俺の彼女がいつに間にかあざとカワイイ小悪魔どころか独占欲が強い魔王様になっていた件について
48.彼女と俺の答え②
「そういえばコンテストはどうなったんですか? 私も今日が文化祭だってことは流石に覚えてますよ」
ふとした四葉からの疑問に俺は思考を働かせる。四葉が倒れたのはミスコンの終盤も終盤、それから今この時までで既に四十分は経過している。ということはだ、ミスターコンはまだやっているかもしれないが、俺には既に出場する資格は無いだろう。
「コンテストなら今ミスターコンをやってると思う、多分」
「ミスターコン……なんだか段々と思い出してきました。確かミスコンでの私の番は一番最後で五分間のアピールはした気がします。それでミスコンの順番が一番最後の私が今保健室にいるってことはまさか凛君……」
「まぁそうなるな、でも別に気にしなくていいからな。これは俺が勝手にやったことだから」
「でも私は凛君の出番を奪ってしまったんです。それは決して許されることではありません……」
俺の言葉に四葉はとても申し訳なさそうな顔になる。気にしなくていいと言っているのだが、彼女の性格上そうすることが出来ないのだろう。
どうしたものかと困っていると彼女は突然ハッと我に返ってこちらに真剣な眼差しを向けた。
「すみません凛君、私のせいでこんなことになってしまって。だからお詫びをさせてください。明日は文化祭の一般公開の準備があるので無理だと思いますが、文化祭が終わった次の日から毎日凛君の朝ごはんを作らせて下さい!」
「ちょ、そんなことしなくても……って今文化祭が終わった次の日からって言ったか?」
「そうですね、言いました」
確か月城先輩によると文化祭が終わった次の日は四葉の手術が控えているはずじゃなかったか?
なんとなく四葉にそれを聞くのは憚られたが、この件については確認しておかなければならない。俺は現実を知りたくない思いからか、自分の声が震えているのを感じながらも恐る恐る確信に迫る質問をした。
「その日って四葉が手術する日じゃないのか?」
きっと四葉にとってこれはかなり無神経な質問だろう。だが聞かずにはいられなかった。もしかしたら俺は四葉に嫌なことを思い出させてしまったかもしれない。そんな思いで彼女の方を見たのだが、対する彼女はどこかキョトンとした顔で俺を見ていた。まるで突然変なことを言う俺の返答に困っているような、そんな表情で。
「えーと四葉さん?」
沈黙に耐えきれず四葉に声を掛けると彼女からは驚いた声が聞こえてくる。
「……は、はい!? そうですよね、私質問されていたんでしたよね。でも凛君の言っていることがいまいち理解できなかったので、はい」
ん? 一体どういうことだろうか。
「えーと、四葉は文化祭が終わった次の日に手術が控えてるんだろ? それも成功するかが怪しい」
「誰からそんなことを聞いたんですか?」
「それは月城先輩に……」
俺の言葉を聞くや否や、途端にため息を吐く四葉。それから彼女はポツリと小さく呟く。
「きっと先輩はこの前の電話を聞いていたんですね。でも結論から言うとその話はただの勘違いです」
「勘違い?」
「はい、勘違いです」
勘違いとは物事をうっかり間違って思い込むことという意味で使われるあの勘違いだろうか。というかその意味以外で使われる勘違いなど知らないので彼女が言っているのは間違って思い込むという意味の勘違いなのだろう。
しかしながら俺は彼女の言葉を鵜呑みにすることは出来なかった。少し前に彼女が見せた悲しげな表情が俺の脳裏に焼き付いたまま消えていなかったのだ。
もしかしたら俺に心配をかけないために嘘を付いているのかもしれない。そんな考えが頭の中に浮かんでいた。
「でもだとしたら手術なんたらの話はなんだよ。勘違いっていうのはどういうことだ?」
「あれは私の祖父の話です。きっとお見舞いに行く話を先輩は聞いていたんだと思います」
四葉が嘘を付いているようには見えない。ということは本当に俺の勘違い……いや、まだ決めつけるのは早い。
「それと先輩から四葉は体が弱いっていうのも聞いたぞ」
「その話は本当ですけど小さい頃のことで今はなんともないですよ」
「じゃあこの前の私がいなくても大丈夫なんですよねっていうのは何だったんだ?」
「それは凛君が私の誕生日なのに先輩の話ばかりするからです」
四葉の誕生日……ってそうだったのか。
今の話は俺にとって初耳であるが確かに彼女はソワソワしていたような気もする。でもそうだとすればその期間中、彼女の様子がおかしかったのはきっと俺が彼女の誕生日に全く触れなかったせいなのだろう。悪いことをしたと思う自分がいる反面、心のどこかでホッとしている自分もいた。
「でもいいんです。その少し後にプレゼントをくれましたよね。私、その時本当に嬉しくて。あっ、そのときのプレゼントはずっと大事にしまってありますよ」
ここまで聞けば先輩から聞いた話がただの勘違いだったと理解するには十分だった。それにしても俺は今まで随分と大きく空回っていたものだ。
「出来ればそのプレゼントはしまっておくよりは普通に使って欲しいんだけどな」
「いえ、そんなことは出来ません。あのプレゼントは大事にしまっておきたいんです。凛君から貰った初めてのプレゼントですから」
「そうか……」
良かった。その言葉が口から出そうになるが必死に堪える。その代わりに深くため息を吐くと、強ばっていた肩が次第にゆるんでいくのを感じた。
「……凛君、どうして泣いているんですか?」
突然四葉からそう声を掛けられて自分の目元を手の甲で拭うとそこには確かに涙らしきものが付いていた。
「……そうだな、本当になんでだろうな」
これは何の涙だろうか。悲しいとも、嬉しいとも違う流していてとてもホッとする涙。
「全く凛君は仕方ない人ですね」
四葉に涙を拭われるという普段なら恥ずかしさで死んでしまいたくなる状況だが、今は不思議と心が安らいでいく。
「そうなんだ、俺はどうしようもなく仕方ないやつなんだよ」
「なんですかそれ、しっかりしてください。……でもありがとうございます」
四葉からのお礼、一体何に対してのお礼なのか正確には分からないが、静かに呟いた彼女はそれから笑顔で続ける。
「やっぱり凛君には私がいないと駄目ですね」
外から射し込んだ太陽の光が四葉の表情をより一層優しく見せる。そこに出会った当初の不幸な少女の面影は一切なく、ただ幸せそうに笑う普通の少女の姿だけがあった。
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