俺の彼女がいつに間にかあざとカワイイ小悪魔どころか独占欲が強い魔王様になっていた件について
3.災難は続く
「すみません、シャワーありがとうございました」
「ああ、気にするな」
なんとなく今の会話が付き合いたての彼氏彼女がする会話のようで恥ずかしくなって彼女から目を逸らすと、彼女は少し慌てた様子でこちらに近づいてくる。
「だ、大丈夫ですか? 顔が赤いようですけど……もしかしてさっきので風邪を引いて!? 本当にすみません!」
「あ、いやこれは違う。なんというかそういう体質なだけだ。それよりもそろそろ学校に行かないと遅刻するんじゃないか?」
苦し紛れの言い訳と共に時計を指で差すが、彼女はそれでもこちらを心配する。
「本当に大丈夫なんですか?」
彼女からの問いかけに首を一度縦に振れば、彼女も『分かりました』と首を縦に振る。これでようやく俺が大丈夫であると納得してくれたと思ったのだが、どうやらそういうわけでなさそうだった。
「それなら一緒に学校に行きましょう。やっぱり心配です」
なんとなく断れそうにない雰囲気にこの提案を受け入れると彼女は安心したようにホッと息を吐く。そもそも断る理由などもとからないので今の返事は自然なのだが、何故だか少しだけ恥ずかしさが込み上げてきていた。
こうして登校したのは良いものの、今の時間帯に二人ジャージで登校することは悪い意味で人の注目を集めていた。学校へと近づく度に人に注目されるので居たたまれなくなって祝四葉の方へと助けを求めるように顔を向ければ、彼女の方は平然としていた。いつもジャージなのでもしかしてこういうことには慣れていたりするのだろうか?
「祝さんはこの状況なんともないのか?」
そう思って聞いてみれば彼女はガガガッと首から音がしそうなほど固い動きでこちらへと顔を向けた。そして一言。
「精神統一は私に強い忍耐力を与えてくれます」
どこかの英文を日本語訳したような言葉と感情がないロボットのような声を聞けば、全て察するのにそう時間はかからなかった。要するに彼女にとってこの状況はなんともあるということなのだろう。彼女も俺と同じだと彼女のおかげで少し落ち着くとふと脳裏に彼──飯島孝太の姿が浮かぶ。もしこのまま教室に行ったら孝太にこのジャージ姿のことを説明させられることは間違いない、それは確実。しかし説明の中で祝四葉を家に上げたなど言えば、あらぬ誤解のオンパレードだ。そういうわけで問題の部分を色々と捏造して誤魔化さないといけないわけだが孝太に説明するのは少々、いやかなり面倒臭かった。
とは言っても授業をボイコットする勇気などなく教室にたどり着けば、クラスメイト達から注目の視線を浴びる。その中でただ一人──飯島孝太は興味津々でこちらに近づいてきた。
「おはよう、凛」
「おはよう」
「で、どうしたんだそれ」
「話さなきゃいけないか?」
もう面倒だからこれ以上は聞くなという意味を込めてそう言ったのだが、孝太は気にも留めずに『もち』と首を縦に振る。どうやら話さなければ彼からは解放されないようだった。
「家出た瞬間車に水をかけられた」
こうなったらと出来るだけ簡潔に一言で済ませようとするが、孝太が納得することはない。寧ろ『本当のこと言って良いんだぜ、親友だろ?』ともっと面白い話が飛び出してくるのではないかと期待の眼差しをこちらに向けていた。仕方なく若干事実を捏造して話そうとしたのだが、そのときどこからかついさっきぶりくらいで聞いたことのある声が聞こえてきた。
「ちょっと待って下さい! そうなってしまったのは私のせいで彼は何も悪くないんです。だからどうか彼を責めないであげてください!」
突然の大声に視線を向ければ、そこにはつい先程まで一緒にいた祝四葉がいた。教室に入る直前別れたのだがどうやら今の話は聞こえてしまっていたようだ。ただ聞いていたのは話の一部だけのようだが。
「なんだって祝さんが!? おい凛、これは一体どういうことなんだよ?」
「えーとこれはまぁ色々あってだな……」
孝太の疑問は最もだがそれよりも今は彼女が大声をあげたせいでクラスメイトの注目が全て自分と孝太、祝四葉に集まってしまっていた。どうにも今より更に面倒なことになる気がして彼女に一先ず落ち着くように声をかけるが彼女には聞こえていないようで、ついに彼女は言ってはいけないことまで口にしてしまう。
「彼は良い人です。だって汚れた私にシャワーを貸してくれたんですから!」
突如として静まり返るクラス内、彼女の言葉に『あれ、なんか言葉足らなくない?』と思ったのも一瞬、いきなり背中に強い衝撃を感じる。見るとそれをやったのは孝太のようで、彼はやけにニヤニヤとした笑みを浮かべていた。
「ほう、なるほどそういうことか。良かったじゃないか、凛。ようやく男の階段を一歩上がれたな。でも汚すのはどうかと思うぜ」
「いや、違う! 今のはきっと言い間違えただけなんだ。そうだろ? 祝さん」
孝太に言ってやってくれとその一心で祝四葉の方を見るが、彼女はただ首を傾げるだけだった。
「えーと、違うんですか?」
ここで来たまさかの天然発言についてはもうどうすることも出来なかった。それによく見れば周りの人達はヒソヒソとこちらを見て会話をしていた。多分その会話は今のこの状況についてなのだろう。
「いい加減認めたらどうなんだ? お前と祝さんは付き合ってるんだろ?」
「違うんだ、まずはちゃんと俺の話を聞いてくれ!」
「ほう、どんなのろけ話を聞かせてくれるんだ? 凛」
どうにも収拾がつかなくなったせいか、もうほとんど投げやりだった。
「ああ、そうだよ! 俺と祝さんは付き合ってるよ! 悪いか!!」
だからこんなことを口走ったとしてもおかしくはなかった。寧ろ口走っていた、しかも大声で。再び静まるクラス内、視界の端には顔を真っ赤にして下を向く祝四葉の姿が映っていた。
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