少年兵と学園生活

アート

プロローグ

 ここは両国の国境付近、傭兵部隊駐屯地

「隊長!!大変です!」

「どうした?
こんな昼間に新しい仕事か?」

部下の慌てた態度に冷たい態度で返す
黒髪の短髪で野生の猛獣のような目をした少年

「違いますよ!見てください、これ!
みなさんも早く集まって!!」

 その瞬間、部隊全員が困惑した

「おい!戦争が終わるってマジかよ」
「俺たちの収入はどうなるんだよ」

そんな不安の声が飛び交う中、男は言った

「何をそんなに慌ててるんだよ?
戦争が終わるんだ、いい事じゃねぇか」
「そんな悠長なこと言ってる場合ですか」

 そんな話を彼らのもとに男が2人やってきた

「何者だ!」

 武装してやってきた彼らに部隊全員が
臨戦態勢をとった

「待て!その格好は両国の兵士だな」

「おっしゃる通り
我々は両国を代表してやって参りました」
「あなたにイスベルの王より招集がかかっています」

 両国の兵と名乗る2人はイスベルからの伝言を伝えた

「何故、俺がイスベルに?
それに何故両国の兵士がきた?」

「あなたが呼ばれた理由は分かりません
ですがこれは両国の総意です」

 彼は迷った、すると

「行ってこいよ!隊長!
俺らが正規兵になれるかも」
「そうすれば収入も安泰か」
「ほらほら日が暮れますよ」
 
 笑いながら見送ってくれる彼らを前に
男は断ることが出来なかった

 「わかった!行こう」



 ここは東の国の中央に位置する
イスベルの王都 ベルタ

「王都に来るのは久々だな」

 門をくぐり街道進んで城へと赴く

「王様に会うのも何年ぶりだ」

「どうぞ、謁見の間へ」

  兵士に促され、部屋に入るとそこには
仰々しい椅子に座る一人の男がいた
 この国の王だ

「あんたがこの国の王か
俺に何の用だ」

 王に対する男の態度に部屋にいた全ての者が腹を立てていた
 ある者は殺気を放ち、ある者は顔を赤くした

 すると

「俺と殺る気か?」

 その冷酷な目に全員が一瞬で死を悟った

「よせ!彼を呼んだのは我だ」

 王が場を収め、話を始めた

「なぜ呼ばれたか不思議に思っておろう
だが、此度の終戦はそなたの活躍があまりにも大きすぎる」

 彼が行ったのは暗殺
戦いの根源となったイスベルの前王を暗殺であった

「そなたが前王を殺してくれたおかげで
戦争は終結した
これに対し、両国の総意はそなたに褒美を取らせることだ」

 彼は驚いた
本来ならば重罪であるからだ

「死刑ではないのか?
俺は依頼とはいえ王を殺したんだぞ?」

「父の暗殺を依頼したのは我だ
立場上、匿名ではあったがな」

 その瞬間、彼は全てを理解した

「驚かぬのか
先程の殺気や目といい
肝が座っておるの」

「ずっと戦場にいたからな」

 そう答える彼に対して王はいくつか質問をした

「そなた、歳はいくつだ?」

「知らん」

「出身は?」

「知らん」

「両親は?」

「知らん」

「名前は?」

「ない」

 王は驚いた
彼は自分のことをほとんど知らないからだ
 王はさらに質問を重ねた

「いつから戦場に出ていた?」

「物心が着いてしばらくしてからだ」

 彼は冷静に答えた

「そろそろ本題に戻ってくれ
褒美をくれるんだっけ?」

「左様
なんなりと申すが良い」

「それじゃ仲間たちを正規兵にしてくれ
それとあいつらに居住地を与えてくれ」

「わかった
しかし、そなた個人の願いはどうする?」

「特にない
戦いにも疲れた」

 彼は何も望まなかった
すると、王がある提案をした

「では、学校に通う気はないか?」

 彼は戸惑った

「学校?」

「左様、学校とは教養を学び、同年代と友情を育み切磋琢磨していく施設だ
卒業すれば自由にして良い」

 彼は迷った、しかし

「やめておく、俺には金がない
学校とやらには金がいるんだろ?」

「費用は国が払おうではないか
それにそなたの居住地も用意する
生活には不自由させない」

 王の答えに彼は率直な疑問をぶつけた

「なぜ俺にそこまでする?
たかが傭兵に対してすることなのか?」

 彼の疑問に対して王は立ち上がり答えた

「そなたを戦場に立たせたのは
我々、大人だ
そなただけではない多くの少年兵が戦場で命を落とした
だからこそ、生きてる者には償わねばならない!」

 そして王は驚くべき行動に出た

「すまなかった
謝って済む問題ではない
だが、私にはこうする他にないのだ」

 一国の王が1人の少年に対して頭を下げた

「学校ってのは、面白いのか?」

「あぁ」

「人は死なないのか?」

「あぁ」

「わかったよ
王様にそこまでさせて断る訳にも行かないだろ
頭をあげてくれよ、王様」

 頭をあげると王は涙を流した
そこには少年の初めて見せる無邪気な笑顔
があった

「すまない、恥ずかしいところを見せてしまったな」

 涙を拭い、王は話を続けた

「手続きはこちらでしておこう
だが、名前はどうする?
そなた、先程名前は無いと申していたが」

「あんたが勝手に付けてくれ」

 王は少し悩んだ、そして

「では、ライトというのはどうじゃ?」

「ライト?」

「明るい未来という意味を込めてみたが
不服か?」

 彼は涙を流した
それは彼自身も予測していない出来事だった

「名前を貰えて泣いてんのか?俺」

 そして、彼はライトと名乗ることとなった

「そう言えば、初めて行くところじゃ
色々不安もあるであろう
そこでじゃ」

 王が手を叩くと部屋に1人の少年が入ってきた

「ライトよ、その者は我の弟の息子じゃ
こやつも学校に通うことになっている
色々と聞いたりするが良い」

「わかった」

「俺はライト、よろしく」

「僕はリースト
事情は色々聞いてるよ、こちらこそよろしく」

 リースト名乗る少年
銀髪のロングヘアを後ろで束ねた爽やかな印象の少年

 「ライト、そしてリーストよ
これより3ヶ月後に学校生活が始まる
それまで仲を深めるが良い」

「おう」
「はい」

 彼の学園人生はこうして始まるのだった


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