カラード
薔薇色の瞳の少年(2)
こっちだよ、と部屋を出るベネッタに、カイルはスマートフォンをズボンのポケットにしまって、リュックサックの中からノートパソコンを取り出し、急いで着いていく。
階段を下りながらノートパソコンを開いて電源を入れる。振り返ったベネッタがカイルの行動にちょっと不思議そうな顔をしたが、結局何も言わず歩みを進めた。
先ほどの深緑色の髪の女性が演奏を続けるソファの脇を通り過ぎ、ラタンの仕切りで区切られた空間に辿り着く。
そこでは床にあぐらをかいて、明るい黄緑色の頭髪の男の人が、ノートパソコンで誰かと通話しながら、壁際のボックスの中身をごちゃごちゃといじっているところだった。
「あれ。メイいないや」
ベネッタが声を漏らす。すると、黄緑色の頭の男性が振り返り、あー、と声を発する。通話の相手に「ちょっと待ってて」と言い、彼はベネッタとカイルに首を向けた。
「ベネ、ありがとう。メイいま鵬さんと出てる。―その子がブランク?」
「そう。いま大丈夫だった?」
「いいよ。むしろこっち事案なのに任せてごめん。メイに頼まれたんだろ」
「そそ。―カイル、彼が、キュビー。うちのITデパートメントの部長」
ベネッタが紹介すると、キュビーが微笑む。「キュビーだ。よろしく」
右目は何やら特殊な造りの顕微鏡で覆われているが、左目が柔らかく撓んだ。作業中だからか、さくらんぼのような赤玉ふたつのゴムで前髪を結わえている。
カイルはノートパソコンに保存しておいたテキストを開く。くるっとパソコンを反転させ、キュビーに向ける。
《はじめまして、カイル・スヴェリエスキといいます。よろしくお願いします! カイルと呼んでもらえたら嬉しいですヽ(≧▽≦)ノ お肉は食べられません(/ _  )》
「……」
キュビーとベネッタがじっと、カイルが見せた画面の英文と謎の顔文字を読む。
「……おう。英語、喋るの苦手?」
「…人と、喋るのがあんまり」
ぽそぽそと小さな声で言うカイルに、分かった、とキュビーは頷いた。「そのへん、適当に片付けて座ってていいよ。こっち終わったら声かける。少し話そう」
キュビーの指示にカイルはこくん、と従って、雑然としたデスクの一角にノートパソコンを置くスペースをつくる。
「それじゃ、わたしはこれで」
「うん。助かった」
手を振って去るベネッタにキュビーは礼を言い、またパソコンの通話相手と話し始めた。
―やさしそうな人で良かった。
忙しそうな背中を横目に見つつ、カイルは広げたノートパソコンで付近の無線LANの状況を確認する。
おそらくキュビーがいま使用しているらしきSSIDがひとつ、『free_boat_inn』というものがひとつ、それから一台、誰のだか知らないがパスワードなしのアクセスポイントがいる。さすがに非暗号化のまま接続するのは怖いので、カイルはほかふたつの認証方式を確認する。こちらはセキュリティ強度もかなり高そうだ。
『free_boat_inn』はベネッタやキュビーに聞けばパスワードを教えてくれそうだが、わざわざ聞くのも面倒なので、カイルは結局自分のスマートフォンにテザリングしてインターネットに接続することにした。
階段を下りながらノートパソコンを開いて電源を入れる。振り返ったベネッタがカイルの行動にちょっと不思議そうな顔をしたが、結局何も言わず歩みを進めた。
先ほどの深緑色の髪の女性が演奏を続けるソファの脇を通り過ぎ、ラタンの仕切りで区切られた空間に辿り着く。
そこでは床にあぐらをかいて、明るい黄緑色の頭髪の男の人が、ノートパソコンで誰かと通話しながら、壁際のボックスの中身をごちゃごちゃといじっているところだった。
「あれ。メイいないや」
ベネッタが声を漏らす。すると、黄緑色の頭の男性が振り返り、あー、と声を発する。通話の相手に「ちょっと待ってて」と言い、彼はベネッタとカイルに首を向けた。
「ベネ、ありがとう。メイいま鵬さんと出てる。―その子がブランク?」
「そう。いま大丈夫だった?」
「いいよ。むしろこっち事案なのに任せてごめん。メイに頼まれたんだろ」
「そそ。―カイル、彼が、キュビー。うちのITデパートメントの部長」
ベネッタが紹介すると、キュビーが微笑む。「キュビーだ。よろしく」
右目は何やら特殊な造りの顕微鏡で覆われているが、左目が柔らかく撓んだ。作業中だからか、さくらんぼのような赤玉ふたつのゴムで前髪を結わえている。
カイルはノートパソコンに保存しておいたテキストを開く。くるっとパソコンを反転させ、キュビーに向ける。
《はじめまして、カイル・スヴェリエスキといいます。よろしくお願いします! カイルと呼んでもらえたら嬉しいですヽ(≧▽≦)ノ お肉は食べられません(/ _  )》
「……」
キュビーとベネッタがじっと、カイルが見せた画面の英文と謎の顔文字を読む。
「……おう。英語、喋るの苦手?」
「…人と、喋るのがあんまり」
ぽそぽそと小さな声で言うカイルに、分かった、とキュビーは頷いた。「そのへん、適当に片付けて座ってていいよ。こっち終わったら声かける。少し話そう」
キュビーの指示にカイルはこくん、と従って、雑然としたデスクの一角にノートパソコンを置くスペースをつくる。
「それじゃ、わたしはこれで」
「うん。助かった」
手を振って去るベネッタにキュビーは礼を言い、またパソコンの通話相手と話し始めた。
―やさしそうな人で良かった。
忙しそうな背中を横目に見つつ、カイルは広げたノートパソコンで付近の無線LANの状況を確認する。
おそらくキュビーがいま使用しているらしきSSIDがひとつ、『free_boat_inn』というものがひとつ、それから一台、誰のだか知らないがパスワードなしのアクセスポイントがいる。さすがに非暗号化のまま接続するのは怖いので、カイルはほかふたつの認証方式を確認する。こちらはセキュリティ強度もかなり高そうだ。
『free_boat_inn』はベネッタやキュビーに聞けばパスワードを教えてくれそうだが、わざわざ聞くのも面倒なので、カイルは結局自分のスマートフォンにテザリングしてインターネットに接続することにした。
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