俺の彼女がいつに間にかあざとカワイイ小悪魔どころか独占欲が強い魔王様になっていた件について
10.策士な彼女
「さぁ早く帰りましょう、凛君。暗くなると色々危ないですからね」
「それはそうだけど良かったのか? 先輩をあのまま置いてきて」
気になるのは月城先輩のこと、彼女は四葉に協力を破棄されてからずっと放心状態だったのだが、四葉に言われるがまま置いてきてしまったのだ。流石に心配しないわけにはいかないだろう。
「逆に聞きますけど凛君はあのお願いを聞きたかったんですか?」
「そんなことはないけれども……」
「だったらいいじゃないですか。私は断ったんです。相手がなんて言おうとそれで終わりです」
明らかにご立腹な様子の四葉にもしかして怒ってる? など聞けるはずもなく、俺はそのまま言われたことを飲み込むしかない。一体彼女が何に腹を立てているのか理由は分からないが、女心はとにかく難しいということは充分に理解することが出来た。そんなこんなで帰りの準備を進め、四葉と一緒に帰路に就く。外は既にオレンジ色に染まっていた。
「今日は不幸なことあんまり無かったな」
そういえばと思い出したように小さな呟けば、隣で歩く四葉は『そういえばそうかもしれないです』と少し驚いた様子で答える。彼女にとっては不幸が日常で、逆に不幸でないことの方が非日常なのだろう。
「この前の土曜日も特に何も無かったし、やっぱりイメチェンして体質が変わったのかもな」
「いえ、まだ私の体質は治ってません!」
「そ、そうか……」
「はい、私はまだ現役バリバリの不幸少女です」
「自分でそれを言うか」
「事実ですから、何もおかしくないです」
何故かムキになる四葉にとりあえず『そうか』とだけ返しておく。きっと彼女にも何か譲れないものがあるのだろう。
それからしばらく世間話をしているといつの間にか家に着いていた。
「じゃあ俺はここで」
「はい、また明日です」
今日が四葉がイメチェンをしてから初めての学校だったが、以前の彼女よりもクラスに馴染めていた感じはある。この調子で体質の方も改善されれば良いと素直にそう思った。
そして次の日、学校に登校すると見覚えのある人物が昇降口の前に立っていた。立っていたのは昨日四葉を体育館裏に呼び出した月城先輩。彼女は俺達を見つけると声をかけてくる。
「ちょっとあなた達、いいかしら?」
その言葉に隣の四葉は若干嫌そうながらも立ち止まる。それに合わせて俺も止まると、月城先輩はホッと息を吐いた。それにしても昨日からであるが四葉の月城先輩嫌いが激しすぎる気がする。昨日呼び出されるまではいつも通りだったので体育館裏で会ったときに何かあったはずなのだが、俺が気づかなかっただけで喧嘩でもしていたのだろうか。とにかく四葉が月城先輩を嫌っている様子を見るのも気分として良くない。ここは一旦俺が話をした方が良いだろう。そう思って月城先輩に話しかけたのだが……。
「もしかして昨日のことですか? それなら……」
「こ、こ、こ、後輩君じゃなくて、わ、わ、わ、私は祝さんに話しかけているのよ!」
彼女はかなりど、ど、ど、動揺していた。俺を人間を見るような目付きではなくまるで獰猛な獣を見るような目付きで見る彼女はそれから自分の肩を抱き締めて一歩後退りする。昨日聞いたように彼女が男性恐怖症だということは分かっているのだが、女性に会話をすることまで拒否されると流石の俺でも傷つく。それでも表情には出さず苦笑いという名の笑みを浮かべていると月城先輩は続けて『ひぃいい!?』という叫び声を上げた。
「その笑顔、もしかして後輩君は私を見て色々なことを想像してるのかしら。想像の中で私のことをあれやこれやして、ずっぽりしっぽりしてから滅茶苦茶にして……」
「あの、先輩?」
考えが飛躍しすぎだと訂正しようとするが月城先輩は俺の言葉など聞こえていないようで……。
「そんなの変態だわ、超がつくほどの変態よ。きっと家に帰ってからも私で何度も……」
「聞こえてますか?」
「そして想像で我慢できなくなった君はついにこの私を手にかけるのね」
もう月城先輩は誰にも止められなくなっていた。一人自分の肩を抱き締めてあれこれ口走る彼女は俺と目が合うと再び『ひぃいい!?』と甲高い叫び声を上げる。それを最後に彼女は『このケダモノー!』と叫びながら校舎の中へと入っていった。結果的にこれで月城先輩との面倒事を避けられたということなのだろうが、何故だろうか新たな面倒事を生み出してしまった気がしなくもなかった。
「凛君、よくやりましたね。撃退成功です」
声がした方を見るとそこでは四葉が満足げに頷いていた。しかし彼女はその後すぐに顔を赤くすると俺から顔を背ける。
「もしかして凛君は私でも色々考えてたりするんですか?」
「いやあれは先輩が勝手に想像してただけで俺は何も想像してない! そう、断じてない!」
決してそんなことはないと四葉に力強く訴え掛けたのだが、彼女は何故か不満げな様子だった。そうまるで拗ねているような、そんな感じである。
「そうですか、そんなにはっきり断言するほど私には魅力がないんですね」
「いやそういうわけじゃ……」
「いえ、そういうことですよ。現に凛君は私で色々考えてたりしないんですよね」
「そりゃそうだろ。俺は変態じゃないからな」
「嘘です。男の子なら多少エッチなことを考える程度が健全だってお母さんから聞きました」
なんてことを娘に教えているんだと心の中で四葉の母親に突っ込みを入れている間にも四葉は言葉を続ける。
「……ということはやっぱり私には魅力が全くないんですよね。薄々気づいてはいましたけどやっぱり傷付きますね」
明らかに落ち込んだ様子の四葉はふらふらと体を揺らしながら校舎の中へと入っていこうとする。そんな彼女の姿に俺は自然とため息を吐いていた。だってそうだろう、こんなの普通にずるい。
「まぁ四葉で変なことは考えたことはないけど普通に魅力はあると思うぞ。えーとなんだ、四葉が良かったら今度どこか遊びに行かないか? 嫌だったら良いけど」
励まそうとしてなんかナンパっぽくなってしまったが今さら口から出た言葉を訂正することなど出来ない。そんな中で俺の言葉を聞いた四葉はゆっくりとこちらの方に顔を向けた。
「いえ、嫌じゃありません。行きましょう」
「そうか、分かった」
一先ず四葉のネガティブ思考が治ったと安堵するも一瞬、彼女は続けて遊ぶ日にちの提案をしてくる。
「じゃあ再来週の土曜日はどうですか?」
「その日は多分大丈夫だな」
「では後で行く場所を一緒に考えましょう」
「分かった、一緒に考えよう」
「約束ですよ?」
「ああ」
……ってあれ? 励まそうとしていたはずがいつの間にかデートの約束みたいなことをしている。慌てて四葉の顔を見るが、彼女は少し嬉しそうに微笑んでいるだけで何かを企んでいるような様子は見受けられない。あまりのテンポの良さにもしかしたらこれは仕組まれていたことなのかとも思ったのだが俺の考えすぎだったようだ。
「凛君、デート楽しみですね」
そう、きっと考えすぎなのだろう、多分。
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