アルカフィル・パブリック・スクール

小鳥遊

第1夜 その少年は…

薄暗い部屋。

仄かに周りを照らす燭台。

微かに分かる絢爛な装飾。

豪奢な椅子には少年が一人。

細くしなやかな指先がページをめくり、紙の擦れる音が僅かに部屋に響く。

ほぅ、と少年は息を吐く。

そして一言、

「わっかんねぇんだよ何だよどいつもこいつも気難しいこと書きやがって!!!!!!しかも内容はすっからかんだと!??僕の3時間を返して欲しいものだね!!うすらデブ!!!!」


…少年はたいそう口が悪かった。




…遡ること数年前、少年は学校を抜け出し、大急ぎで家に帰ろうとしていた。
愛猫のデルタが危篤だとメールが入ったのだ。

なんで、なんで、なんで…

少年の頭はそのことで一杯だった。

だって余命はあと2週間はあると…
今朝だって元気だった…
今日はご飯も食べてくれた…

乱雑な思考を振り切って少年は走る。

焦る思考と脈打つ心臓のせいで足がふらつく。

そして、角を曲がった瞬間、全身に強い痛みが広がり、自分が跳ね飛ばされたのを感じた。

不思議と痛みは無かった。
ただ、少しづつ意識が溶けていくのを感じた。

少年は自分がデルタの最期に間に合わない事を悟った。

そして少年の意識は消えた。

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