異世界に召喚されたのは二度目だけど、まぁとりあえず強くてニューゲームします

Luxuria

第一章 8 初のボス戦

    多くの戦闘を経て、王城に付くと、エントランスに避難民達が集まっていた。

    アグスティンは兵達に現状を聞きに回っているので、俺も情報収集がてら、歩き回っていると、パーティの面々に再開した。

   「レン、心配はしていなかったが、無事だったか」

    傷ひとつ無く、涼しい顔で話しているのはオリバー。相手が素早いからもしや、とも思ったが、元々彼は中央大陸でも大きめの魔物の討伐もしていたらしいので、問題なく勝てたのだろう。

    「ああ、あんたも大丈夫そうだな」

    「おうよ、あんなの朝飯……昼飯前だ」

    自慢するように力こぶを作るオリバー。そりより、後ろにいた二人が気になった。

    「てか、後ろの二人は何があったんだ」

    まず、顔の右頬だけが腫れているギル。それ以外はほぼ無傷なのに、そこだけダメージを喰らっているのが気になる。

    そしてミラ。フーデットケープを外しており、革鎧と麻の服を着ている。また、所々服が裂けているが、傷ひとつ無いので、少しエッチである。じっくり見ようと思ったが、「見たら殺す」と言いたげな目を向けてきたので慌てて目をそらした。

    「いや、お嬢は無傷の様だが何故かこんな有様でな、それをスケベな目で見てた奴がこうなった」

    あっ、なるほど。なんて残念なイケメンなんだ。

    「ぅうん、これでも羽織ったらどうだ?」

    咳払いをし、腕輪からとある上着を取り出し差し出す。

    「……礼を言わないわ」

    バッ!    と上着を手に取り素早く羽織る。スケベな事をちょっぴり考えたのがバレたのだろうか。

    ちなみにその上着は極地行動用外套【オゾン】という、考案俺、開発彩音の装備だ。

    装備して中の装置を起動すれば、温度・湿度と周囲の空気清浄化も行い、撥水・耐火・耐雷に、耐刃と防弾を備えた欲張りセットの効果を発揮する。

    「レン、お願いが有るんだが良いか?」


    オゾンを彼女に手渡すと、ギルから声がかけられた。

    「なんだ?    その傷は自業自得だから治さんぞ」

    「そうじゃない、この後についてだ」

    「この後?    あー、元凶か。多分この上にいるんだろうけと、階段に結界が張られてたな」

    先程、辺りを歩き回っている時に階段に結界が、張られているのに気づいた。

    兵達が干渉していたが、開けられそうには見えなかった。恐らくかなり高位の結界で、破壊も無理、術式の解除も無理筋だろう。

    「なら話は早い。あれを破壊、もしくはすり抜けることが可能か?」

    「いや、取り敢えず見て干渉してみない事には分からん、準備したら行ってみようぜ」

     「ああ、すぐ行く」

    そう言ってギルは何処かに向かって言った。




    体感的に十数分後。新しそうな鎧と、値打ちのしそうなレイピアを身につけたギルが戻ってきた。

    白く輝く鎧は、金髪碧眼という彼の容姿にマッチしており、むっつりスケベということを知らなければ物語の主人公の様に思えた。

    「待たせたな、それで、算段はあるのか?」
    
   準備万端といった声音で話しかけてくるギルに、俺は くだんの結界をペタペタ触りながら返した。

    「あ、無理ゲーだわこれ」

    「む、無理……何だって?」

    ああ、ゲームはこっちの世界にはないか。

    「この結界は破壊と解除、どっちにしろ俺じゃ無理だ。かなりの魔力と緻密な術式、そして何重にもかけられたプロテクト。とてもじゃないが、突破は無理だ」

    少なくとも触媒は数十、それも高純度の魔力を帯びた。そして術式、これも無駄が極限まで省かれたもので、隙間が殆ど無い。それが五重以上。お手上げ状態だ。

    「何か他に手は!?」

    狼狽した様子で聞いてくるギル。

    「落ち着け、あるに決まってるだろう?    じゃなきゃもうちょっと考えてる顔をするわ」

    「あ、ああ」

    立ち上がり肩をポンポンしながらなだめる。

    「しかし、どうやってこの硬いのを抜けるんだ?」

    頭をポリポリと掻きながら一緒に来ていたらしいオリバーが訊ねてくる。

    スッ、と、俺は真っ直ぐ上を指差す。

「上だ。どうやらこの結界は城の上部に貼られてないようだ。と、言う訳でてっぺんから侵入する。」








 「ここらでいいか。よし、準備はいいか?」

 セーレム城の外、高くそびえ立つ外壁の前に俺達、ギルとオリバー、そして先ほどいなかった二人は集まっていた。

 「まさかとは思うが、この壁を登れというわけではないだろう?」

 おいおい、といった表情で聞いてくるアグスティン。

 「ああ、登る・・とは一言もいっていないな」

 「じゃあ、一体何をするつもり?」

 今度はミラが聞いてくるが、それに対してもやれやれといった感じで俺は首を振った。

 俺は地面に手を向けて、腕輪から、先程の戦闘で使用したトランポリンを出現させた。

 「───、───、────ッ!」

 俺がゆっくりと言葉・・を紡いでいくと、トランポリンの上に魔法陣が現れ、次々と術式が並び、鮮やかな羅列が陣を形成していく。

 一分経ったか分からない程の時間が経過する頃に、それは完成した。

 「魔力付加エンチャントまでここまでの練度とは、もう驚きすぎて笑いが零れる程だ」

 そう言って、アグスティンが感嘆の声を漏らす。

 そう言われると照れ臭いが、こういった作業だと、もっと凄いのがいるので謙遜じみたことしか言えない。

 「これは……、何なんだ?」

 「使えば分かる。皆、俺が合図したらこれに飛び乗ってくれ。…………、せーのっ!」

 俺の急とも言える合図で、全員が慌てたように駆け出す。ちなみに俺はもう飛んでいる。

 次の瞬間には、ギシギシ、と音を立ててトランポリンを全員がゆがめていた。

 「よし、即席人間ロケット、発射ッ!」

 伸縮性の高いトランポリンの下地が、俺達を遥か上空へと旅立たせたッ!!







「「「「うおぉぉぉぉぉぉおおおおお!!!(いやあぁぁぁぁぁぁああ!!!)」」」」

「Foooooooooooooooooooooooo!!」


城のてっぺんを遥かに飛び越えた上空で、俺は奇声、残り四人は絶叫をあげていた。


さっき俺が行っていた魔力付与は、【衝撃強化】の魔術術式を応用したもので、押し上げる力を魔改造し、普通に家屋を飛び越えることが可能なトランポリンを、空へと旅立たせる愉快なグッズにしたのだ。やったぜ。

 さて、そろそろ上に向かう推力がついえる頃だ。あ、止まった。


    『───────ッッ!!!』


    全員が声にならない悲鳴を上げ、重力に従って落下していく。このままではただのダイナミック自殺になってしまう。

    さて、どうしようか。

    俺達の身体は物凄い速度で自由落下し、今も加速し続けている。城に直撃して血溜まりになるのに、あと十数秒あるかないかくらいだ。


    「おいっ!    何か安全に降りる方法は無いのか!    ていうか、飛びすぎだろう!」

    空中にも関わらず、姿勢を安定させて叫んでくるのはギルだ。中々に胆力がある。

    「大丈夫だ、流石に無策ではない」


    右手に嵌る腕輪から、大ぶりの魔石、【ウルフリーダー】や、【ホブゴブリン】のような少し格の高い魔物の魔石を取り出すと共に、風の魔術で下に撃ち出す。

    「おい、何を!」


    「先に謝っておく。すまん」

    言い、俺は手元に魔法陣を出現させる。その陣に映る術式は──

    「《爆ぜろ》」

    ──炎・風属性複合魔術、所謂爆発魔術だ。

    ドッゴォォォォォォオン!!!!


    城の上部に着弾した魔石が、込められた術式により、濃密な魔力というエネルギーを熱と気体に変換し、ちょっとしたミサイル並の大爆発を引き起こした。


    その爆発は、太陽の如く眩しい明かりを灯すと共に、荘厳なる城の屋根を吹き飛ばし、灼熱のような熱風を叩きつけるように吹き荒らした。

    
    『──────ッッ!!!』


    再度上がる声にならない悲鳴。あ、後で絶対怒られるやつだこれ。

    しかし、落下の推力は爆風の圧によりほぼ相殺され、煙に包まれた城の上部に綺麗に着地できた。







    まだ爆煙に包まれた城内、いや、内なのかは分からないが、その中で俺を含め五人の姿があった。


    「ゴホッゴホッ!」

    むせる声。何人のものだかわからないが、苦しそうだ。まあ俺は自分の周りに簡易的に結界を張っているから問題ないが。

    しかし、このままにしておくのも良くないので、風属性魔術【ブリーズ・ブロウ】の効果範囲を広く改変した魔術を発動し、煙を晴らした。


    煙が晴れると、現れた姿は九人・・。うち三人は倒れている。

    俺を含めた五人は仲間だ。残り四人は倒れた三人と、妙な仮面を着けた人物だ。倒れた三人は服装からして王族、もう一人は怪しい舞踏会に居そうな紳士。

    明らかに今回の首謀者はこの仮面の紳士だろう。


    「殿下ッ!!」

    仮面の紳士達に気付いたアグスティンが叫び、剣を引き抜き駆けていく。しかし。

    バッ!

    白い手袋に包まれた左手が、それを引き留めた。

    「そう急ぐものでは無いぞ、そこの男よ。まずはお互い名乗ってからだろう」

    彼は仮面に右手を当て、何やらカッコいいポーズを取り……

    「私は、魔王軍四天王が一人、『傀儡かいらいのペルソナ』。以後、お見知りおきを」

    言い、深々とお辞儀をした。これまたご丁寧に。

    「魔族風情が、呑気にしおって!    すぐさま切り伏せてやる!」

    その挨拶を無視し、更に向かって駆けていくアグスティン。おい、そのセリフは最初に死ぬ奴の……

    サクッ。

    不気味な程子気味のいい音だった。

    「うご……き……あああ」

    その音がした直後、彼がうめき声を上げるのが聞こえた。

    「やれやれ、礼節を弁えぬ者には教育が必要な様だ」

    またもや仮面に手を当ててポーズをとって現れたペルソナ。

    仮面に当てた手とは異なる方で、なんだか不気味な雰囲気の短剣をアグスティンの背中に突き刺していた。

    ふむ、移動の軌道が見えなかったのを見ると、転移系か、幻影、隠蔽魔術の類だろう。それもかなりの精度の。


    「行くがいい」

    「あ…ああ……」

    短剣から手を離し、ビッ!    と俺達の方に手を差し向けると、アグスティンが剣を構えて突撃してくる。

    「一体何が……」

    何も出来ずにあちらを眺めていたオリバーが呟いた。


    恐らく精神支配か肉体操作の類だ。どうやらこちらもかなりの高精度で、元のアグスティンより二十%位動きが良い。はえー。


    「くっ!」

    悲痛そうな顔をしたギルが前に出る。

    しかし、俺は彼を手で制し、前へと進んだ。

    「まったく、突入してフラグを即建築&回収とか、世話の焼ける騎士さんだこ……と!」

    振り下ろされる剣を避け、すぐさま後ろに回り込み、腰から手を回す。

    ズドンッ!!

    俺は思いっきり後ろに重心を傾け、ブリッジ。所謂ジャーマンスープレックスである。勿論死なない様に手加減はしているが。

    「頭は冷めたか?」

    スっと立ち上がり聞く。が、フラフラと立ち上がった後向かってくるアグスティン。精神支配ではなかったか。そうだったら壊れかけのテレビよろしく、きっちり直るのに。

    「やっぱその禍々しい短剣か」

    再度剣を避け、すり抜ける様にすれ違い、短剣を引き抜く。ちなみに傷口には回復魔術を……あり?

    確かに回復した筈なのだが、手応えが……

     振り返り彼を見る。あ。

    糸が切れたように倒れた込みそうな彼を支え、背中を見る。

    「呪痕じゅこんか。中々に手の込んだことだ」

    仕方ないので凍結させて流血を防ぐ。得体の知れない呪いを解呪する暇も無いし、危険極まりない。

    「ほら、取り敢えず端に置いといてくれ」

    ギルを手招きし、アグスティンを連れて行かせる。

    「すまない、助かった」

    「気にするな」 

    「さて、これは返す……ぜ!!」

    ヒュン!

    空気を切り裂き、ペルソナの脳天目掛けて短剣が投擲される。

    「中々に洗練された動き、この大陸の者にしてはやるようだ」

     「お褒めに預かり、こりゃどーも。俺の名はレン、一応アンタを倒しに来た」

    彼の様に

    「これはご丁寧に、でも、まずはこれを倒してからだよレン君?」

    ニィ、と口元を歪ませると、瞬時に魔法陣を二つ展開、異界への門を開いた。

    ドスン!

    現れたのは緑色の巨人と、白く輝く毛を持った狼、【ゴブリンロード】と【エンペラーウルフ】だ。

    どちらも強大な力を持つ統率個体、厄介極まりない相手だ。しかし、こちらには三人頼れる仲間がいる。

    「俺が一番後輩なのに、まとめる様で悪いが、行くぞ!」

    「「「おう(わかったわ)!!」」」

    言って、二体の魔物との戦闘が始まった。

    















    



    

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