異世界に召喚されたのは二度目だけど、まぁとりあえず強くてニューゲームします

Luxuria

第一章 4 不穏の影


    メルト教国北部に位置する、フェミルの街を出て早くも一週間。あの時からレッサーウルフの群れに襲われた回数は22回。合計25回になる。

    そしてなんとか隣国セーレム西部に位置する大きい街、【ラヴィーア】へと到達したのだ。

    ギルとオリバーはとんでもない目にあったと口にし、現在はぐったりと宿屋で就寝中だ。

    本来十数日近くかけて移動する距離を3日以上短縮して夜通し働いているのだ。疲れるのも当然だ。ちなみに俺はやや不眠の傾向があるので、対して辛くはない。

    ミラは2日後の王都への出発まで別行動するとの事。

    オーレンは俺達と同じ宿で二人と同じく就寝中だ。


    さて、新しい街に着いたにも関わらず一人になってしまった。現在時刻は午後七時くらい。夜ながらも街灯で明るい夜街はカップルや家族連れ、冒険者グループがぞろぞろとしており、活気に溢れている。

    まぁ、一人で行動するのは慣れているし、情報収集するには持ってこいだ。




    一時間程経過しただろうか。この街を回って、店や施設、観光地の情報は大方手に入れた。

    そして現在は例のウルフだったり、魔物の増加についての情報をギルドで収集しに来ている。


    「相席、いいか?」

    「おう、別に構わねぇぜ。お前もいいだろ?」


    酒を煽りながら談笑する二人組のいるテーブルに座らせてもらう。

    俺の問いに、足元に武器とおぼしき大剣を置く大柄の男が了承し、向かいに座る魔法使いっぽい男が首肯する。

    俺は大柄の男の隣に座り、懐から金貨を五枚枚出した。

    「最近大量発生している魔物について聞かせて欲しい、酒は奢る」

    「随分と気前がいいな、何か訳ありか?」

    差し出された金貨に訝しげに聞かれる。

    目的、か。

    最終目的はもちろん魔王の討伐への助力だが、それには当然金が必要で、金づるとなる魔物の情報だったり、普通に見聞を深めるのも必要だ。だからとにかく金策と情報収集をする。その為には多少の出費もいとわない。


    「最近魔物が大量発生していると聞いたんだが、元凶を突き止めるか何かすれば、金一封でも貰えると思ってな、まぁ俺も飲みたいってのも一つの理由だな」

    「うーむ、多少府に落ちないが、奢りなら断る気は無いな。すいませーん、エール追加で三つ!」

    割とあっさりと了承される。男はウエートレスに注文し、こちらを向く。


    「とりあえず呑もう、あ、俺はカイザー。向かいに座るのが──」

    「──リオンだ。ありがたく呑ませてもらおう」

    大柄な男がカイザー、向かいの長身で猫の様な目をした男がリオンか。あれ?

    猫だわ。よく見ると頭に獣耳が生えているし、背後から尻尾が見え隠れしている。獣人だ。

    この世界の人種は数多い。大まかに分けると、俺やカイザーのような猿人類が三割、リオンのような獣人が三割、そしてその為人種が四割だ。

    その他四割というのはエルフ、魔族に代表される少数種族のことを指す。その一割は北に住む魔族、残りはエルフや精霊族その他だ。


    「ぷはー、ぼちぼち話し始めるか」

    早速来たジョッキ入りのエールを半分近く飲み、口を開く。

    「まず、魔物が増え始めたって聞き始めたのが二ヶ月程前。主に増えたのは森に住むウルフ種、山に住むゴブリン種、沿岸部では海魔種だな。最初はただ魔物の数の上下が上に傾いただけかと思ったんだが、ひと月前には明らかにおかしいって事になってな。国も何度か調査隊を出してるようだが、手がかり無しか、壊滅の二つだ。
    近日中に大幅な討伐隊が編成されるって噂もあるらしい。だが俺は御免だな、裏には魔族が絡んでるって噂もある。ちょうど半年前には魔王が世界征服の宣言もしたらしいしな」

    なるほど、恐らく襲撃してきたウルフはこの街ラヴィーアとセーレム城及び城下町を隔てる、【セル大森林】からか。

    それに討伐隊と魔王の仕業の噂か。前者に参加し活躍すれば、国とのコネクションが得られ、後者が本当であった場合、魔王に対しての何らかの手がかりが得られる。参加しない手は無いな。

    そして、なにより儲かる。全25回あった襲撃によるウルフの数は300に迫るものだ。魔石及び綺麗だった毛皮(魔法やオリバーの攻撃によって傷が多いものが多数あった)の売却だけで、五万ネス近く儲かっている。既に護送の報酬を超えているのだ(オーレンは報酬をかなり増やすとも言っていたが)。


    「すまないが、情報はこのくらいだ。不確定な部分が多くてな」

    「いや、ありがとう。じゃあ今夜はとにかく飲もうぜ──」







◆◇◆







    夜更け……二時頃か。街頭は消え、真っ暗。出歩いているのは大半が酔っ払いかホームレスか何かだ。

    今日は前回の反省を活かし、酔いつぶれる前に席を立った。ちなみにちゃんと帰るために解毒魔術の応用でアルコールを多少分解し、現在はほろ酔い気分だ。


    ところで、さっきから歩いているのだが一向に宿に着かない。というか道忘れた。どうしよう。


    ──ドンッ!

    「ッ!」

    路地裏から出てきた影にぶつかる。

    「おっとすまない。あれ、あんたは……ミラさんか。こんな所こんな時間に何を」

    「関係無いでしょう、ッ!    それよりあなた……臭いわよ」

    素っ気なく返事を返す……つもりだったのだろうが、いきなり距離を取り口元を覆い、紅く・・輝く瞳で睨んでくる。

    てか酷くね。まぁ俺もガッツリ食べてるのに歯磨きしてないから当然ではあるが。

    しかし美しいものだ。表情はともかく、白い肌、輝く瞳、夜風にたなびく銀髪(フードを外している)。臭いと言われてなければ見惚れていなかっただろう。

    「グジュグジュペッ!」

    口内に魔術で水を生成、水流を操作し歯垢を除去、最後に炎・風の複合魔術で水分を蒸発、悪臭と汚れとおさらば。簡単歯磨き魔術である。

    「……魔術の無駄遣いね、魔力操作の技術も高いのに……というかあなたは何者かしら?    実践の経験も無いのに魔術、剣術共に的確に当てる。それもあの数全てに百発百中。南大陸という平和な環境で生まれ育ったあなたが可能な芸当とは思えないわ」

    「随分と見て、知っているんだな……」

    突然少しばかりピリッとした雰囲気。ほろ酔い気分が醒めてしまった。

    「親が冒険者だったと聞いているけれど、ここ数年にあなたと同等以上の冒険者は南大陸に存在した記録はないわ。良かったら聞かせてもらえないかしら?」

    調べられたか。その場限りの嘘ってものはバレるもんだな。けれど──

    「──何者かと聞きたいのはこっちも同じだ。教国はあんたら魔族と全面戦争とかいう感じなのに、こんな近くに潜伏してる魔族。怪しいのは俺だけじゃあない」

    俺の言葉に吃るミラ。つい売り言葉に買い言葉で雰囲気を悪い方向に加速させてしまう。選択肢失敗したかも。

    「まぁ、いずれあんたがちゃんと自己紹介してくれれば俺も教えるさ。おやすみ」

    手をヒラヒラ振って別れる。次会う時が険悪になりそうだ。



    「ッ……」


    ミラはこちらを睨み、立ち尽くしていた。






◆◇◆







    翌々日、時刻は午前10時。セル大森林方面が見えるラヴィーアの西門前で待機していた。ここが再出発の待ち合わせ場所。

    既に全員集合して、いざ出発といった所だ。ちなみにミラと目が合った瞬間キッと睨まれ、プイッとされた。これが漫画で金髪ツインテが相手だったら「はいツンデレツンデレ」で終わるのだが、彼女が魔族という不安分子である以上、中々軽くは対応できない。


    「おいレン、彼女と何かあったのか?」

    「いや、知らん」




    森林を避けるように平原を走る馬車。本来は森林に一本道があるのだが、魔物の量を鑑みると、避けることは必須。ルートは海岸寄りの街道だ。


    当然移動中に数回襲撃されたが、回数は前回程では無い。問題なく進める。


    四日後には【セーレム城/城下町】に到着した。




    セーレム城下町。南大陸北部から北西部にかけてを支配する、セーレム王国首都の街。往来には人が溢れており、ラヴィーアを超える活気だ。

    街並みを眺めながらこの街の冒険者ギルドに向かいウルフの素材と依頼の報酬を分配した。

    儲かったのは総額十五万ネスくらい。四分割すると一人当たり三万七千五百ネス。経費はオーレン持ちなので、情報収集や飲み代を差引いてもかなりのプラスだ。

    ギルドを出ると


    「皆さんありがとうございました。この危険の中危なげなく移動出来たのは皆さんのおかげです。では!」


    馬車を走らせ、街へと消えていくオーレン。彼は道中、ためになる話を多く話してくれた。いずれは中央大陸にも進出するらしいので、いつか会うかもしれない。


    「私もあなた達とはお別れよ、知ってると思うけど、近いうちに編成される大森林への討伐隊には私も参加する予定だから、あなた達も参加するなら、会うことになるかも知れないわ」


    同じく別れるミラ。何故だかしらないが、近いうちにまた会う気がする。

    割とさっぱりとした別れになったが、基本的に依頼を受けて各地に転々とする冒険者ではよくある事なのかもしれない。


    「さて、せっかく大きい街に来たんだ。しばらく遊んでいこうぜ」

    「ああ、手持ちは十万以上ある、今夜が楽しみだ」

    これからの計画について話し合う二人。今夜というのは酒の事なのか、Hな店の事なのかは知らないが楽しそうだ。

    「お前さんにも夜の遊びってもんを教えてやる、今夜は寝れねぇぞ!」

    やはりか。この世界の風俗店事情は知らないが、割と美形が多いこの世界の女性には興味がある。買い物もしたいが、行かないのは無しだ。

    今夜は寝れないな。


    





    

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