俺の彼女がいつに間にかあざとカワイイ小悪魔どころか独占欲が強い魔王様になっていた件について

サバサバス

47.彼女と俺の答え①

白い天井に白い壁、どこを見ても白一色で統一されたアルコールの匂いが漂う部屋は普段いる学校の教室とは違い、清潔感のある空間だった。

「ちょっと待っててね。今ベッド開けるから」
「あの、四葉は大丈夫なんですか?」

保健室に着いて早々に四葉の健康状態を見るや否や、彼女をベッドへ案内しようとした女性養護教諭にすかさず質問すると、養護教諭は俺を安心させるような笑みを浮かべた。

「ああ、大丈夫だよ。ただの失神だから」
「失神?」
「そう、失神だからとりあえずは大丈夫かな。でも普通に失神で倒れたならどこかに打撲とかあってもおかしくないんだけど、もしかして君が倒れる前に支えてくれたのかな?」
「そうですけど」
「君は本当によくやったね。女の子の体に傷が出来たら大変だったよ」

それから養護教諭は四葉をベッドへと運ぶよう俺に促し、俺はその通りに彼女をベッドに寝かせる。
でも良かった。何か重大な病気とかそういうのでなくて。

だがしかし、俺の安心とは裏腹に養護教諭は少しの不安を顔に滲ませた。

「だけどただの失神とはいっても原因を知らないとね。もしかしたら何かの病気の前兆かもしれないし。彼女はどんな時に倒れたのかな?」
「ミスコンが終わった直後にいきなり倒れたんです」
「へぇミスコンに出てたんだね。どうりで綺麗な顔をしていると思ったよ。でもそうか、そういう理由だったら原因は恐らく緊張のしすぎによる失神かな。彼女、緊張とかしてなかった?」
「そうですね、確かに緊張はしてたと思います」

四葉自身は何も言っていなかったが彼女は確実に緊張していた。元々彼女は人前に出るのが苦手なタイプなのだ。あの状況で緊張しないわけがない。

「まぁ顔色も戻ってきているし、もうじき目を覚ますと思うよ。じゃあ私は少し用事があるからね。ここで失礼するよ」

養護教諭の後は任せたと言わんばかりの態度にそれで良いのかと思ったが、声には出さない。もうすぐ目を覚ますと言うのなら二人きりの方があの話をするには都合が良いのだ。

「あと意識がないからといって、くれぐれも彼女にイタズラしないようにね」
「そんなことしませんよ!」

養護教諭は最後に余計な念押しをすると俺の反論の聞かずに保健室を出ていった。

全く俺が四葉に対してそんなことをするはずがない。そう思ってベッドで寝ている彼女の方へと目をやる。寝ている彼女はとても安らかな表情をしていて、先程養護教諭が言っていた通り確かに顔色が良くなっていた。

「……ったく心配させやがって」
「……んぅ、くすぐったいです」

安堵のため息がわりに四葉の頬をつんと一回つつくと彼女からは幸せそうな寝言が聞こえてくる。
ん? ……というかこれは寝言なのだろうか。
恐る恐るもう一度彼女の頬をつつく。すると今度も俺の行動に反応するような幸せそうな寝言が彼女から聞こえてきた。

「あっ、あそこに未確認飛行物体が!」
「えっ? どこですか?」

咄嗟に四葉の興味を引きそうな事を言うと彼女はパッと目を開けてキョロキョロと周りを確認し始める。それからすぐに俺の目があることに気付き、しまったというような表情を浮かべた。やはり彼女は起きていたようだ。

「で、四葉はいつから気がついてたんだ?」
「えーと、今さっきです?」
「そうか、それにしては随分とタイミングが良いな」
「そうですね、私はタイミングが良い女ですから」

その言葉の一体どこに胸を張れる要素があるのか分からないが、とりあえず四葉の意識が戻ってホッとする。

ここで俺はこれまでの経緯を確認するため彼女に対して質問を投げた。

「それで四葉はどうしてここにいるのかは分かるか?」
「……そうですね、気づいたら凛君の背中だったのでよくは分からないです」
「少し前に聞いたときは意識が戻ったのがついさっきって言ってたような?」
「そ、それは完全に覚醒したときのことです! 意識が戻ってもしばらく動けませんでしたから」

完全に覚醒したうんぬんの話は置いておいて、意識が戻ってもしばらく動けなかったのは事実だろう。今の四葉は口の動き一つとっても非常にゆったりとしている。いつもなら今の二倍くらいの速度で話しているはずだ。

「話を戻すが、ということは意識がなくなる前後は何も覚えていないってことだよな」
「……そうなりますね」

倒れる前後のことを覚えていないということはつまり四葉が倒れる直前に言った告白のことも忘れているということなのだろう。一方的に彼女の秘密を知っているようでなんとなく悪いような、そんな罪悪感のようなものを感じていると彼女は横になったまま急にハッとした表情で俺を見た。

「でも一つだけ覚えていることがあります。それはそのもしかしたら夢の中かもしれないんですが凛君がその、私のことを好きって言ってくれたような、そんな感じで…………って私何言ってるんですかね、きっと妄想ですよね」

ハハッと乾いた笑いをした四葉に俺は彼女の目をしっかりと見て答える。

「妄想なんかじゃねぇよ……」
「……それってどういう」

混乱しているのだろう四葉はキョトンとした表情で俺を見ていた。意識が戻ったばかりの彼女を出来ればあまり刺激したくなかったが、ここまで言ったのならもう後には引けない。

「言葉通りの意味だ。今までそのはっきりとは言ってなかったけどな……」

最後の最後で恥ずかしさに負けそうになるが必死に堪えて俺は最後の一言を口にした。

「俺はお前が好きだってことだよ」

言葉が俺の口から離れた瞬間、保健室は静寂に包まれる。ドクドクと激しく鼓動する自分の心臓の音が俺の聴覚を支配する中、四葉は小さく、けれどもはっきりと聞き取れる声で言った。

「……私も好きです。好きに決まってますよ」

そんな独り言にも聞こえる言葉を発した四葉の表情は今までで見たことがないくらいに恥ずかしそうで、だが俺の目にはその表情がとても魅力的に映っていた。

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