俺の彼女がいつに間にかあざとカワイイ小悪魔どころか独占欲が強い魔王様になっていた件について
5.週末の訪問①
「土曜の昼に一体何の用事だよ」
てっきり孝太がまた訳の分からない用事でかけてきたのかと思ったのだが、彼なら電話ではなくSNSを使うはず、それに画面に写し出されていた着信履歴は彼のものではなかった。画面には全く知らない着信履歴が表示されていて、しかも着信履歴に表示されていた電話番号からは四十分前から十分おきくらいで電話がかかってきていた。もしかして詐偽か? と思ったのも一瞬、突然電話の着信音が部屋中に鳴り響く。その音で慌てて通話状態にすると携帯の向こうから少々遠慮がちな声が聞こえてきた。
『もしもし、凛君ですか?』
「そうだけど」
聞こえてきた声に四葉だったかと一先ず知っている人で安心していると、続けて彼女から申し訳なさそうな声が聞こえてくる。
『突然で本当に申し訳ないのですが、今凛君の家の前にいまして……』
「……すまん、あともうちょっとだけ待っててくれ」
通話を切った後はベッドから飛び起き、素早く身支度を始める。一体四葉はいつから待っていたのだろうか、電話の着信を見る限り最低でも四十分は待たせていたことになる。それにどうして俺の電話番号を知っているのか。色々気になることが頭の中に浮かんでくるも今はそれを考えている余裕はないと全て切り捨てる。そうしてようやく身支度が終わり急いで玄関の扉を開けるとそこには……。
「誰もいない?」
誰もいなかった。その代わり道路を挟んで家の向かい側にある歩道には黒髪のショートボブとパッチリとした目が印象的な美少女が立っていた。もしかして四葉か? とも思ったのだがあまりにも印象が違い過ぎて別人にしか見えない。しかしその美少女は俺を見ると何故か安心したようにこちらへと近づいてきた。
「突然来てしまってすみません、凛君」
その美少女の声を聞けば、それが誰であるかすぐに理解することが出来た。声を聞く限り彼女はクラスで不気味だというレッテルを貼られた祝四葉、本人なのだろう。
「いやそれは気にしなくていい。それよりも……」
「……やっぱりこの髪型似合ってないですよね」
四葉は少し悲しげな笑みを浮かべて下を向く。どうやら彼女はまだ自分の格好に慣れていないようだった。
「いやそんなことはないと思うぞ。普通に似合ってる」
「普通ですか……ありがとうございます、凛君」
どことなく嬉しくなさそうだったので言い直せば……。
「やっぱり今のは嘘だ。その髪型、四葉にすごい似合ってる」
「……あんまり気を使わないで下さい。でもありがとうございます」
今度は素直に笑みを溢した。それにしても四葉は変わりすぎだった。元々顔が整っているとは思っていたが、ただ髪を切っただけでこんなにも変わるとは思いもしなかった。
「……凛君? どうしたんですか? ボーッとして」
「いやなんでもない。それで今日はイメチェンしたことを報告しに来たのか?」
「それもありますが、他にもちょっとやることがありまして」
「他にやること?」
「はい、なので家に上げてください」
「何で家に上げる必要が?」
「家に上がらないとそれが出来ないからです」
少々抵抗するも四葉からは一向に諦める様子が感じられない。正直今は前回彼女を家に上げたときから更に服とかゴミ袋とか散らかっているので誰も家に上げたくなかったのだが、この調子だと押しきられそうであった。
「分かった。分かったから少し時間をくれ」
「少し時間をくれって大体どのくらいですか?」
「えーと大体三時間くらい?」
「それだと夕方になっちゃうじゃないですか! もう分かってますから早く凛君の家を掃除させてください!」
四葉としては掃除がしたくてうずうずしていたらしく、これでもかというぐらいに顔を近づけてくる。一方の俺はというと何故言ってもないのに家の中が散らかっていることがバレたのかということよりかは、彼女の顔が近いということの方が気になっていた。
「わ、分かったから。上がっていいから少し離れてくれ」
あまりにも近すぎて少し強引に四葉を引き剥がせば、彼女の方から『確かに少し強引でしたね』という反省の言葉が聞こえてくる。強引だったことが彼女を引き剥がした理由ではないのだが、顔が近くて恥ずかしかったなど言えるはずもなく黙って頷くことにした。
「じゃあよろしくお願いしますね、凛君」
掃除することを了承してしまった手前、何も言えず四葉を家に招き入れると彼女は早速顔を顰めた。多分彼女は玄関に積まれた大量のゴミ袋を見たのだろう。
「この前シャワーをお借りしたときからまだ数日しか経っていないと思うんですが」
「これは最近忙しくて。ちょっとゴミ出しが手につかなくてな」
「ゴミが捨てられないほど忙しいとなると、よほど凛君は忙しいんですね」
「……うっ」
「それにしては今の今まで寝てたようですけど」
「……うぐっ」
四葉の言葉が深く心に突き刺さっていた。実のところただ面倒なだけでゴミを積んでいただけに彼女の言葉には何も言い返せなかった。
「まぁ最初からこうなっていることを予想して掃除しに来たので私としては散らかっていてくれた方がやりがい的にありがたいですけど」
「最初から予想していたって、四葉はエスパーか何かなのか?」
「凛君は自分の家の洗面台とか気にしたことありますか?」
「そりゃ毎日使ってるから気にして……」
いや待てよ、そういえば気にしたことはあまりない。いつもならば歯磨き粉やら歯ブラシやらそこらへんに置きっぱなしで、鏡に至っては長い間掃除すらしていない。ということは四葉にシャワーを貸したときもそうだったわけで、それはつまり彼女に酷い有り様の洗面台をお見せしたということだった。
「ちゃんと掃除する人は水回りが綺麗なんです」
「それはなんというかお見苦しいものをお見せまして」
なんとなく謝罪すれば彼女から厳しい一言が飛んでくる。
「謝罪はいいですから早く掃除しましょう。今日中に全部終わらせますよ」
腕捲りする四葉はいつになく張り切っていて、それに対して俺はきっと彼女は汚れを見つけたら見逃せないタイプなんだなと、どうでも良いことを思ったりしていた。
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