俺の彼女がいつに間にかあざとカワイイ小悪魔どころか独占欲が強い魔王様になっていた件について
36.先輩のお願い
「まぁ色々なことをな」
昼休み、孝太に相談を終えた俺は四葉と一緒に教室で遅めの昼食を取っていた。
目の前に小さな弁当箱を広げた四葉がいて、彼女の向かい側に俺が座るといういつも通りの構図である。
「色々ですか。ということはあれですね」
「……なんだ?」
もしかして四葉にプレゼントを送ろうとしていたのがバレたのかと焦るのも一瞬、彼女は俺の予想斜め上の言葉を放つ。
「……その、え、えっちなことを話していたんですよね。男の子二人が集まれば自然とそういう話が始まると前にお母さんから聞きました」
顔を若干赤らめながら、もごもご話す四葉は俺の目を見ようとはしなかった。
それにしても彼女の母親は一体何を娘に教えているのだろうか。他の家庭の教育方針には基本的に口出しするつもりはないが、俺に実害が出るなら話は別だ。ここは正しいことを教えておかなければならない。
「あのな四葉」
「はい何ですか? 凛君」
「男が二人集まっても必ずそういう話が始まることはない」
「そうなんですか?」
「そうだ、寧ろこんな真っ昼間からそういう話をするやつの方が少ない」
「はい」
「だからつまりだな。俺はさっきもそういう話はしていない、OK?」
これだけ言い聞かせれば大丈夫だろうと思ったのだが、ここで新たな問題が発生した。
「じゃあ凛君は一体何を話していたんですか?」
そう、先程誤魔化したつもりだった質問に戻って来てしまったのだ。
俺はとりあえず四葉から視線を逸らして考える。
「それはだな……」
ここで四葉のプレゼント選びも相談をしていたなんて言えないし、ここで誤魔化しでもしたら彼女にやはりそういう話をしていたのではと思われかねない。
ここで上手く話をでっち上げれば良いのだが、そうしようとして取った俺の行動は多分間違っていた。
「……そうあれだ、月城先輩のことについて孝太から聞かれたんだよ。先輩は一年の間だと人気あるだろ?」
「そうですか、私を放っておいて凛君は先輩のことであんなに楽しそうに話していたんですね、良かったですね」
地雷を踏んだ音が頭の中で聞こえたような気がして、咄嗟に声がした方へとついさっき逸らした視線を向けるとそこには笑みを浮かべた彼女……ではなく今まで見たことないほど悲しそうな表情を顔に浮かべた彼女がいた。
「……分かってます、私がいなくてもきっと大丈夫なんですよね」
違う、そう声を出したかったが言葉は彼女の予想外の反応に驚いてしまったためか喉の奥に引っ掛かって出てこない。
「……すみません、失礼しますね」
何も言えずにいると四葉は急いで自分の弁当箱を片して教室から出ていってしまう。教室から出ていく際に見えた彼女の目にはこの前の帰り際に見たのと同じものが浮かんでいた。
◆◆◆
放課後になっても四葉が俺の前に再び現れることはなかった。仕方なく一人で帰ろうと荷物をまとめていていると廊下から聞き慣れた声が耳に届く。
「ちょっといいかしら? 少しだけ話があるわ」
「分かりました」
廊下で俺を呼んだのは月城先輩、彼女のどこか真剣な表情に誘いを断ることなど出来るはずもなく、俺は荷物をまとめた後すぐに彼女のもとへと向かった。
そうして先輩のあとを付いていくこと数分、彼女はいつも通り図書室へと入っていく。
「とりあえずここに座ってくれる?」
図書室に入って早々月城先輩に指示された通り近くの椅子に座ると、反対側でも俺と同じように彼女が椅子に座るのが見える。いつになく緊張感が周囲を漂う中、静かに座った彼女は始めにふっと息を吐くとゆっくり話を始めた。
「まずいきなり呼び出したことを謝らせて欲しいわ、ごめんなさい。きっと祝さんを待たせているわよね」
「いえ、それについては大丈夫です。今日は一人で帰る予定だったので」
「そう、それなら丁度良いわね。流石にあなたが知らないっていうのもね」
「……何の話ですか?」
少しの嫌な予感と寒気が全身を駆け巡る中で疑問を口にすると、月城先輩は淡々と事実を告げた。
「祝さんの話よ。彼女、もしかしたら長くないかもしれないわ」
突然月城先輩から告げられた言葉を俺は理解することが出来なかった。長くないというのは一体どういうことなのかと。
「すみません、それってどういう……」
「本当に分からないのかしら?」
俺が発した言葉は途中で月城先輩の言葉に上書きされる。彼女は俺の嘘を見抜いていた。
そうだ、認めたくないだけで本当はもう分かっていた。四葉が一体今どのような状況にあるのか。
「……病気ですか?」
「体が弱いとは聞こえたけど、詳しくは分からないわね」
体が弱い?
そんな話は四葉から聞いたことがない。それに四葉本人を見ていても体が弱いという印象は一切感じなかった。ということは今まで俺に気づかれないようにずっと隠してきたのだろうか。
何故という疑問が頭の中に浮かんでくるが彼女のことだ、きっと心配をかけたくなかったとかなのだろう。
「長くないっていうのは具体的にどれくらいなんですか?」
「正しくは長くないかもしれないよ。彼女は文化祭が終わった次の日に手術を予定しているらしいの」
「だったら大丈夫じゃ……」
手術を予定しているなら大丈夫なんじゃないかと思ったが、月城先輩は首を横に振った。
「寧ろその手術っていうのが問題なのよ。成功確率は五十パーセント、確かそう言っていたわ」
成功確率が五十パーセントということは失敗する確率も五十パーセントある。
何も言葉が出てこなかった。今まで四葉が一体どんな気持ちで生活してきたのかということを思うと彼女に対して何か言うこと自体おこがましく思えた。
「だからというわけじゃないけど、文化祭が終わるまでの間は彼女のために時間を使ってあげて欲しいの」
月城先輩は最後に『呼んで早々だけど私は行くわね。あとこれは祝さんからたまたま聞こえてしまった話だから彼女には内緒よ』とだけ言い残すと図書室を去っていく。
一方の俺はというとその場から動くことなく図書室からただ意味もなく空を眺めていた。
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