異世界に召喚されたのは二度目だけど、まぁとりあえず強くてニューゲームします

Luxuria

第一章 7 王都大襲撃

 


    「……一連の魔物の大量発生、恐らく裏で誰かが手引きしている」


    「何だと!」


    海外ドラマのワンシーンのように告げる俺。

    このノリで話そうと思った時はカッコいいかな?    って思ってたけど実際やって、客観的に見ると痛々しいので、こういう場面に直面してもやらないことをおすすめする。


    「……あんたらも薄々違和感を感じているはずだ。一つ、単純繁殖ではおかしい量のウルフ。二つ、明らかな指向性の伴った動き。そして三つ。山からゴブリンがこのタイミングで襲撃してくるという事だ。両者共に我の強い魔物にもかかわらず、あれだけの大軍を率い、尚且つ報告よると、ウルフ・ゴブリンは争わずただひたすら人間を狩っているそうだ」

    置かれている状況や報告を混じえて説明する。頷いてくれているを見るに、大体察してくれているだろう。

    「そう、恐らくこれは召喚・洗脳系魔術によるものと考えられる。それもかなりの練度な」


    「馬鹿な、この量の魔物を同時に操るだと!?    不可能だ!」

    兵士の一人が声をあげる。

    「そうだな、この量の使役をすれば脳みそはおしゃかになるし、そもそもどんな魔力量があればそんなん出来るのか……少なくとも俺達と同じ猿人類ではないだろうな。エルフ、精霊、魔族以上の種族であることは確かだ。まぁ会えばわかるさ」

    俺は踵を返し、部屋の外へと向かう。

    「とりあえず、そろそろ行かないとここも危ないし、城も落ちる。あとは移動しながら考えようぜ」

    「おい、何処にいくんだ!」

    「決まってるだろ?    王城だよ。多分そいつもそこに向かっているはずだ」




◆◇◆





    数十分後。王都貴族街門前。


    「そいっ!」

    俺の回し蹴りが頭部に炸裂し脳漿をぶちまけるゴブリン。

    魔物溢れる王都を駆け抜け、遂に王城周辺の貴族街の前まで来た。

    「何故ここに魔物が……まだ奴らは外縁部にいる筈なのに!」

    不可解な現象に叫ぶアグスティン。ちなみに現在は俺のいるパーティーの四人に加え彼の五人で行動している。

    目指すのは王城─謁見の間。ボス戦といえば大体そこだろう。

    「これだけの数を操っているんだ、遠方から・異界からの召喚は簡単だろ、こりゃ一筋縄では行かないな」

    門の壁にもたれ掛かり水筒をあおる。

    「なぁレン、襲撃を受けてからやけに人が変わった様に見えるんだがどうしたんだ」

    「ブフッ!」

    喋り過ぎたか。なんか気分的に昔の作戦会議みたいで興が乗ってしまったようだ。

     「いやー……近所のおじさんが召喚術士サモナーで、アハハハハ」

    くっ、悪手だっ!    ギルが凄い怪しんでる顔してる!


    「別にいいんじゃないかしら?    誰だって、語りたくない過去もあるもの」

    どう誤魔化したものかと考えている内に助け舟を出してくれたのはミラだった。

    「あなたも、あなたも、あなたも。誰にだって後ろめたい事は必ずある。あなた達はそれを包み隠さず話せるかしら?」

    『…………』

    ワオ、俺への注意は逸れたけど、見事なまでの雰囲気の悪さ。

    全員が全員何かを悔やむ様な顔をしている。それもそうだ、誰だって多くの過ち、痛みを背負って生きている。俺もそのうちの一人だ。

    だが、そんな風にうだうだしてる時間は無かった。

    パキパキパキッ!

     そんな何かが割れる音がした。

    「上だッ!」

    オリバーが壁に立て掛けていた大剣を構え、警告する。

    「おっと、どうやら奴さんからこっちは丸見えみたいだ」

    警告の通り見上げると、眼前の空にヒビが入り、黒い闇のような空間を覗かせている。

    (術式発動の前触れが無かったのを見るに、所々に術式だったり、自分の魔力を含んだ触媒を置いていたか。しかもご丁寧に魔力隠蔽まで、相当な手練だこりゃ)


    ズウゥゥン!!


    瞬く間にヒビは大口を開けたように広がり、中から多くの異形をこの世に現界させた。

    数は五。正確には十か。

    現れたのは少し通常よりも大きな【ウルフリーダー】と、それに跨るゴブリンの上位種、【ホブゴブリン】だ。言うなれば【ゴブリンライダー】とでも言うか。

    ホブゴブリン達は長槍と盾を装備しており、さながら騎兵隊のようだ。何処から調達したのか……

    「来るぞ、分散させて各個撃破とする!    なるべく狭い道に駆け込め、多少は機動力を割けるはずだ!」

    声を張り上げて指示するアグスティン。確か王国軍部の指揮官のを聞いた事がある。指揮能力に長けているのだろう。

    セオリー通りなら中型以上の魔物が複数現れた場合は、数人で確実に数を削るのがマスト。けれども奴らは高い機動力を持つ為、囲まれればゲームオーバーに近い。

    かといって分散すれば戦闘力の高い相手に対して分散戦闘を行えば、逆に各個撃破される。

    だが、彼、アグスティンは俺達の実力を相当買っているようだ。よっぽど優秀な指揮官だ。森への調査は失敗に終わったが。

    「戦闘……初めッ!!」


    俺達は街へとくり出した!!




    「フッ!    フッ!」


    トントントン!    と、壁を走り、後ろから突き出される長槍の刃をすり抜ける。

    光が薄くしか刺さらない、暗い路地裏を翔け、逃走する俺。

    「やっべー!    結構速えぇぇえ!?」

    馬と違い、立体的な機動も出来るウルフは狭い道でも中々の速度で追い掛けてきた。

    (こりゃあ、新しい戦術の開拓になるかもな!    っと)

    またも襲ってくる槍の閃き。召喚獣のわりに高度な槍術に驚きながらも、槍の軌道を読み、結界魔術を小規模に展開し防ぐ。

    (うん、逃げながら戦うのは無理ゲー。どうやって機動力を削ぐものか……あ、アレで行こう)


    「テッテレーー!!」


    右腕に嵌められた腕輪から取り出したるはどこ●もド……じゃなくて即時展開式折りたたみトランポリン。

    取り出したそれを前方に振り投げ、展開すると同時に俺は跳躍。

    今まさに展開したそれに着地、次の瞬間には空高く舞い上がっていた。


    「イヤャァッフウゥゥゥウ!!!」


    マ●オ顔負けの甲高い奇声のような雄叫びをあげて飛翔する俺。なんで彼はいつもあんなハイテンションで叫ぶのかが解った気がする。


    『アオォォォォォンッッ!!!』


    遠吠えをあげながら続けて飛び上がってくるゴブリンライダー(のウルフ)。

    よし、乗ってくれたか。


    「かかって来いワンコロッ!    お前の機動力がどれ程高かろうと関係のない処刑を思いついた……」

    俺は腕輪から十数本のナイフを取り出し叫ぶ。

    「【世界ザ・ワー●ド】ッッ!!」



    次の瞬間、ゴブリンライダーの周辺360°に爆発系の魔術の込められたナイフが出現した。

    (あぁこれ、一回やってみたかったわ〜)


    世界(仮)。空間魔術の応用により相手を取り囲むように飛び道具を展開する技。ちなみに時は止まってなんかいない。

    しかも、俺の実力じゃ片手間に使えないし、出現先に使い捨ての触媒をばらまかないと使えないので、使い勝手もコスパも最悪なので、あまり使えないネタ技である。


    ドゴオォォォォン!!!


    ナイフは綺麗にゴブリンライダーを中心に描いた球の中心に収束し着弾、大爆発を起こした。


    スタッ。


    風魔法を応用し、足への衝撃を殺しつつ、広場に鮮やかに着地。

    しかし、仕留め切れなかったか。


    『ゴフッ、ゴフッ!』


    路地裏の奥から煙を上げて現れたのは【ホブゴブリン】。さっきのゴブリンライダーの片割れだ。持っていた槍と盾、纏っていた革鎧はボロボロで、半分以上無くなっている。

    「随分と変わっちまったなぁ、ゴブリンさんよ?」

    俺の言葉に呻き声のような声しか返さないゴブリン。まぁ別に返答を期待していた訳ではないが。

    奴は爆発の直前ウルフから飛び降り、直撃は避けていた。と言っても余波だけで相当ダメージを喰らっているようだが。

    「さて、ここからは皆大好きステゴロでろうぜ?    一撃KOを見せてやるよ」

    拳を前に前に構え、拳闘の態勢を取る。

    『ググ、グガァァァッ!!』

    人間離れしたスピードで迫るホブゴブリン。ダメージを受けているとはいえ、魔物。それに加えて上位種。自転車よりも全然速い。

    だが相手が悪かったな。

    腰を深く落とし、心を落ち着かせる。

    拳を引き、極限まで溜める。

    俺は迫るホブゴブリンの拳が直撃する直前に、それを解放。

    俺の拳に貫かれたホブゴブリンは、血一滴すら残さず蒸発した。

    【超正拳突き】。モーションが分かりやすいため命中率はゴミだが、トドメの一撃にはもってこいの高火力技。

    東方で学んだ【気】の力を纏った一撃は、生命という概念ごと消し飛ばす。そのため霊体に対してもこうかはばつぐんだ。

    ちなみに俺の師匠は、これで山一つごとドラゴンを消し飛ばしたそうな。

    ともあれ、俺の戦闘は終了した。




◆◇◆




   

    
    「さて、他の奴らはどうなったかなっと……」


    貴族街の一角にそびえ立つ教会の屋根の上に立ち、望遠の魔術で辺り一帯を見渡す。

    まず目に入ったのは逃走している人々。兵士が先導し、王城に向かって駆けている。冒険者も道中に現れるウルフやゴブリンを切り伏せ、一丸となり助け合っている。

    そして、ゴブリンライダーと戦っているはずのあいつらは……

    いた、二人か、オリバーとアグスティン、それ以外は見つからない。恐らく残りは終わったか路地裏を走っているところか。

    オリバーの方はもう終わりそうだ、既にウルフは撃破、槍を持ったゴブリン、【ゴブリンランサー(仮称)】と開けた道でタイマンだ。

    そしてアグスティンだが……やばい。路地裏の奥、行き止まりの袋小路だ。

   全身に切り傷があり鎧は血に濡れ、一部は刺し穿たれ、今も血を溢れさせている。

    そのせいか動きも鈍い。槍は一閃、二閃と確実にアグスティンを削っている。

    ……助けに行くか。


    俺は教会の屋根から飛び降りた。






    「せーのっ!」


    俺は教会から降りると、邸宅の屋根をパルクールのように走り、ゴブリンライダーの上に跳んで、ゴブリンの頭にライダーキックを決めた。

     『ゴブゥ!』

    俺の蹴りをまともに喰らったゴブリンはウルフの上から飛び、きりもみ回転をかけながら誰かの家の壁にめり込んだ。

    バタバタバタ!

    壁尻状態になって足をばたつかせるゴブリン。その光景にアグスティンとウルフはポカンとしていた。

    ああ、この壁尻が美少女のものだったらどれほど良かったか……というくらい綺麗にハマっているので、しばらくゴブリンはほっといても良いだろう。

    さて、残りはウルフか。事前準備の時点で嫌となる程狩っているので、倒す為のプロセスは完璧、だが強化個体だから油断は禁物。

    「さて、大丈夫だったか?    いや、見るからに大丈夫では無さそうだ。待っていろ、すぐに片付ける」

    「君は……もう一体倒したのか、流石だ……」

    虫の息とまでは行かないが、十分危険な状態だ。なる早で片付けないとな。


    『ワオンッ!!』

    ポカンとしていたウルフがこちらを認識し、駆け出してくる。

    牙を向いて飛びかかって来るが、俺は紙一重で回避し、脇腹にボディーブローを突き刺す。

    『キャン!』

    子犬のような鳴き声をあげて邸宅の壁に激突、感触的にはアバラが何本か逝っているだろう。

    コツコツ、と地面のレンガとブーツの当たる音を響かせ、ウルフに歩み寄る。

    「《パラライズ・バレット》」

    俺の五指から雷光がほとばしり、バチバチと音を立てる電気の弾丸がウルフに着弾し、感電させる。

    素早く片付けたいなら致死性の高い魔術を使うところだが、あえて今は気絶に留めている。

    で、ゴブリン。あいつは既にウルフとの戦闘に放っておいた爆発ナイフで吹き飛んでいる。

    よし、制圧完了!    あとは怪我人の治療のみだ。


    行き止まりの壁を背に座っているアグスティンは血を流しながら息を荒くしていた。

    「さて、治療を始めるか」

    「はぁ、はぁ、回復魔術まで、君は一体何者なんだ……」

    「……余計な詮索はいい、一旦寝かせるぞ」

    彼は頷くと、俺に促される形で横になった。

    「《探せよ、探せ、命の脈動》」

    魔術により、俺の魔力がアグスティンの全身に広がり体を調べていく。

    探査魔術【ライフサーチ】。本来の用途は建物内の敵の探知が主だが、医療用に使われることもある。

    怪我をしている部分はこの魔術により俺の頭に具合を教えてくれる。それによって治療を精密に行える。

    そして小さな傷から順に魔力を流し、治療の魔術を発現させ次々に傷を塞いでいく。

    残った大きな傷には余っていた魔物の魔石を当て、もうひとつの魔術を使う。

    「《その傷に安らぎを、天におわす主の祝福があらんことを》」

    魔石を触媒として、穴となっていた傷を塞ぎ、表面上の傷は全て消えた。

    「よし、これで十分か。直したとはいえ、血は回復しないから、しばらくは安静だな」

    「すまない、助かった。して、他の者の動向は知っているのか?」

    身を起こし、俺に尋ねるアグスティン。

    「ああ、確認したところあんた以外にはオリバーしか確認出来なかった、彼女とギル……あんたの弟は未確認だが、恐らく大丈夫だろう」

    言って、手を差し伸べる。

    「よっと、辺りを見た感じ、ここらも魔物に侵食されてきた。元凶をとっとと片付けるのに専念しよう」

    そしてその前にちょっとやる事が……

    「…………剣術に格闘術、多くの魔術、それも全て高水準。どこで習得したのだ……ん、何をやっているんだ君は!?」

    先程麻痺させたウルフ胸の部分を切り裂き、中に手を突っ込んでいると、後ろから驚きの声が響いた。

    「逆探知してるのさ。お、あったあった。これをこうして……」

    内蔵が詰まった胴体をまさぐっていると、魔力の詰まった石ころのような物を発見した。

    逆探知というのは、召喚術士や精霊術士と繋がっている使い魔の類から、術士本体を炙り出すというものだ。

    これには、魔力のパスが繋がっている必要があるため、殺してしまうと不可能になるため先程の【パラライズ・バレット】という雷系の魔術を使って生け捕りにした。

    また、普通に触れても可能なのだが、こうやって相手の核となる魔石に触れてやると、繋がり易いので、手が汚れることを無視すれば効率的なのである。

    「さてさて、ここら辺に──わっ、ちょ、っぶな!」

    パキンッ!   と、乾いた音が響き、握っていた手のひら大の魔石が割れた。

    どうやら、接続したのがバレたらしい。

    しかし、居場所はわかった。

    「行こうぜ、ロイゼンさん、奴さんはテンプレよろしく、王城の謁見の間にいる」

    「あ、ああ。その前に合流しよう、まだ生死すら分からないからな」

    あ、忘れてた。




◆◇◆




    そこらの家の屋根に登り、城方面を見ると、駆けていく大量のウルフ・ゴブリンがおり、それを迎撃しながら王城に向かうあの三人がいた。

    そして、それを見たあとの現在は、アグスティンと共に、王城への近道だと言う地下水路を走っていた。

    「よくこんな所を知っているな」

    彼に並走しながら俺は聞いた。

    「子供は誰だって、秘密基地の類が好きだろう?    昔は身分の差を関係無しに集まっていたものだ。よく先代……父上に帰りが遅くなって怒られたな。懐かしい限りだ」

    あー、結構やんちゃ坊主だったのねこの人。今の見た目からは想像出来んわ。

    ちなみに彼の見た目は金髪のオールバックに蒼眼、筋骨隆々にも関わらず、顔は賢そうな感じで、お硬そうな生粋の貴族のようだったが、今はよく飯を奢ってくれる、職場の先輩みたいだった。

    走っている最中彼は、彼の弟、ギルデバートの話を俺に話してくれた。



    ギルデバート・ロイゼン。セーレム王国の筆頭貴族である、ロイゼン侯爵家に産まれた男である。ロイゼン家はセーレムの軍部のトップに位置する家で、彼の父親と、その兄、アグスティンも王国の騎士団長に就任し、国で名を知らない者は居ないと言う。

    しかし、彼は常に日陰に居た。それは彼の出生に起因する。

    実は、彼とアグスティンの母親は違うのだという。アグスティンの母親はアグスティンが九つの頃に病床に伏し、二年後に亡くなったという話だ。

   その後、とある娼婦が彼の父親に言い寄り、生まれたのがギルデバート、彼だ。

    しかし、子が産まれたにも関わらず、日夜遊びにふけり、その末には家の金目の物を持って逃げたのだという。それも、彼を残してだ。

    ギルデバート自体はまっすぐとした男で、文武ともに優れた男であったが、周りからの評価は酷かった。忌み子だの、薄汚い血だの、狐の息子だの、散々だったそうだ。

    もちろんアグスティンはそのような事は一度も言わなかったが、助けることも出来なかった。

    当然だ。貴族にして軍部のトップであるからではない。アグスティンが彼を助ければ、彼自信が惨めに感じてしまうから。「同情のつもりか」と。

    そして、この国で成人とされる十五の頃、この家を出ていくのを、アグスティンはただ見ているだけだったのだと言う。


    そして時は現在に至り、3年余ぶりに再開したらしい。

    そんな話を聞いているうちに、目的地と思しき突き当たりが見えてきた。

    「そろそろだ」

    「たしか使用人の小屋に出るんだったか?」

    「ああ、現公爵のハイデル閣下も、ここからよく出てきたものだ」

    また懐かしむように過去の話をするアグスティン。

    「そうか、だが懐かしんでいる所悪いが、気を引き締めた方が良いぞ、いる・・ぞ」

    それを聞いた瞬間、ピクっとして、こちらを見る彼。

    気配、気によると、少なくともウルフが四、五はいる。内一体は統率個体、【ウルフリーダー】と見られる。

    足音を少し落としながら、進むと、上に繋がっていると思われる梯子があった。

    「数は五だ。統率個体もいる。そして集まってくる気配もする。瞬殺推奨で、倒したらすぐに隠れながら王城に侵入しよう」

    地上に近づくと、さらに反応があったので彼に警告をする。

    「あんたは怪我をしたばかりだ、リーダーは俺が片付ける。雑魚の対応を任せても良いか?」

    俺がそう提案をすると、彼は頷く。

    よし、行くか。

    物音を立てないようにゆっくりとマンホールのような小さな出口を開き、隙間から外を見る。

    生活感のある厨房だ。壁や棚には調理器具や食器が並んでおり、微かに香辛料の香りがした。

    日本でもそうだが、料理関係の仕事をしていると、プライベートでも凝った料理を作るらしい。

    そして、俺は忘れずに手を自分にかざして……

    「《サイレント》、《インビジブル》、《デオドライズ》」

    静音化、透明化、あと犬系って鼻が良さそうだから、消臭の魔術も使用した。

    静音化していながらも、なるべく足音を消して歩く。……ッ!

    見回りをしているのか、通常のウルフが扉から出てくる。

    「《ライトニング・ジャベリン》」

    俺の手が輝くと同時に雷光がウルフの脳天を貫き絶命させる。

    雷属性魔術、【ライトニング・ジャベリン】。名前の通りめっちゃ速い電気の槍だ。使用魔力量、速度、比較的簡略な術式、何かと使い勝手はいいが、相手が強かったり、【護符アミュレット】の類いを持っていると確実と言っていい程防がれるので、雑魚相手に使うのが多い。

    『いいぞ、大丈夫そうだ』

    死体を腕輪に収納し、付近の安全を確認して、彼に通信魔術で来るように言った。

    「久しぶりぶりだな、ここも」

    マンホール(仮)から顔を出すと、キョロキョロとするアグスティン。首元には俺が即席で作った魔道具のネックレスを付けている。

    ちなみにそのネックレスは、静音化と通信の魔術術式が込められている、即席潜入グッズである。

    何かと使い勝手が良いし、安価なので、金に困ったら量産して売りさばこうと思ってもいる。

    「行こう、恐らくリーダーは今食料庫を漁っているはずだ、油断している。とはいえ一体片付けたから、気づかれる前に早めにな」




    
    
    食料庫で色々と食い散らかしていたウルフ達を片付け、逃げ去るように王城に向かった。

    外れにあるとは言えど、城の門の内側にあるので、大した距離ではなく、一分もかからない内に城に入れた。

    城内にいるのは市民。平民、貴族関係なしに不安な顔をしている者や、絶望に染まった顔をしている者がいた。

    アグスティンは現状を確認するため、兵に聞いて回っているそうだ。

    俺もそこらを歩いて回っていると、先程見かけた三人を発見した。
    
    

       

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