アルカフィル・パブリック・スクール

小鳥遊

第2夜 目覚め

次に目が覚めた時、フカは一目で高級品と分かる白いふかふかのベットに寝かされていた。フカは周りを見る。白と金を基調とした調度品の数々。ほんのりと香る紅茶の匂い。開け放された窓からの風がフカの灰色の髪を揺らした。
どうやらここは病院ではないらしい。

フカは慎重に体を起こした。

…痛くない。それどころか、今にも走り出せそうなくらいに体が軽い。
嬉しくなってフカは思わずベットから飛び降りた。そして、半透明になった脚を直視してしまった。

フカは絶叫した。


数十分後、フカは飛ぶように現れたこの屋敷のメイド、マリアに強引に寝かされーーベットに叩きつけられたと言ってもいいかもしれないーーに自分がもうこの世に居ないことを知らされた。

思わずフカは同じく強引に握らされたカップを落としかけた。
「そう…なんだ、じゃあ僕がいるここはどこなの?」
「ここはアルカディア、いわゆる理想郷と呼ばれている所です。」
「理想郷?」
「現実は理想郷なんて可愛いもんじゃ無いですけどね、つまりはあの世です、あ、の、世」
「あの世…じゃあ僕はやっぱり死んでるのかな?」
「いえ、あたしはこの世に居ないって言っただけで死んだなんて一言もいってないですよ。」
フカは目眩がした。
「じゃあ僕は生きているのにあの世に居るってこと?なんで?」
「この世に居られなくなったからですよ、よく言う幽体離脱っていうやつです。」
フカは貧乏揺すりが止まらなくなっていた。

僕が幽体離脱?そんなわけない。これは何かの間違いだーー

その時、重厚そうな扉が微かな音を立てて開いた。フカが振り向くとそこには愛猫、デルタがいた。

「デルタ!!!!」
フカはマリアの制止を振り切ってデルタを抱きしめた。マリアは仮にも病人なのにーー事故のトラウマがーーとか言っていたが聞こえないフリをした。
デルタに頬ずりしていると、デルタはにゃーーーと鳴いて、するっとフカの手からすり抜けた。
「あら、出荷前のブタの鳴き声ですか?」
マリアは人生で今が最高の瞬間だと言わんばかりの顔をしていた。笑いが止まらないようだ。
「違う!この世じゃこれが猫の言葉なの!」
あと君の感性狂ってるね!?」
「いやーご主人様がそんな声出すなんて、全メイドに報告しちゃうところでしたよ。」
「だいぶ悪意あるね!悪意まみれだねそれ!」
デルタとマリアが言い合ってる間、フカは猫の頬ずりしている体勢のまま固まっていた。
デルタが喋ってるーーいや、死んだはずではーーフカはグルグルした思考のまま2人を呆然と見つめていた。

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