最後のラブレター ~現代版『椿姫』~

のんにゃん

カリスマに足りなかったもの

2017年初秋。

ここ数年
「女性活躍社会」「キラキラ起業女子」
などが社会現象となり、女性起業家のためのイベントやセミナーが各地で開催されている。

そんな世相を受け、大手SNSを運営する企業の企画立案やデザイン開発を担当するカリスマである修吾は、とても多忙な日々を送っていた。

アナログなチラシや電話営業などは、既に効率が悪いPRツールとなってきている。
今の時代の営業には、SNSが欠かせない。
そして様々なコンテンツに触れる場所も、今はスマートフォンが中心となってきている。

SNSを、集客にどう生かすか。
修吾は各企業に新たな提案をし、企業の抱える中長期的な課題に長く付き合っていくことに大きなやりがいを感じていた。


そんな修吾だが、実は代々医者の家系だった。
両親は当然、息子を医者の道に進ませるつもりだったので、彼は幼少期から勉強漬けの日々を送り、成績は常に学年でトップの優等生だった。


そんな彼の唯一の趣味は、絵を描くことだった。
朝起きてから絵を描き始めると、食事もせずに夢中で描き続け、気付いたら夜になっていた…そんなこともよくあった。

「無心になれる時間」が何より好きだったのだ。

彼は高校生になると、自ら進んで絵画を学ぶためのアトリエへ通うようになった。
そこには年齢も経験もバラバラの、学校では絶対に出会えないような人がたくさんいた。
でもみんなが夢中で、それぞれの絵を描いていた。
彼にとって、最高に刺激的な環境だった。

修吾は次第に
「デザイナーになりたい」
という夢を持つようになった。

そこで反対する父を説得し、芸術大学に進学。
その後ヨーロッパの芸術系大学院を卒業し、帰国してから広告業界へ就職したのだった。

「親父とは違う道で成功したい!」
修吾の夢は、時代の流れにうまく乗れたということもあり、30歳そこそこで年収2000万を超えるという形で実現した。

都心の一等地の高級マンションに住み、高級車に乗り、毎日のように高級レストランでディナー。

そして年に何度も海外旅行に出掛ける。

欲しいものは何でも手に入る。

庶民には手が届かない、絵に描いたようなキラキラした生活を送っていた修吾。


そんな彼に足りないものは・・・愛だけだったのかもしれない。

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