異世界に召喚されたのは二度目だけど、まぁとりあえず強くてニューゲームします

Luxuria

第一章 6 大きな戦闘といったら、今日が初かもしれない


    翌日、早朝間もなく、所定の位置に着くと、既に多くの調査隊の面々が居た。

    彼らの内には、ギルド内の酒場で話した者も数人おり、会釈や手振りで挨拶することもあった。

    全員の集合後、大きめの馬車が二台出され、それに乗って大森林の入口付近までは移動するようだ。

    当然数回の襲撃を受けたが、人数と能力の高さで群れは瞬殺。この様子だと、意外と楽に終わるかもしれない。

    しかし数が多い。大森林に突入して一時間弱経った時点で既に俺が三日かけて討伐した三百余りを超え、六百、いや七百頭ものレッサーウルフを討伐している。

    一体一体は全然強くないにしても、これだけの数を相手取っているため、数名疲労した者が確認出来る。

    しかし妙だ。俺が魔石の為に狩りをしていた時は二十体程の群れに一体ウルフリーダーの混じった群れが時々現れた筈なのだが、今回は全く現れない。外側のみならず、深部に突入しようとしているのにも関わらずだ。

    そして現在いるのは大森林の中心からの半径の半分程の地点だ。通常であればウルフの上位種の【ウルフリーダー】、【エンペラーウルフ】に加え、虫系・植物系の魔物が現れる可能性がある地域なのだが、それらが全く現れず、【レッサーウルフ】のみが襲ってくるのだ。俺は少々嫌な予感を内心で孕んでいたが、黙々と一団と共に進行していくのだった。

    後にあんなことになるとは思ってもいなかったが。




    「ふんっ!    これでこの群れも終わりか。数だけは多いが、問題はないな。しかし、上位種や、ウルフ以外が現れないのが妙だ」

    群れの最後の一体を切り捨て、首を傾げて呟くオリバー。

    あれから更に時間は経過しているが、【レッサーウルフ】以内の個体は現れていない。

    だが、異様に数は多く、疲弊する者は時間を追うごとに増えていくばかりだ。

    最深部はまだだろうか…………


    「おい、何か見えないか」

    各部隊の中でも戦闘に立つ今回のリーダー、アグスティンが前方を指さして言う。

    前方、全員がそれに気づき足早に進むと、開けた空間に出た。

    そこには木々が無く、芝生のような草が生い茂っており、そこに立つ俺達は暖かく包み込むような空気を感じていた。

    「あれを見ろ」

    木々が無いため光が射し込む草原の中央、そこには純白の毛を持った狼、もといウルフの上位種【エンペラーウルフ】がいた。


    「こいつが今回の元凶か……?」


    腰に提げた剣を抜き、接近する一団。だが、俺は立ち止まり、ある事に戦慄していた。

    一つ。この現象、この国周辺での魔物の大量発生の元凶についてだ。本来、魔物の大量発生はごく稀に発生する現象で、大量に発生した魔物は食事の為人里に災害の如く押し寄せる。

    だが今回は街への進行はほぼ無かったと聞いた。そして、魔物の大量発生は空間魔力の増加に伴うものが多いにも関わらず、魔力が多い場合に発生し易い、上位種の数が異様に少ない。

    この人里への進行と、上位種が少ないという事で俺はある事に気がついた。

    この騒動は人為的なものではないか?    と。

    そして二つ。とある技術により、ある程度生命力的なものを感じ取れる俺は、円状に出来ているこの平原の外側に、大量の生物の反応を読み取っていたのだ。




    「全員、街に全力で走れええええええ!!」


    「「「「「ッ!?」」」」」


    喉の奥、腹の底から声を出し警告する。

    「おい、いきなり何を言っているんだ、目の前に大物らしきウルフが……」


    アグスティンがいきなり叫んだ俺に、おかしい奴を見る目で言うが、それは途中で掻き消される。


    「アオオオオオオンッッ!!!」


    そう、面前の【エンペラーウルフ】による遠吠えと、それに呼応し吠えながら現れる大量の【レッサーウルフ】・【ウルフリーダー】によってだ。






◆◇◆






    「ハァッ、ハァッ、不味い、非常に不味いぞこれは!」

    息を荒げて、並走するオリバーが叫ぶ。

    セル大森林最深部より少し手前。俺達は大量のウルフ達から全力疾走で逃走していた。

    あの遠吠えの後、大量の【レッサーウルフ】・【ウルフリーダー】が現れ、襲いかかって来た。

    唖然としていた仲間達だったが、俺が機転を利かし、例のナイフを数本束ねて投擲し、退路を作ってとりあえず包囲は脱出した。

    だが、焼け石に水に近く、十数体爆殺した所で、残りは数千体近くおり、逃げる事を強いられている。

    「うぐあああああああッッ!!」

    後方から肉を裂く音と断末魔の叫びが、最後尾にいたらしき男の死を知らせてくれる。

    ちなみにこれは最初ではなく、最深部の平原から逃げ遅れた者、走り疲れ捕まり、そのまま捕食された者も同じようになった。

    「クソッ、部下がまた喰われた!    どうすれば良いのだ!」

    重そうな鎧の一部と、盾を捨て去った男、アグスティンが走りながら叫ぶ。

    その形相は部下を殺された怒りと、後悔のようなものを感じさせる。


    「ふっ!    とりあえず走って王都の門を越えない事には始まらない。それが為されないと、喰われて終いだ。よっと!」


    度々ある木の根を飛び越えたり、前方からも押し寄せるウルフを蹴散らして走る。


    「恐らく今頃ゴブリンあたりにも王都は襲撃されている。多分迎撃用に広範囲殲滅用の儀式魔術があるだろうし、ただではやられないと思うから、冷静になって、とりあえず逃げることが先決だ。そいっ!」


    前方に来たウルフに魔力を纏ったトーキックを決めて、頭部を貫く。


    「解った……というか貴殿は何者だ?    弟のパーティーメンバーというのは知って知っているが、随分と落ち着いているな」


    落ち着いている。というのを聞かれると、自分もおかしくなったことを実感する。

    まあウルフじゃなくて武装した軍隊に追われた事があれば普通だ。(その前提が普通ではないが)

    「場数を踏んでいれば、そのうち慣れる。さて、そろそろ追いつかれそうだから、最初の妨害でもするか」

    「《幼き灯火よ、我らに炎の知恵を授け給う》」

    その詠唱によって起こされる魔術は【ファイアアクシデント】。村や砦に放火して、大勢の人間を焼き討ちするのにもってこいの魔術。これで何度燃やし燃やされたか……


    ともあれ、その効果は可燃物の多い場所では的面であり、群れを成したウルフや、そこらの植物を燃やし、足止めとなった。


    「助かる、これで王都に到達出来るやもしれん。礼を言う」


    「どういたしまして、よいしょっと」

    燃え盛る火炎を背後にして、ここぞとばかりに加速する一団。


    とにかく、俺達は王都へと向かった。





◆◇◆



    森を踏破し、城壁に到達した。

    城門にいた兵士が随分と焦っていたのを見ると、大体俺の予想は当たっていたようだ。

    「クソッ!!    一体どうなっている、森のウルフ共だけでなく、国境付近の山岳に住むゴブリン共もこぞって総攻撃をかましてくるだと!?」

    机を叩き、どうしようもないとばかりに声をあげるアグスティン。

    彼の言うことは尤もだ。国からの情報によると、先程のウルフの群れに加え、山岳地帯からゴブリンの大軍も押し寄せているらしい。

    現在いるのはセーレム城下町東部の兵士詰め所。通常にいるはずの兵士達は市民の避難のためほぼ出払っており、ここに居るのは俺を含める十数人だ。

    調査隊で残ったのは九人だ。俺のパーティーは一人も欠けがなく揃っているが、他のパーティーはほぼ壊滅状態。

    比較的肉体的に脆弱な魔術師型の者や、重装備の者は大体消え、今頃は肉片になって犬っころの胃の中だろう。

    デカい大剣を持ってるオリバーや、ガチガチに重鎧を一部は外したもののほとんど着て逃げ切ったアグスティン中々に実力者であると思われる。

    「ところで、良い話と悪い話があるんだが、どっちから聞きたい?」

    緊張した雰囲気のなか、さらっと言う。

    「貴殿は……助かった。貴殿のお陰で何人か生存者が増えた。して、その話とは……じゃあ悪い方から……」

    「悪い方な。この二つの大軍だが、ぶっちゃけ捌ききれん」

    『ッ!!』

    椅子から立ち上がる者、やはり、と顔を顰める者が殆どだ。

    「ざっと見てあいつらの総数は一万から二万。やりようはあるが、それだとここは更地になるから却下。この国の存続は無理だな」

    「……解ってはいたが、そうか。仕方あるまい、陛下は政府の連中が逃がしてくれるだろう。それまで私は何としてでも時間を作ろう」

    神妙な面持ちで重々しく言うアグスティン。

    「何で勝手に自殺宣言キメてんだアンタは……良い話がまだだろ?」

    「さて念願の良い話だが……」


    最終回一話前のドラマのように勿体ぶるような口ぶりで話す。


     「……一連の魔物の大量発生、恐らく裏で誰かが手引きしている」



    

    

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