俺の彼女がいつに間にかあざとカワイイ小悪魔どころか独占欲が強い魔王様になっていた件について
45.先輩の宣戦布告
それぞれに共通する流れはまず参加者全員でステージに上がってから自己紹介し、その後に一人ずつ参加者がステージに上がり評価員に対してお茶を入れる。参加者全員のお茶出しが終わった最後に一人五分間のアピールを行うという至ってシンプルなものだ。
だがミスターコンにはこれに加えてアピールタイムの最後に自分のお気に入りだったメイドを指名するという時間が設けられている。どうやらこれは指名された分だけミスコン参加者の評価ポイントに加算される仕様らしいのだが、どうしてそのようになったのかは分からない。もしかしたらこれは四葉の仕業なのかもしれない。
まぁそれは一旦置いておくとしてコンテストに重要な評価、これについては主に三つの重要なポイントがある。
まず一つ目が単純に格好が似合っているのかどうか。簡単に言えば可愛いとか格好いいとかそういうことである。そのため衣装もある程度の範囲までは自由にカスタマイズすることが許されている。
そして二つ目がどれだけ執事、メイドになりきれるかということ。これはどれだけ執事、メイドとしての所作を身に付けられているのかということ見る。これについてはどういった捉え方をしても許されている。例えば実際の使用人の所作でも、執事、メイド喫茶などでの所作でも良いということである。まぁつまりは所作がその人に合っていれば、相応しければ問題ないということだ。
最後の三つ目がアピールタイムで何をするのかということ。実はこれが一番重要で曲者だったりする。そもそもアピールタイムという時間が設けられているだけで何をアピールすればいいとかいうのは具体的に決まっているわけではない。だからマジックや大道芸をしても別に問題はない。しかし執事、メイドとしてのアピールの方が好ましい傾向にあるのは二つ目の評価ポイントを見れば明白であろう。
今回のコンテストのテーマは執事とメイド、つまりこれはコンテスト参加者の中で誰が一番執事、メイドとして相応しいかを決めるためのコンテストなのだ。
ざっと以上が事前にクラスメイトから仕入れた情報であるが、俺が万が一にでも優勝するには二つ目のどれだけ所作を身に付けられているのかと三つ目のアピールタイムで何をするかで評価ポイントを稼ぐしかなさそうである。
ミスコンのアピールタイムも終盤に差し掛かった頃、体育館ステージの舞台袖で考え事をしながらなんとなくミスコンの様子を眺めていると俺とは反対の舞台袖から見知った人がステージに上がってくるのが見えた。
「では次エントリーナンバー十番、月城冬華さん。ステージにどうぞ!」
司会の言葉と共にタイミング良くスポットライトが当たるステージ上に姿を現したのはメイド服姿の月城先輩。彼女が着ている衣装のスカート丈は長く、肌もあまり露出していないが不思議と男を惹き付ける大人な魅力を醸し出していた。その証拠に司会の顔が少し赤くなっているのが俺からでも見える。
「……えーと、では早速五分間のアピールをお願いします!」
司会がステージを後にすると月城先輩はまずコンテストを見に来ていた観客に向かって挨拶をした。
「御主人様方、本日は当コンテストにお越しいただき誠にありがとうございます」
その後に先輩は洗練された動きで一礼する。彼女の姿はまるで以前実際どこかに仕えていた使用人のようで、普段見慣れている彼女とは別人のように俺の目に映っていた。
一礼をした後すぐに押し黙ってしまった彼女の姿をじっと見ていると先程までずっと無感情だった彼女の表情に突然決意を感じさせるような表情が灯る。
「いきなりですが皆さんには私の話を聞いて欲しいと思います。……私はずっと現実に怯えていました」
月城先輩はそれから自分の過去、父親のことについて話し始める。観客の心に訴えかける作戦なのだろうとそう思って話を聞いていたその時、まさかのまさかで聞こえてきたのは俺のことを指すであろうあの代名詞だった。
「……そんなときに背中を押してくれたのが後輩君でした。今まで掛けられたことのない厳しい言葉で彼が私の目を覚まさせてくれた。だから私は今までずっと踏み出せなかった一歩を踏み出せた。感謝しているわ……」
途中から月城先輩がいつもの口調になっているのが気にならないほど俺は彼女の言葉に混乱していた。個人的に感謝を伝えるのならまだしも彼女はこの場──コンテストのステージ上で伝えた。それが一体何を意味しているのか俺には理解出来なかったのだ。
だが次の彼女の言葉が事実の全てを伝えていた。
「そう思っていたからかしらね。いつの間にか私は後輩君を好きになってしまっていたのよ。彼には返事をしなくてもいいとは言ったけどやっぱり取り消すわ。彼には私だけを見て欲しい。だからもしその気があるのなら私を選んで欲しい」
月城先輩はそう言い切ると静まり返った観客に向かって再度一礼し、舞台袖でステージの様子を見ていた俺の方へと歩いてくる。
「ごめんなさいね、勝手にこんな真似をしてしまって。でも私は間違ったことをしたとは思っていないわ」
通りすがりにそう呟くと先輩は控え室の方へとそのまま歩いていく。
きっと彼女は冗談でもなんでもなく本気で俺に返事を求めている。いや、どちらかというと四葉に対して宣戦布告をしているのだろう。
そして四葉はきっとこの宣戦布告を受けるはずだ。
「……俺は」
今まで俺は二人との関係を曖昧にしていた。誰も傷つかないように、二人と友好的な関係が保てるようにと俺は二人との関係について深く考えないようにしていた。
だがそれももう出来ない。二人のうちどちらかを選択しなければいけない。
これはただのコンテストではない。
言ってしまえばこれは四葉と月城先輩の戦争だ。
今この状況で四葉にあえて直球で勝負する。それが意味しているのはきっとこの戦いを曖昧にしたくない、決着をつけたい、そして何より後悔をしたくないという先輩の思いなのだろう。
その戦いに対して果たして俺は何が出来るだろうか。考えずともそんなのはとっくに決まっている。
俺がしなければならないのはただ一つ、二人のうちどちらを選ぶのか決断すること。
そうとは分かっていても体は正直なようで、次のミスコン参加者を呼ぶ司会の声とそれに伴う観客の歓声が聞こえてくる中、俺は無意識に震え出す自分の手をグッと力を入れて押さえ込むことしか出来なかった。
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