった……。
「えーと、あれだ事前にあのーギルドマスターに名前の表みたいなの見せてもらったんだよ」
さすがに苦しいか……。
でもこれで乗りきるしかない。
「わたしそんなの見てな「あーそういえば自己紹介してなかったな。俺の名前はカズヤだ」」
「急になんです。あ、改めてわたしの名前はアメリアです」
「どうも、私は高崎千穂って言います。よろしくお願いします」
「じゃあ自己紹介も済んだし、ポーションでも買いに行くか」
どうやら名前の件はうやむやになったようだ。
まぁこの程度の偽装は俺の手にかかれば造作もないことだ、フハハハ!
それから俺達はついこの間俺がポーションを購入した例の魔道具屋でポーションを買い込み、ギルドへと戻ってきた。
「後準備することとかないよな?」
「大丈夫だと思うです」
「私ももう大丈夫です」
俺達が準備が出来ているかどうかの確認をしているとき、ガンゼフは全体に聞こえる声で一言言った。
「準備も終わったようだし、そろそろ出発してもいいぞ。ここからは俺じゃなく、各グループについている冒険者に従って行動しろよ! 以上!」
これが合図になったのか、多くのグループがギルドの扉から出ていく。一方のガンゼフは他の用事があるのか自らの部屋へと戻っていった。
「さて、俺達も行くか」
「そうですね。行くです」
「はい……」
どうも高崎さんはあまり乗り気ではないようだ。
まぁ今から生きるか死ぬかの戦いをするのに乗り気もなにもないか。高崎さんを危険な目に合わせないのが俺の冒険者としての仕事だ。何があっても守りぬく気でいよう。
ギルドを出てしばらく歩くと最も外側にある城壁へとたどり着く。ここから目的のダンジョンまではさらに歩きで約一時間程かかる。とても長い道のりだ。
「歩きで行くしか無いなんて面倒です」
「まぁまぁ歩かないと目的のダンジョンには行けない訳だから頑張ろうぜ」
前を見ると俺達より先に出発したグループがずらっと縦一列で連なっていた。その様子はさながら大名行列のようである。
「そうは言われてもです。疲れるものは疲れるのです」
アメリアはそう言いながらも、きびきびと足を進めていた。
このくらいの元気があるならしばらく大丈夫そうだな。
俺はダンジョンに入る前に久しぶりに自分のステータスでも確認することにした。
------------------------------------
名前: カズヤ
種族: 幽霊
職業: 冒険者
Lv.52 ( 1 )
HP : 1954/1954
MP : 2590/2590
ATK : 1131
DEF : ∞ (スキル補正)
MATK: 1120
MDEF: 745
DEX : 1532
SP : 1710
スキル:『実体化』、『物理攻撃無効』、『メテオ(笑)』、『集中』、『夜目』、『解除』、『成長速度倍加』
称号 : 『車に轢かれちゃった系男子』、『異世界の幽霊』、『流石にあの攻撃はエグいでしょ』、『ゴブリンを殲滅せし者』、『下級竜スレイヤー』
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しばらく確認していなかったがスキルポイントが余りに余ってるな。この際だからいくつかスキルを取得するのもありかもしれない。
俺はスキル画面を目の前に表示させる。
何か使えるスキルはないかなっと……これは?
俺はしばらく歩きながら様々なスキルを見ていき、使えそうなスキルを頭の中に記憶していく。
一通り見終わったところで記憶したものを頭の中に全て思い浮かべた。
お気づきだろうか。
俺は既にスキルを一つ取得している。
そのスキルの名はズバリ……『記憶』である。
『記憶』・・・覚えようとしたものを完璧に記憶する。自身の意思で覚えた記憶の削除、保持が制限なく行える。
このスキルは本当に便利である。
自分が一瞬見たものならば即時覚えることが出来るのだ。
それも自分が忘れたいと思わない限りずっと忘れない。
取得おけば損どころか得しかないだろう。
他にも話したいことはあるがこれ以上話すと長くなってしまうので一旦『記憶』スキルに関してはここまでにしておくとしよう。そう、例え自分の心の中でも話したいことを抑えることは大事なのだ。人間に大事なのは自制心なのである。
話は少し戻るが先ほどこの『記憶』スキルで記憶しておいた他の使えそうなスキルも取得するかどうか一度考えてみるとしよう。
まず一つ目は『念話』だ。
これは比較的簡単に想像がつくのではないだろうか。
そう、念じるだけで相手と会話が出来るというよくあるやつである。この『念話』は鍛練を積んで習得するような技術的に習得出来るものではない。どちらかと言うと、理論を知って初めて習得出来る類いのものだ。なのでいくら練習したところで習得は出来ない。
どうしても使いたいならば『念話』が使える人に教わるという方法があるが、『念話』のような珍しいスキルが使える人はあまり積極的には人に教えたがらないだろう。
何故なら珍しいスキルが使えること自体が強力なステータスになるからだ。使えるだけで人から必要とされる。自らの希少性を確立出来るのだ。
それがSPで取れるのだからかなりの儲けものだろう。
それに『念話』っていうのもちょっと憧れてたしな。
よし、これは取得決定だな。
続いて二つ目は『マッピング』。
これは完全にダンジョンで使う想定で選んだものだ。
『マッピング』・・・通った道を頭の中で地図という形で記憶する。『マッピング』で作成した地図は後で自由に参照することが出来る。
これはあれば便利というところだろう。
実際にダンジョンが複雑な構造をしていたら取得した方がいいが、ダンジョンが単純な構造だとしたらさして必要はない。
ということは一旦これは保留にしておいて必要になったら取得という形でいいか。
そして最後の三つ目は『気配察知』だ。
『気配察知』・・・自身から半径二十メートル以内にいる生き物の気配を察知する。
このスキルがあれば後ろからの奇襲も事前に防ぐことが出来る。今回の依頼では勇者達を護衛することが俺の仕事だ。
そんな俺にとってこれはうってつけのスキルではないだろうか。それにこの『気配察知』は今回のダンジョンだけでなく日常的に依頼をこなす際にも使える。
今後のことも考えても『気配察知』は取得しておいて損はないと思う。
以上の結果から俺は新しく『記憶』、『念話』、『気配察知』の三つのスキルを取得した。
これらが今回のダンジョンにどのくらい役に立つかは分からないが無いよりはマシなんじゃないかと思う。
「そろそろ、ダンジョンが見えてきたです」
今まで俺と高崎さんの前を歩いていたアメリアは俺達の方向へ顔を向けると早く来いという感じで俺達の腕を引っ張った。
「ようやくついたか」
「頑張ります……」
しかし、アメリアが俺達を引っ張っている様子を見ていると欲しいものをねだっている子どもにしか見えないな。
アメリアはこの三人の中で一番年上のはずなのにな……。
本当、同情します……。
それはともかく、ここからが本格的にダンジョン探索のスタートである。
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