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俺の彼女がいつに間にかあざとカワイイ小悪魔どころか独占欲が強い魔王様になっていた件について

サバサバス

7.少し遅めの高校デビュー

月曜日の朝、いつも通り家を出ると家の前では四葉が待っていた。彼女はどこからどう見ても普通の美少女にしか見えなくて、以前の不気味な彼女を知っている俺ではすぐに気づくことが困難だった。

「あ、おはようございます。凛君」
「おはよう、いつから待ってたんだ?」
「いつからってそんなに待ってないですよ。ほんの三十分くらい前からです」
「いや世間一般ではそれを結構待ってるって言うんだけどな」
「ですけど凛君がいつ家から出てくるのか分からなかったので」
「メッセージを使って聞こうとは思わなかったのか?」

そう言うと四葉はハッとした表情になる。それから少しの間の沈黙、この反応を見る限りだと彼女の頭にはメッセージを送るという考えはなかったらしい。

「……すみません、完全に頭から抜けていました。次回からそうしますね」

女の子、それも美少女に優しい笑顔を向けられて平気な男などいるはずがない。もちろんそれは俺も例外ではなかった。

「まぁ仕方ないか。ついこの間使い始めたばっかりだしな。それとこれは忠告なんだが家族以外の人に笑顔は控えた方がいい、特に男に対してはな」

うっかり好意を持たれていると勘違いさせるから気を付けろよ、という意味で言ったのだが四葉は違う受け取り方をしたらしく途端に悲しそうな表情をする。

「そんなに私の笑顔は見ていられないほど怖いですか?」
「いや、そういうことじゃなくてだな」

咄嗟に自分の顔を隠す四葉にそんなことはないと慌ててフォローに入るが彼女の表情は変わらない。

「……だったらどういうことなんですか?」

言うかどうか迷ったが結局言うことにした。マイナスな捉え方をされたままよりは俺が少しだけ恥ずかしい思いをして彼女に真実を知ってもらった方がいいと思ったのだ。

「えーとなんだ。四葉の笑顔は男だと好意を持たれてるんじゃないかって勘違いするから好きでもない人に見せないように気を付けろよって意味で言ったんだ。別に四葉の笑顔が怖いだとかそういう意味では決してないからな」
「……そ、そういうことだったんですね。言わせてしまったようですみません。でも、そうなると凛君も勘違いしたということになるんですけど、そうなんですか?」

思春期の男子高校生になんてこと聞いてるんだよと思ったが、この際恥は変わらない。『ああ、そうだよ』と四葉に聞こえるか聞こえないかくらいの声量で言葉を発する。出来れば聞こえて欲しくなかったのだが、どうやらバッチリと聞こえていたようで彼女は恥ずかしそうに下を向いた。

それから少しして彼女は顔を上げると、何かを決心するよう静かに宣言する。

「……安心してください、好きでも何でもない人には絶対に笑顔は見せないですから」

そう宣言する四葉の顔は少し恥ずかしそうながらも先程と同じような笑みを浮かべていた。今の宣言は一体どこに行ってしまったのか、ただの天然なのか分からないが、今後のことを考えるとため息を吐かずにはいられなかった。


とにかくその後は何事もなく無事学校の校門前へとたどり着いていた。しかし、学校に着いたからといって安心は出来ない。そう思って前方はもちろん、後方、左右を時々安全確認していると隣から若干呆れたような声が聞こえてきた。

「……どうして凛君がそんなにビクビクしてるんですか」
「それはまぁ用心するに越したことはないからな」
「用心しても不幸は突然やって来ます。あまり気負わない方がいいかと」
「流石慣れてる人は違うな」
「慣れてるですか……本当はそうならないのが一番いいんですけどね」

四葉はそう言って笑うがその笑顔はどこか諦めたような雰囲気を帯びていて、なんとなく彼女に悪いことをしてしまったような、そんな気分だった。せめてもの罪滅ぼしに微妙になってしまった空気を何とかしようと別の話を振ろうとしたのだが、先に彼女から話が振られる。

「そういえば今日は何もなかったのになんだかいつもより見られているような気がするのですけど……」
「ああ、それは普通に見られてるからじゃないか」
「どうして見られてるんです?」
「どうしてって言われてもな……」
「……それってやっぱり私の髪がおかしいからですか?」

四葉はその言葉と同時に自分の前髪を手で押さえる。どうしてそう彼女はいつもネガティブな方向に考えてしまうのか個人的には疑問だったが、だからといってすぐに自分が美少女だから見られていると気づくのもおかしな話だ。そもそも普段から言われ慣れている人でないとそういう考えにはならないだろう。そうすると彼女がネガティブな考えをするのは必然的なことなのかもしれない。ただ彼女の場合は少し過剰な気もするが。

「前にも言ったと思うけどおかしくはない。寧ろ似合ってるから見てるんだろ」
「……似合ってるのに何故見るんですか。似合ってるということは周りに溶け込めているということですよね?」
「それは一概にも言えないというか美少女だったら話が別なんだろ」
「……そこでどうして美少女が出てくるんですか?」
「だって美少女だろ?」

そう言って四葉を指差せば彼女は『何を馬鹿なこと言ってるんですか』と顔を背ける。先程からそうだとは思っていたが彼女に自分が美少女であるという自覚は全くないらしい。

「とにかく教室に行けば分かる」
「……そこまで言うならとりあえずはそういうことで納得しておきます。でも絶対凛君の勘違いだと思いますけど」

それから教室へ行くとやはりというべきか、当たり前のように四葉へと教室中の視線が集中していた。まだ部活の朝練終わりのクラスメイトしかいないがそれでも今のところ全員が彼女の方を見ていた。

「……ど、どうして全員私のことを見るんですか?」

四葉に耳元で助けを求められるが俺にはどうすることも出来ない。

「とりあえず自分の席に座ったらどうだ? 少しは落ち着くかもしれないぞ」
「それもそうですね、アドバイスありがとうございます」

四葉はキョロキョロと周りの視線を気にしながら自分の席へと向かう。時折こちらを見てくる姿はとても助けて欲しそうであったが、これからはその視線が当たり前になるのだ。視線に慣れてもらうためにも俺は彼女を黙って見守っていることにした。

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